不妊治療をしている患者さんの基礎体温を確認していると、高温期9日目あたりで基礎体温が低下している方がいらっしゃいます。

 

高温期9日目というと、着床したかどうか気になって、体調や基礎体温の変化にも敏感になっている時期だと思います。

 

そこで今回は、高温期9日目の体の状態や体温が下がるときの原因についてご説明していきます。

 

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高温期9日目の体の状態

卵子が受精すると、一般的に受精から6〜7日目頃に着床しはじめます。排卵日の翌日から高温期が始まり、排卵日当日に受精したと仮定すると、高温期9日目は着床が始まって2日目くらいと考えられます。

 

しかし、実際は受精のタイミングは人によって違うので、高温期9日目に着床が始まる人もいれば、まだ着床が始まっていない人もいます。着床のタイミングを待ち続け、高温期10日目に着床を始めるという受精卵もあります。

 

高温期9日目に感じる症状

高温期9日目での症状は着床症状と妊娠超初期症状があるといわれています。しかし、実際、妊娠された多くの患者さんからお話をお伺いしても、そのような症状を実感されている方はとても少ないです。そのため、ネットに書かれているような情報を鵜呑みにせず、何も症状がないからといって落ち込んだりしないようにしてください。

 

着床症状

高温期9日目で着床を始めた際に、違和感を感じる方もいらっしゃいます。

 

  • 下腹部(子宮付近)の疼痛
  • 腰痛・骨盤付近の痛み

 

下腹部がチクチクするような痛みや、激しい痛みではなく鈍痛を感じる方もおられます。

 

妊娠超初期症状

すでに着床が始まっている場合は、ごく稀に妊娠初期症状が現れることがあります。

 

  • 今までの生理前の症状とは異なる感覚

(例えば今までは無かった乳房の張りが突然出てくるようになった等々)

 

高温期9日目に体温が下がる原因とは?

高温期が始まったと思っていたのに、急に体温が下がると不安になると思います。特に、不妊症で悩んでいる方であれば、敏感になりストレスを感じる方もおられるかもしれません。

 

そのため、高温期9日目に体温が下がる原因にはどのようなものがあるのか、正しい予備知識を持っておくことで、不安要素は少なくできますし、ご自身の場合どのように対処すべきか判断も早くなります。

 

原因1:測定ミス

単純に測定ミスという原因も意外と多いものです。測定中にうとうとしてしまい、無意識のうちに体温計が口から離れてしまうこともあります。

数値がおかしいと感じたら、慌てずまずは再測定をしてみましょう。

 

原因2:生活リズムの乱れ

子どものお弁当作りのためにその日だけ早起きしたり、たまたま睡眠不足だった場合にも、体温が下がることがあります。睡眠不足の場合は、人によっては高温期が上がる方もいらっしゃいます。

 

原因3:生活リズムの乱れ

季節の変わり目では気温の変化も激しく、布団の調整がうまくいかないことがあると思います。朝、寒くて目が覚めてしまった場合は気温の影響を受けており、基礎体温が低く出ます。

 

1~3の原因についてはさほど気にする必要はなく、その状況について基礎体温にメモを残しておくようにすれば良いでしょう。

 

原因4:サプリメントや漢方薬が合っていない

今まで何も服用していなかった方が、サプリメントや漢方薬を飲み始めて1~2か月経過したころに出てくることがあります。(漢方薬の場合もう少し早く反応がでることもあります。)

 

サプリメントや漢方薬が合っていないと、身体がストレスを感じて基礎体温を一時的に下げてしまいます。そのまま服用を続けると、基礎体温の高温期の形がどんどん崩れることもあるので注意が必要です。

 

この現象は、ビタミン系やミネラル系のサプリメントでは起こらず、マカやザクロなど女性ホルモンに影響するようなサプリメントで出てきます。

 

このような場合には、服用を中止して様子を見ることをお勧めします。

服用して間もなければ1周期後の基礎体温で元の状態に回復してきますが、2周期経過しても元に戻らない場合は、不妊専門のクリニックや不妊治療に強い漢方薬局などで相談されることをお勧めします。

 

原因5:インプランテーションディップ

インプランテーションディップとは海外で妊娠兆候の一つと言われているものです。

現象としては着床時(高温期の7日目~10日目)に基礎体温が一時的に下がる現象を言います。

 

インプランテーション=着床の意味で、ディップ=低下を表す言葉です。

 

アメリカの大手基礎体温サイトがおおよそ11万人のデータもとに分析された結果によると、インプランテーションディップが見られたのは全体の約3割で、その中の2/3の方が妊娠していたそうです。つまり全体の2割の方です。

 

ここで注意したいのは、インプランテーションディップという現象がみられたのにも関わらず3割以上の方は妊娠されていないということです。

 

科学的な根拠も無く、このアメリカの大手基礎体温サイトも妊娠しているかどうかは妊娠検査薬をしてみないと最終的にはわからない、とコメントしています。

 

私は基礎体温をベースに不妊治療を行い、ここ10年で数百名は妊娠していますが、実は、その中で妊娠兆候としてこのインプランテーションディップというものを見た記憶がありません。

 

体温の低下を妊娠兆候と思い込んでしまうと、注意すべきことを見落として、大切な時間を無駄にしてしまう可能性があります。

インプランテーションディップという概念に振り回されないようにしましょう。

 

もっと詳しく知りたい方はインプランテーションディップの問題点とは?

 

原因6:黄体機能不全

不妊治療を受けられている患者さんの基礎体温を長年見てきて、最も多い原因が黄体機能不全です。多くの場合は、年齢に伴う卵巣機能の低下によるものです。

 

<軽度の黄体機能不全の基礎体温のグラフ>

軽度の黄体機能不全の基礎体温のグラフ

高温期に体温が1回下がるという現象が数カ月の間に頻発して起きている場合は、卵巣機能が弱ってきています。

 

もしくは最初は1日だけ下がっていたものが2日連続で下がるようになった場合も黄体機能が低下してきていると考えられます。

 

<もう少し重度の黄体機能不全の基礎体温のグラフ>

もう少し重度の黄体機能不全の基礎体温のグラフ

年間で見たときに、この現象が1回限りであれば、他に原因があるかもしれません。

 

もし、1年の間にこのような状態を何度か繰り返しているならばば、今後さらに機能が低下する可能性があります。

 

黄体機能不全の場合は不妊治療が必要になります。タイミング療法をする場合も、ホルモン補充療法を併用する必要が出てきます。

 

不妊治療を行っているクリニックへの通院や、自然妊娠を目指す場合は漢方薬による治療をお勧めします。

 

さらに黄体機能不全に関して詳しく知りたい方は➡黄体機能不全

 

まとめ

高温期9日目で基礎体温が下がる時の原因についてご説明しました。

 

高温期9日目あたりで基礎体温が下がると、インプランテーションディップ(妊娠兆候)と思い込む方がいらっしゃいます。しかし、これは日本の産婦人科医の中でも認められていませんし、アメリカの医学界でも公的に認知されているものもありません。

 

私も不妊治療で、数百人は妊娠された患者さんの基礎体温を見てきましたが、正直はっきりと見た記憶はありません。

 

このパターンでは黄体機能不全が圧倒的に多いです。

卵巣が弱ってきているということなので、不妊治療を急ぐ必要があります。

 

そして意外にも高プロラクチン血症の疑いのある基礎体温(高温期の基礎体温がギザギザになる形)をインプランテーションディップと勘違いしている方もいらっしゃるようです。

 

どちらにしても不妊専門の病院で一度ちゃんと検査を受けられた方が良いでしょう。

 

インプランテーションディップと勘違いしてしまうと、そのうち妊娠できるだろうと思い込んで、何の治療もしないまま時間を無駄にしてしまう可能性があります。

 

ネット上の情報だけを信じずに、不安があれば不妊治療を行っているクリニックや漢方薬局などへ一度相談することをおすすめします。

 

また基礎体温のグラフの測り方や見方などかなり詳しく知りたい方は➡基礎体温表のグラフの測り方や見方などを詳しく解説

 

広島の漢方薬局ハーブスのTEL082-507-3470