日頃からご家族でご相談に来られている患者さんがおられます。

この方、もともとはとても健康で元気な印象があったのですが、出産されて、育児をされるようになってから、身体の不調がちょこちょこ出てくるようになったように思います。

その不調とは主に胃腸の不調で、食べると調子が悪くなったり、お腹を壊したり、みぞおち付近がつかえたり、痛んだり、背中が度々痛くなったりしていたそうです。

そして、或る時、友人とコンビニで昼食を摂った時から、今まで経験したことが無いくらい胃が痛くなったそうです。

ご自身でもそれが食事の影響であることは薄々気づいておられたようで、それ以降、あぶらものは控えておられたそうです。

そして、漢方相談に来られた際に改めてこの患者さんの状態をチェックしてみることにしました。

通常、油物が原因による胃部の不調の原因として多いのは胃自体の問題、そして胆のうの問題、そして膵臓の問題です。
※ここで少しだけ胆のうと膵臓の説明をしておきます。
どうして胆のうに問題があると油物で胃腸がおかしくなるのかというと、それは胆汁の働きが大きくかかわっているのです。胆のうから胆汁は排出されるのですが、胆汁は油の分解を行うリパーゼという酵素の働きを助けます。そのため胆汁の出が悪かったりすると、油物を食べて下痢をしたり、胃部に不調が出ることがあるのですまた膵臓は先ほど出てきました、油を分解するための消化酵素であるリパーゼを作っている臓器なのです。そのため、当然膵臓の働きが低下すれば、リパーゼの産生や分泌に影響が出て、油の分解が困難になる可能性があるのです。

話を戻します。

この患者さんの状態を漢方的にチェックしてみると、胃の不調は、胃そのものや、胆のうではなく膵臓に問題があるように感じました。

そこで膵臓に良い漢方薬を探したのですが、なかなか合うものが見つからず、結局この時はクロレラを1週間分だけ服用していただくことにしました。

また、食養生もこの方は難しく、通常だとほとんどの人に合う大根おろしなどが合わず、刺激物とあぶら物を控える(魚もほとんど合わず、肉も鶏の胸肉くらい、基本はだしで野菜をクタクタになるまで煮たものがメインの食事)ということにしました。

食養生イメージ

それから1週間後、来られた際に様子をお伺いすると若干良くなっているそうですが、まだ症状は残っていました。

そこで再度、お薬をチェックしなおすと、もうクロレラは合わない感じで、今回は胃もたれ等に用いる漢方薬が合っているように感じました。

この漢方薬に切り替えて、引き続き食養生に気を付けていただいていたのですが、3週間程度でこの漢方薬も必要なくなりました。

この患者さんの自覚症状も徐々に改善してきたのですが、まだ十分とは言えない感じでした。

しかし、次にお出しできるような漢方薬は見つからずしばらく食養生だけ続けていただきました。

それでも食養生がかなりしっかりしていたので、さらに改善はしていましたが、東洋医学的なチェックでは依然として膵臓の問題が残っていました。

そこで、再度、いつもにもまして緻密に膵臓をチェックしてみると、今まで気づかなかった病気の反応があることに気づきました。

その病気の反応を消す漢方薬を探していったら、なんとこの患者さんのお子さんと同じ漢方薬が合うことに気づきました。

この方のお子さんは特に小さい時は病弱でしかも合う薬が見つけづらく結構苦労したのです。

しかし、この方は最初にも書きましたが、出産されるまではとても元気な印象があったので病弱な人に使うような漢方薬が合うとはとても思いませんでした。

そのため、なるほど、そうかもしれないという想いとほんとかな?と思いが混在する中でとりあえず1週間分試しに服用していただくことにしました。

それから1週間後来られた際に様子をお伺いすると・・・

調子が良いそうです。

実際、東洋医学的なチェックを行っても確かに改善しています。

う~ん・・・なんというか・・・とても勉強になりました。