基礎体温が低温期高温期ともに高い時に考えられる5つの原因と対策について書いています。
読者対象は基礎体温が高温期、低温期が標準よりも高く心配されている方です。
この内容は長年基礎体温をもとに不妊治療を行ってきた漢方薬剤師としての経験に基づくものです。
基礎体温の低温期や高温期が高いのが何が問題なのか?
不妊症の原因となる疾患・病気が隠れていることがあるのです。
そのような原因に気づかないまま不妊治療を続けてしまうと大事な時間を無駄にしてしまう可能性があります。
そのため、自分の低温期、高温期の基礎体温がなぜ高いのかについての原因を知って今後に生かしていただきたいと思います。
基礎体温の低温期も高温期も高い時に考えられる原因と対策
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は排卵障害による月経異常を起こす疾患です。
月経異常というのは無月経、無排卵月経(排卵していないのに生理が来る)、希発月経(月経周期が長い39日~90日)の3つのいづれかに該当している場合をいいます。
そして多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)には次のような特徴があります。
ネックレスサインと呼ばれる徴候(超音波検査:エコーで卵巣を検査した時に卵巣内に多数の10mm以下の小卵胞が卵胞が数珠状に繋がるに繋がっている状態)が見える
血液検査でのホルモン検査で黄体形成ホルモン(LH)の値が高値で尚且つ卵胞刺激ホルモン(FSH)の値が正常値である。
月経異常がある。
これらの条件が揃うと多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断されます。
海外ではこれ以外に肥満であるとか、それによる男性ホルモン(アンドロゲン)の値の上昇なども多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の兆候と考えられていますが、日本では多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方には肥満は非常に少ないです。
また糖尿病との関連もあり、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方はインスリン抵抗性を示す方が多いのです。
インスリン抵抗性があると最終的に肥満がなくてもアンドロゲン(男性ホルモン)が増えてしまうのです。
男性ホルモンには卵胞の発育を抑制する働きがあるので、卵胞が育ちにくくなり排卵しにくくなるのです。
多嚢胞性卵巣症候群は軽度なものであれば生理周期が若干伸びる(低温期が普通の人に比べると少し伸びる) 程度の問題ですが、それでも排卵するタイミングがわかりにくいので自然妊娠は難しいです。
さらに重症化すると1年間全く排卵しないという方もおられます。
このレベルになってくると病院で体外受精などの高度な不妊治療を行わないと難しいケースも出てきます。
病院での治療の基本は排卵誘発です。
これにインスリン抵抗性を示す場合は、グリコランなどの糖尿病薬が併用されます。
それでも排卵しない場合は手術が行われます。
しかし、その効果は持続しないといわれています。
この疾患に関しては漢方治療との併用が有効だと思います。(軽度であれば漢方薬単独でも効果があります)
多嚢胞性卵巣に関してもっと詳しく知りたい方は➡多嚢胞性卵巣
子宮内膜症
子宮内膜症とは子宮の内膜が子宮の内膜以外の場所にできてしまう病気のことです。
子宮内膜症は様々なところにできるのですが、不妊症の原因となってしまうのが、卵管とその周辺の組織が癒着することです。あともう一つは卵巣の外側や卵管采が癒着するとピックアップ障害をひこ起こしてしまいます。
この卵管閉塞やピックアップ障害が不妊症の原因となるのです。
この子宮内膜症の治療は妊娠を希望される場合は、内視鏡を用いた子宮を保存する形の手術が行われますが、効果は限定的で再発のリスクがあります。
激しい生理痛に関しては漢方薬は効果的です。
それ以外に子宮内膜症の一種で別名がついているものにチョコレート嚢胞、子宮腺筋症があります。
さらに詳しく知り合い方は➡子宮内膜症
チョコレート膿腫
チョコレート嚢腫は子宮内膜が卵巣内にできてしまうことで起こる病気です。
子宮内膜が卵巣内にできると生理の時にその子宮内膜の細胞が剥がれ落ちます。
その剥がれ落ちたものは、生理の時の子宮内膜と同様に出血となります。
これが子宮内膜で起こっているのであれば、出血は膣を通って体外に排出されるのですけれども、これが卵巣という密閉された状態で起こるため、ここで生じた出血は外に排出できません。
そのため、卵巣内にこの出血の血が溜まっていってチョコレート色になって腫れてていくことからこの名前となったのです。
妊娠を希望される場合は内視鏡による手術になります。
チョコレート膿腫は子宮内膜症関係の中では手術が有効な疾患ですが、摘出部位の大きさによってはAMH(坑ミュラー管ホルモン):卵巣年齢➡残卵數の指標に影響を与えます。
具体的には卵巣を部分的に摘出するため、その中に入っていた卵胞も摘出してしまうことになるので通常よりも早く閉経が来るリスクはあります。
しかし、手術後の方が妊娠率は高まるといわれています。
さらに詳しく知り合い方は➡チョコレート膿腫
子宮腺筋症
一方子宮腺筋症は通常子宮の表面にできるはずの内膜が内側の子宮筋肉の内部に子宮内膜の細胞ができてしまう病気です。
子宮筋肉の内側に内膜ができてしまうと、生理の時にその内幕が筋肉内で剥がれます。
つまり筋肉の内側で出血や癒着炎症などが起こりやすい状況となるのです。
この子宮腺筋症ではひどい生理痛や月経過多を引き起こします。
このような症状によって子宮は肥大化します。
そして子宮腺筋症は着床障害の原因となるため妊娠しにくくなったり流産や早産を引き起こす原因にもなります。
妊娠を希望されるばあは手術など選択肢は少なく尚且つ効果も限定的です。
漢方薬は特に生理痛に効果を発揮ます。
さらに詳しく知り合い方は➡子宮腺筋症
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)とはその名の通り甲状腺の機能が亢進する病気です。
もう少し詳しく説明すると甲状腺ホルモンの分泌が盛んになり、体の基礎代謝が盛んになることで肉体及び精神に影響を与える病気です。
主な症状としては動気や発汗、体温の上昇、手の震え、睡眠障害、体重の減少、眼球突出、息切れなど様々あります。
この疾患も不妊、流産、不育症の原因となるといわれています。
ただし、この疾患はメルカゾールなどの甲状腺の機能を下げる病院の薬で比較的簡単にコントロールできます。
さらに詳しく知り合い方は➡甲状腺機能亢進症(バセドウ病)
ホルモン補充療法を続けることで体温が上昇してきた。
このタイプの患者さんというのはもともとの基礎体温は低かったり普通だったりする方が多いです。
多くの方はホルモン補充療法(女性ホルモンの投与)を継続的に行うことによって徐々に基礎体温が上がってくるのです。
これは通常、特に問題はないことは多いですが、あまりにも高くなりすぎると中には漢方治療を必要とするケースもできます。
中でもホルモン補充よって急激に太ってくるタイプの方は要注意です。
こういう方の場合は漢方的に見ると、この急激な体重増加(肥満)そのものが不妊の原因となることがあるのです。
元々体温が高い(平熱が高い)
基礎体温(低温期も高温期も共に高い)これはごくごくたまにおられるタイプの方です。
平単純に熱が高い方です。
つまり基礎体温の高いという状態がその人にとって普通(正常)なのです。
そのため、基礎体温が高いことに関して特に治療の必要がないのです。
こういう場合、基礎体温高さ以外の問題をチェックするか?
西洋医学の不妊症の原因となる問題(例えば子宮筋腫など)について治療を行うか?
問診で問題を感じた問題を治療するか?(例えば加齢(老化に伴う問題)≒腎虚、血行の問題≒瘀血)等
別の視点で治療を行った方が妊娠しやすいです。
まとめ
基礎体温の低温期も高温期も高い時に考えられる5つの原因と対策について書いてきました。
一口に基礎体温が高いといっても様々原因があり、それが不妊症の大きな原因となることがあるので基礎体温で何かおかしいと思われたら産婦人科もしくは不妊専門病院にかかって検査を受けてみてください。
これらの中には治療の特に必要のないもの、病院の治療で簡単に良くなるもの、病院での治療が難しいもの、病院と漢方薬との併用が望ましいもの、漢方での治療が望ましいもの様々です。
それぞれの原因に応じて自分に合った治療法を選んでいただければよいと思います。
より基礎体温を理解したい方➡基礎体温と漢方理論