HPを見て患者さんが相談に来られました。

症状はやる気が起きない、気分が落ち込む、眠りが浅い、月に2回生理が来る、などでご本人としては更年期障害なんではないか?と心配になってご相談に来られたのです。

確かにこれらの症状を合わせると更年期障害とも思えるのですが、漢方相談の過程でこの方のお話を詳しく聞いていくと、この方の症状のほとんどは病気ではないかもしれないと思ったのです。

というのも、生理が月に2回来るのは確かにおかしいことですが、更年期(閉経に至るまでの前後5年間の期間)にこの症状が出てくること自体はとてもよくある事で病気ではないのです。

もしも、この生理が重たくて貧血になるほどであれば問題となりますし、PMS(月経前症候群:月経前に体調を大きく崩す)がひどい人であればそれも問題だと思いますが、この方にはそういった問題はありませんでした。

そして、何より、やる気が起きない、気分が落ち込む、眠りが浅いなどの精神的(心因性)の問題と思えるような症状は仕事を変わってか起きているのです。

前の仕事はフルタイムで肉体を酷使する代わりにやりがいのある仕事で生活が充実していたようなのです。

ところが、その仕事で関節を痛めてしまって、仕事を継続することが難しくなったため、職種を変えて、身体に負担のかからない事務職に変わって、仕事の時間も大幅に減らしたそうなのです。

『やる力が起きない、気分が落ち込む』という症状は心の病のようにも見えますが、仕事でやりがいを持って働いていた人が、やりがいを感じない職場に移った訳ですから、それは普通の人の当たり前の反応と思えるのです。

心の回復イメージ

そして『眠りが浅い』も一見病気のように思えますが、人は基本的に疲れないと眠れないのです。

この方は今まで肉体を酷使してフルタイムで働いていたのを、事務職に変えて一日の働く時間も約半分くらいに減らしたということで、今まで比べれば明らかに業務量が減った訳です。

事実、ご本人からも以前に比べ全く疲れない状態になったと言われるのです。

繰り返しになりますが、人は疲れをとるために寝るわけです。

そのため、疲れていなければ前と同じように眠れないのは当然だと思うのです。

そこで、最終的に東洋医学的なチェックを行ったのですが、私の思った通り、病気の反応はありませんでした。

ただ、これも私の思い込みの可能性があるので、再度日を改めてもうお一度身体の状態をチェックさせていただきました。

その際も同じく精神的な問題は無いと感じました。

そのため、今回はお薬を出さず、身体に負担の少ない仕事の中でもっとやりがいのある仕事を探したらどうか?というお話をしました。

こういうケースが初めてですが、こんなこともあります。

ただ、この患者さんがもし、精神科に最初に相談に行っていたら、話はもっと違う方向に行っていたと思います。

精神科は通常、精神領域の疾患の中から病名診断を行います。

そのため、何らかの病名が付いていた可能性があります。

自分が病気なのではないか?と思い、心が弱っている人は時として病名を付けられることで安心することがあるのです。

私は○○病だからこの症状なんだ。だから仕方ないんだ。

そして、その病名の症状に自分の体調を寄せていくこともあるのです。

わかりますかね?この領域は紙一重な部分があるんです。

そのため、このような症状が出てきたら、まず最初の病院は精神科ではなく、産婦人科や内科などもう少し広い視点で診断されるところでご相談された方が良いのではないかと思います。