HPをみて患者さんが来られました。

主訴は不安と動悸です。

ただ、実際にお話を伺うと、ものすごく症状がおありでした。

西洋医学的には、高コレステロール血症、糖尿病、慢性胃炎が現在もあるのだそうです。

過去の病歴としては30年前くらいにパニック障害を患ったこともあるそうです。

自覚症状に関しても、実際お話を伺うと、やる気が出ない、過去の事を振り返ってくよくよしてしまう、人と話をするのがしんどい、(特に元気な人と話をするのが辛い)、眠れない、胃の調子が悪く食欲もないなどでした。

この患者さんの場合、さらに詳しくお伺いすると、それらの症状一つ一つが本当に辛そうでした。

これらの症状は約5年前から発症したそうですが、以前は出かけるのが好きだったそうですが、今は毎日の食事の買い出し・病院等を含め、必要最小限しか出かけないとのことでした。

また、落ち込みもひどく、気力もわかないため、日々の家事もままならない感じでした。

また、不眠に関しては睡眠薬を服用しても、眠れない時があるそうで朝の1時~3時ごろまで眠れないことも多いということでした。

胃の調子も悪く、もともと痩せている方ですが、この病気になってからさらに体重が数キロ減っているとのことでした。

お話しした感じではかなり切羽詰まった不安感が強いように感じました。

それ以外にもお話をして、気になった部分はあったのですが、まずはそこを治療してみようと思いました。

漢方治療イメージ

そこで、さらに東洋医学的な体質を見極める質問をおこない、さらに東洋医学的なチェックを行い、この患者さんに合うと思われる漢方薬を出してみました。

漢方薬としては切羽詰まったパニック(特に動悸)に用いるような漢方薬でした。

それから、だいたい2週間間隔でご相談に来られました。

そして2週間後に来られた際に様子お伺いすると・・・実際にはほとんど何も変わっていないようでした。

しかし、漢方薬は合っているように思われたので同じ漢方薬を飲んでいただくことにしました。

そして、さらに2週間後に来ていただいて様子をお伺いすると・・・

やる気は相変わらずでない、眠れない、胃の調子が悪いなどは全く変わっていませんでしたが、少し動悸が減り気持ちが安定したそうです。

この時に始めて歯の調子が悪いということをお伺いしました。

そして、再度、漢方薬が合っているかをチェックして合っていると思われたので同じ漢方薬で様子をみていただくことにしました。

また2週間後に来られた際に症状は再び悪化しているように思われました。

しかし、東洋医学的なチェックでは合っている気がしたので、また同じ漢方薬を出しました。

そしてまた2週間後に来られた際に様子をお伺いすると・・・やはり調子は悪いままでした。

ただ、話の中で分かってきたのは、入れ歯の調子が悪く、かなり痛いようで、これが気分や食欲に相当影響を与えているということでした。

向精神薬イメージ

ただ、現在も入れ歯を作り変えている途中でこれが変われば、多少違うのではないか?と思いました。

しかし、次の2週間後に来られた際に、入れ歯は作りかえたそうなのですが、この作りかえた入れ歯も合っていない様で痛くて食べられないという事でした。

さらにお話をお伺いすると、どうもそこの歯医者さんとの相性も悪くストレスを感じているように思われました。

入れ歯は正直、合わないものを馴染むまで我慢するのは難しいです。しかもこの患者さんの場合、現在の症状の3分の1くらいに入れ歯の問題が関わっているように思われました。

そのため、思い切って別の歯医者でもう一度入れ歯を作り直してもらうよう提案しました。

あと、あともう一つ漢方相談を重ねてきて分かってきたことは、向精神薬(睡眠薬や安定剤)を服用することに対する抵抗感や罪悪感、不安感などでした。

今のように切羽詰まった状態で眠れないのであれば、もう少し安定剤や睡眠薬を一時的に増やしても良いと思えますし、病院でもそのようなスタンスに思えるのですが、この患者さんは効かない位の量しか服用されていないのです。

基本的に今のお薬は内科で出してもらっているようですが、もう少し専門的なところで診てまったら良いように思いました。

そのため、病院で出される向精神薬(睡眠薬や安定剤)を服用されることは全く問題ないですと繰り返し、お伝えしました。

そして2週間後に来られた際には、初めて来られた時よりも調子が悪いのではないか?と思える感じになっていました。

そのため、漢方薬を変更しました。

症状改善イメージ

また、この患者さんも歯医者を変えて、入れ歯を作り直すことにして、精神科のクリニックに行ってみることにしたそうです。

そのことに関しても私は賛成しました。

そして、2週間後新しくお出しした漢方薬は合っている気がしましたが、症状の変化は特にありませんでした。

さらに悪化することもなく、ものすごく良くなったということも無かったです。

そしてさらに2週間後に専門の心療内科に通うようになり、まず睡眠が改善されました。

さらに2週間後、気持ちが少し落ち着いてきたそうです。

それからさらに1か月後にやっと入れ歯が完成して、微調整してもらってから口の痛みが無くなりました。

正直ここから一気に症状が軽減してきました。

現在は不調はほとんど感じないということです。

これから、向精神薬(睡眠薬や安定剤)を徐々に減薬していく必要がありますが、そこは焦らず、ご自身が不要と感じたら徐々に止めるスタンスで良いのではないか?と思います。

今回の事で、漢方薬を出すだけではなく、現在不調を起こしている原因を見極め、適切なアドバイスをすることも大事だと改めて思いました。

まだまだ治療の途中にすぎませんが、少しホッとしました。

さらにこれらの症状に関して詳しく知りたい方は

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