ここでは基礎体温の生理周期が短い時に考えられる6つの原因と改善策について書いています。
生理周期が短いということは頻発月経の可能性が高いということです。
頻発月経は月経周期が24日以内の月経の事を言います。
この内容は長年基礎体温をもとに不妊治療を行ってきた漢方薬剤師としての私の経験に基づくものです。
基礎体温の生理周期が短いのは何か問題があるのか
基礎体温の生理周期が短いというのは低温期が短いか、高温期が短いか、あるいは両方とも短いかの時に起こることです。
このいづれであっても不妊の原因となることがあります。
そのため生理周期が短くなった原因に対して対策をすることが大事になってくるのです。
基礎体温の生理周期が短くなる原因と対策
黄体化未破裂卵胞(LUF)
黄体化非破裂卵胞(LUF)は高温期が短くなることで生理周期が短くなってしまう原因の一つです。
通常卵胞というのはおよそ2週間かけて成長し、十分に卵胞が育ったところで排卵が起こるわけです。
そして排卵されたあとの卵胞が黄体となって黄体ホルモンを分泌します。
この黄体ホルモンの働きによって高温期が維持されるわけです。
つまり、排卵前の卵胞から出る黄体ホルモンの量と排卵後に出される黄体ホルモンの分泌量の違いによって基礎体温の2層の状態が生まれるわけです。
ところが排卵していないのにも関わらず基礎体温が2層になることがあります。
それが黄体化未破裂卵胞(LUF)の状態なのです。
これは卵胞は十分育っているのですけれども様々な原因で排卵できず、その結果として排卵しない卵胞が黄体化してしまった状態で卵巣内に 残っている状態なのです。
本来であればこの状態であれば 黄体ホルモンはでないはずなのですけれども黄体ホルモンの分泌が起きて二層の状態を作るのです。
ただし完全な黄体とはなっていないため黄体ホルモンが十分にでないため高温期が通常よりも短くなるのが特徴です。
黄体化未破裂卵胞(LUF)の診断方法と発生頻度
この病態は病院に通って超音波診断(エコー)などで排卵前後の時期の卵胞の状態をチェックしてもらわないと分かりません。
そのためこの時期に病院に通って調べてもらう必要が出てきます。
ただし黄体化未破裂卵胞(LUF)は毎回起こるということは通常ありません。
自然に起こる場合はおよそ7%ぐらいの確率で誰にでも起こると言われています。
これを毎月の月経で考えると14回の生理につき1回ぐらい起こる計算になります。
つまり一年に一回程度しか起きていないのがふつうなのです。
そのため通常の頻度で起こるのであればさほど気にする必要ないと思います。
黄体化未破裂卵胞(LUF)と基礎体温
黄体化未破裂卵胞(LUF)の基礎体温の特徴は排卵しいていないのにも関わらず二層に分かれているということです。
あともう一つの特徴が高温期が短いという事です。(一般的には10日未満といわれています)
そして、これはしばしば黄体機能不全と見間違えられやすいものです。
黄体化未破裂卵胞(LUF)の問題点
黄体化未破裂卵胞(LUF)の状態になるとその周期は排卵していないため妊娠ができません。
そしてこの黄体化未破裂卵胞(LUF)は 卵巣内に残ってホルモンを分泌し続けます。
それによって次の卵胞がうまく育たなくなったりすることが多いためピルなどを服用して次の周期をお休みするというケースが多いのです。
つまり黄体化未破裂卵胞(LUF)になると不妊治療を2周期分お休みすることになるのです。
黄体化未破裂卵胞(LUF)の改善策
もし黄体化未破裂卵胞(LUF)が年に何回も起きているようであれば、この黄体化未破裂卵胞(LUF)を起こす基礎的な病気である多嚢胞性卵巣症候群や子宮内膜症などを疑った方が良いかもしれません。
そういう場合は産婦人科で追加の検査を受けることが 必要です。
そして場合によっては多嚢胞性卵巣症候群や子宮内膜症などに対する治療を受けた方が良いこともあります。
そのためもし高頻度に黄体化未破裂卵胞(LUF)が起きているようであれば詳細に検査をすることをお勧めします。
さらに黄体化未破裂卵胞(LUF)について詳しく知りたい方は➡黄体化未破裂卵胞(LUF)
黄体機能不全
卵胞が排卵した後のものを黄体と言いますけれどもこの黄体の働きが十分でない状態を黄体機能不全と言います。
日本産婦人科学会の定義では「黄体からのエストロゲンとプロゲステロンとの分泌不全により子宮内膜の分泌性変化が起こらないものをいう。 妊卵の着床障害による不妊原因として重要である。」となっています。
つまり、エストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が減ったことが原因で子宮内膜がうまく育っていない状態を指しているということです。
黄体機能不全も黄体化非破裂卵胞(LUF)と同様に高温期が短くなることで生理周期が短くなってしまう原因の一つです。
黄体機能不全の判断基準
- 高温期が10日未満(12日未満と定義しているものもあります)
- 低温期と高温期の差が0.3度未満
- 高温期に基礎体温が一時的に下がる場合
- 高温期5日目~9日目の黄体ホルモンの分泌量が10ng/ml未満
- 分泌期における子宮内膜日付胗で2日以上のずれがある
などです。
かなり厳密なものですけれども、実際に実際にはここまで酷い状態じゃない黄体機能不全気味というような患者さんは普段の漢方相談でもよく見かけます。
黄体機能不全と基礎体温
黄体機能不全はいくつかの基礎体温のパターンがあります。
不妊症の方はそのパターンのどれかに該当するという事が多いのです。
一人の人がすべての黄体機能不全のパターンの基礎体温になることはほとんどありません。
黄体機能不全の改善策
病院での改善策
以前は高温期(黄体期)に黄体ホルモンの補充療法を行うのが主流でしたが、最近では正常な黄体となるために卵胞をしっかり成長させ排卵をさせるために排卵誘発剤を用いる治療が主流になってきています。
漢方薬による改善策
黄体機能不全の状態を漢方理論で解釈すると、気虚、血虚、腎虚の可能性があります。
そのため、まずは気虚か血虚か腎虚かを漢方的に見極め、その原因に応じた漢方薬を用います。
代表的な気虚の薬・・・補中益気湯
代表的な血虚の薬・・・当帰芍薬散
代表的な腎虚の薬・・・鹿茸製剤
卵胞期短縮症
女性が閉経に近づいていく過程(更年期障害)で起こる卵巣機能の低下によって生理周期が短くなることがあります。
これはどのようにして起こるのかと言うと、卵巣機能が衰えてくると卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌が今までよりも低下してきます。
この卵胞ホルモン(エストロゲン)の濃度の低下を脳の脳下垂体が感知します。
それによって脳下垂体は卵巣機能を上げるために卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を今までよりも高くします。
この卵胞刺激ホルモン(FSH)はその名の通り、卵胞刺激することで卵巣内の卵胞の発育を促進させるのです。
それによって卵胞の発育が通常よりも早くなり、卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌が高まり、排卵も早くなることがあるのです。
結果として低温期が短くなることで月経周期も短くなるのです。
この状態は卵胞の発育の部分だけ着目すればよい状態のように思えますが、もともとは卵巣機能の低下によって胞ホルモン(エストロゲン)の分泌低下が起こったことによるものなので、卵の質は低下している可能性が高いのです。
そのため、妊娠の確率は一見高まりますが、実際には妊娠しづらかったり、流産しやすかったりする可能性が高いのです。
卵胞期短縮症の基礎体温
卵胞期短縮症はその名の通り卵胞期が短くなる症状です。
卵胞期短縮症の改善策
病院での改善策
卵巣機能がかなり低下している状態ですので不妊治療を希望される場合は治療を急ぐ必要があります。
基本的には体外受精にステップアップしていくのが普通です。
ただし、残っている卵の数が少なく卵巣機能が低下してきているような状態の場合、通常のホルモン補充療法ではうまくいかないケースもあります。
そのような時には自然周期による体外受精などの方が良いケースも出てきます。
そういう場合自然周期を得意としている体外受精を行っている病院にかかることが重要であると思います。
漢方による対策
このように年齢に伴って卵巣機能が著しく低下した状態というのは漢方では血虚もしくは腎虚もしくはその二つが併発している状態というふうに考えます。
この世に血虚の状態に関しては補血薬を用いますし、腎虚に対しては 補腎薬という漢方薬を用いて治療を行っていきます。
※病院での対策と漢方の対策は相反するものではなく相互に補完しうるものです。そのため、病院での治療だけで限界を感じで漢方を併用することで結果が出るケースは多数あります。
無排卵月経
無排卵月経とは月経生理が起きているにもかかわらず実際には排卵が起こっていない月経を言います。
排卵月経は人によって短い期間で月経が起こる頻発月経やまれにしか起こらない希発月経 などもあります。
そして生理の量が極端に少ない過少月経や生理の量が極端に多い過多月経、生理の期間が極端に短い過短月経、生理の期間が極端に長い過長月経などを起こしたりもします。
これは人によって様々です。
無排卵月経を起こす仕組み
なぜ無排卵月経が起こるのかと言うと直接的には(卵胞ホルモン)エストロゲンの分泌が不十分なため、排卵の引き金となるLH サージが起こりません。
そのため排卵が起こらず、結果として黄体が形成されず、黄体ホルモンの分泌も不十分となり子宮内膜を維持することができず生理が起こるということになります。
無排卵月経を起こす原因
無排卵月経を起こす原因の中で病気でないものとしては卵巣機能の十分発達できてない思春期、40代以降に卵巣機能が徐々に衰えてくる 加齢による問題(更年期)が考えられます。
本来正常に月経がくるべき20代30代で無排卵月経が起こる際は病的な原因の可能性があります。
主に脳下垂体や視床下部の影響によるものと考えられています。
この脳下垂体視床下部に影響を与える要因として過度なストレスや、過度なダイエット、多嚢胞性卵巣などが挙げられます。
無排卵月経と基礎体温
無排卵月経の場合の基礎体温には特徴があります。
それは基礎体温が二層にならず一層のまま続いていくということです。
無排卵月経の検査
血液検査によって卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体形成ホルモン(LH)などの血中ホルモンを調べることによって検査することができます。
また超音波検査(エコー)によって卵巣内の卵胞の大きさを調べることによっても検査が可能です。
無排卵月経の改善策
病院での治療
40代以降の方で特に妊娠を希望されていない場合はそのまま経過観察ということもあると思います。
また10代前半の場合はしばらく様子を見ると言う経過観察の可能性もあります。
二十代、三十代で正常な月経が来なければならない形で妊娠希望される方は排卵誘発剤による治療が行われることが一般的です。
現時点で妊娠を希望されていない形の場合はピルを使って定期的な月経が来るようにすることが多いです。
漢方による治療
漢方薬による治療は無排卵月経を起こした原因によってアプローチが異なってきます。
ストレスによるものであれば主に気滞(肝気鬱結)の治療を行いますし年齢に伴う問題であれば血虚や腎虚の治療を行います。
急激なダイエットによる栄養障害が原因になっている場合は気虚や血虚に対する治療を行います。
無排卵月経は不妊症の中でもなかなか難しいものであるため、漢方と病院の治療を併用することが望ましいと私は思います。
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)とは甲状腺ホルモンの分泌が過剰となって体の新陳代謝が異常に高まる病気です。
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の症状は身体の代謝が高まる結果として体温が高くなる、食べても太らない、症状がひどければ痩せてくる、動悸、 息切れ、手の震え、 怒りっぽくなる、ひどければ眼球突出などの症状を起こすことがあります。
また甲状腺機能亢進症(バセドウ病)は不育症の原因の一つになると言われています。
甲状腺機能亢進症の代表的なものがバセドウ病ですけれどもバセドウ病の原因は自己免疫疾患です。
何らかの原因で甲状腺刺激ホルモン受容体に対する自己抗体が体内で作られるとその抗体が甲状腺刺激ホルモン受容体に刺激を与えることで甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるのです。
甲状腺機能亢進症の基礎体温
甲状腺機能亢進症基礎体温特徴は 新陳代謝が高まる結果、低温期も高温期も体温が高めになりやすいということです。
代謝が高まることによって 発育も早くなるため低温期が近くなる傾向があります。
甲状腺機能亢進症の改善策
甲状腺機能亢進症に関してはメルカゾールなど病院で出される薬を服用することで確実に改善されていきます。
そのため甲状腺機能亢進症コントロールしながら不妊治療を行う場合は病院での治療をする方が効率的です。
ただし お薬は甲状腺機能亢進症を根本的に治す薬ではないため、根本的な体質改善を考えておられる場合は漢方薬による治療も選択肢のひとつとなります。
もともと生理周期が短い
一般的に生理周期というのは24日から31日の間に来るのが正常と言われています。
つまり生理周期が24日未満の場合は一般的に頻発月経という病的な月経ということになるのですが、ずっとそのペースで月経のある方もおられるのです。
これが病的なのか正常なのか判別するのはなかなか難しいのですが、多くはないですが、こういう方もおられるのです。
そのためこういう方は改善策などは必要ないわけです。
そういう方は普通に妊娠されたりします。
まとめ
基礎体温の生理周期が短い時に考えられる6つの原因と改善策について書いてきました。
基礎体温の生理周期な短くなる原因には様々なものがありますが、その中には年齢から考えれば自然なことで心配する必要のないものもあります。
しかし、一方ではっきりとした不妊症の原因疾患となるものもあります。
当面妊娠を希望されていない場合でも、病院には一度受診をして身体の状態を検査しておくことは大事なことです。
そして妊娠を希望される際はできるだけ早く病院にかかり治療を開始することをお勧めします。
ただしその原因によっては漢方薬による治療や病院と漢方薬との併用が望ましいケースもあります。
その判断に悩まれている方や、治療を希望される方はご相談いただければと思います。
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