まずは基礎体温とは何か?基礎体温をつけると何がわかるのか?などについてまずはお話しします。
基礎体温とは安静時の体温の事を言います。
一日のうちでもっとも安静にしている状態が寝ている時なので、朝起きて動く前が一番その状態に近いため朝起きて一番に測るのです。
この基礎体温は女性の体の状況と密接に関連していて、これを計ると、妊娠しやすい時期、排卵したかどうか、妊娠したかどうかなどが分かります。
それ以外にも特に基礎体温の低温期が長く続く場合は、色々な不妊症の原因が隠れている事がありますので、ここでご説明します。
基礎体温の低温期が短いとは何日程度のことなのか?
そもそも基礎体温の低温期の長さというのはどのくらいが標準なのでしょう?
基礎体温の低温期の長さの標準というのははっきりとは定義されていませんが、低温期はおおよそ12日~17日までなら間違いなく正常と考えて良いです。
とすると、低温期が短いというのは11日以下ということになります。
基礎体温の低温期が短いということの何が問題なのか?
基礎体温がの低温期が短い場合、不妊症の原因が隠れていることが多いからです。
そのため、基礎体温の低温期が短いというのは原因を突き詰めて、場合によっては治療を行う必要があるのです。
基礎体温の低温期が短い時の原因1 卵胞期短縮症
その名の通り卵胞期が短縮する病気です。
この卵胞期短縮症の原因は簡単に言えば加齢(老化)に伴う卵巣機能の低下です。
もう少し具体的に書くと、この疾患は40代以降の女性に見られるものです。
卵巣機能が衰えてくると卵胞を育てる力も落ちてきます。
そのため卵胞から分泌されるエストロゲンの量が減少してきます。
このエストロゲンの減少を脳の脳下垂体が感知すると卵胞の働きを高めるために卵胞刺激ホルモン(FSH)を大量に分泌します。
卵胞刺激ホルモン(FSH)はその名の通り卵胞を刺激して卵胞の働きを活発にし、卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌を増やす作用があるのです。
この卵胞刺激ホルモン(FSH)の働きによって卵胞は刺激され、通常よりも早く卵胞が育つことが起こるのです。
それによって通常よりも早く排卵が起こり、低温期が短くなるのです。
ただしこれはずっと続くことはなく、卵胞刺激ホルモン(FSH)がどれほど卵巣を刺激しても卵胞の数が極端に減ってくると育つ卵胞がなくなり無排卵・無月経となって周期が極端に長くなるということがいずれ起こってきます。
つまりこれは女性の多くが経験する閉経に向かう途中で起こってくる症状の一つと考えてもらえば良いと思います。
卵胞期短縮症の基礎体温のグラフの傾向
卵胞期短縮症の基礎体温のグラフの傾向は卵胞期(低温期)が短い点を除けば、高温期の長さや高さは標準的な基礎体温のグラフとそれほど変わらないことが多いです。
卵胞期短縮症の改善策
病院での治療
これは高齢になって卵巣の機能が落ち始めて起きている症状ですので不妊治療そのものを急ぐ必要があります。
通常は不妊治療のステップアップをする必要が出てきます。
つまりできるだけ早く体外受精を行うということです。
さらに詳しく知りたい方は➡卵胞期短縮症
漢方での治療
漢方ではこのように卵胞刺激ホルモン(FSH)の働きを一時的に高まって低温期が短くなる状態というのを腎虚と考え治療を行います。
ただし、この状態は腎虚の中でも軽度なレベルであることが多いです。
腎虚に用いる代表的な漢方薬は鹿の角や胎盤エキスなど動物生薬を用いるのが一般的なやり方です。
腎虚について詳しく知りたい方は⇒腎虚と基礎体温
基礎体温の低温期が短い時の原因2 甲状腺機能亢進症(バセドウ病)
甲状腺機能亢進症とは甲状腺ホルモンが大量に分泌されることによって体の新陳代謝がこうしんしてしまう病気です。
甲状腺機能亢進症の症状は新陳代謝が高まるため、たくさん食べても痩せてしまったり、暑がりで汗かきになったり、動悸や震えイライラしやすい、疲れやすい更に症状が進むと眼球突出の症状が出てくることもあります。
この病気で代表的なものがバセドウ病ですが、これは自己免疫疾患のひとつです。
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の基礎体温のグラフの傾向
甲状腺機能亢進症の基礎体温は全体的に代謝が高まるため卵胞の発育も早くなることが多いです。
そして代謝が高いため、低温期も高温期も体温が高めになる傾向があります。
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の改善策
甲状腺機能亢進症の場合は病院での治療が効率的です。
多くの場合メルカゾールというおの薬を服用することでコントロールができます。
この薬を飲みながら不妊治療を行うことは可能です。
ただしこの薬で根本的に甲状腺機能亢進症が治るというわけではありません。
そのため根本的に甲状腺機能亢進症を改善したいということであれば漢方薬による治療も選択肢の一つになります。
さらに詳しく知りたい方は➡甲状腺機能亢進症
基礎体温の低温期が短い時の原因3 熱証(漢方理論)
これは漢方理論の一つの考え方です。
この状態というのは体の代謝が非常に盛んで卵胞を育てるスピードも早いため卵胞が育ってしまい、結果として早く排卵して低温期を短くなるという状態です。
この状態は西洋医学で考えると甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の方も当てはまりすが、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)でなくてもこのような症状を呈する方はこの状態に当てはまります。
タイプとしては身体がガッチリしていて食欲も多く、暑がりなタイプです。
この熱証も漢方的には不妊症の原因となります。
熱証のタイプの基礎体温のグラフの傾向
熱証タイプの方は体の熱代謝が盛んなため、基礎体温そのものが高い傾向があります。
そのため基礎体温の低温期も高めで短めであったり、高温期も通常よりも高めであったりします。
基礎体温のグラフとしては甲状腺機能亢進症(バセドウ病)に近いグラフの形になることが多いです。
熱証のタイプの改善策
このように体に熱が盛んにあるタイプの人に対しては 体の熱を冷ますような漢方薬を用います。
実際には血流良くして体の熱を分散させる活血薬(血液をサラサラにする漢方薬)や苦味で体を冷やすような清熱薬を用いる場合があります。
さらに詳しく知りたい方は➡熱証と基礎体温
基礎体温の低温期が短い時の原因4 もともと生理周期が短い
これは病気ではなくもともと体質的にもっているもので異常で無い方がごく少数おられます。
そのため、こういう方は改善策は特に必要がないわけです。
ただし、それは異常がないかどうかを判断するには基礎体温表だけでなく、病院での血液検査や超音波検査(エコー)、問診などによる自覚症状の異常がないことなど様々な項目をチェックして総合的に判断する必要があります。
そのため、これに関してはご自身で判断されるのは難しいと思います。
まとめ
基礎体温の低温期が短い時の4つの原因とその改善策について書いてきました。
基礎体温の低温期が短いのは病的な原因の可能性もあるし、そうでないケースもあります。
病院で治療を急ぐ必要のあるものもあるし、病院での治療の方が効率的なものもあります。
また病院で特に問題が無くても漢方的には問題となり、不妊の原因となるものもあるということです。
そして何より基礎体温の低温期と高温期の長さによって不妊症の原因は異なりますし、その改善策も当然異なります。
そのため下記の記事も合わせてお読みください。
1.基礎体温の高温期が長い時の5つの原因と改善策とは?
2.基礎体温の高温期が短い時の4つ原因と改善策とは?
3.基礎体温の低温期が長いときに考えられる4つの原因とその対策とは?
さらに基礎体温の測り方や見方など詳しく知りたい方は➡基礎体温表のグラフの測り方や見方などを詳しく解説