LHサージと排卵にずれがある時に考えられる4つの原因と対策について解説します。
LHサージとは、LH(黄体形成ホルモン)が大量に出る現象のことです。これによりおよそ36時間以内に排卵すると言われています。基礎体温が一度ぐっと下がり、頸管粘液の量が増えます。

この記事の読者対象は、基礎体温がLHサージと思われる状態であるのに病院に行くと「まだ排卵していない」と言われ困っている不妊治療中の方です。

LHサージについては、下記記事で詳しく解説していますので、ぜひご一緒にお読みください。

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この内容は長年基礎体温などを用いて不妊治療を行ってきた漢方薬剤師としての経験に基づくものです。

排卵を知る方法

排卵を予測するための方法は、大きく分けて4つあります。

  • 基礎体温をつけて予測
  • 排卵検査薬(尿検査)で排卵を確認
  • 体の変化から予測(おりものの状態や身体のハリなど)
  • 超音波で卵胞の発育具合を確認し排卵日を予測

とくに、排卵検査薬(尿検査)で排卵を確認する場合はLHサージが重要なポイントとなります。
排卵の前兆であるLHサージが見られる前後が最も妊娠し易いと考えられていますが、このLHサージが排卵とずれてしまうことがあります。次項では、その問題について解説していきます。

LHサージと排卵にずれがあると”タイミング”の予測ができない

LHサージと排卵にずれがあると何が問題なのか?

それは、いつタイミングをとればいいのかわからないということです

頻繁に病院に通うことができれば、病院での排卵のチェックでタイミングをとることが可能ですが、基礎体温を付けている方の大きな目的の一つは病院に行かずにタイミングをとる日の予測を付けることなのです。

病院に仕事を休んでまで、何度も通う事の出来ない方はたくさんおられます。

そのため、このずれがあると、妊娠するためにつけている基礎体温も無駄になってしまうのです。

ではLHサージと排卵にずれが起こるのはなぜなのでしょう?

それは簡単に言えば軽度な排卵障害が起きているのです。

それが重度になってしまうと無排卵となってしまうわけです。

それではこの軽度に排卵障害を起こす原因と対策について書いていきます。

LHサージと排卵がずれる4つの原因と対策

原因1:軽度の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は排卵障害を起こす代表的な疾患の一つです。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は排卵できない卵胞が数珠状につながったネックレスサインといわれるものが超音波検査エコーで確認できるのが特徴の一つです。

どうして多嚢胞性卵巣症候群の(PCOS)場合、排卵障害が起きるのかと言うと、ひとつにはアンドロゲンと言われる男性ホルモン濃度が高まって卵胞を育てる働きを阻害してしまうこと、

あともう一つは卵巣の表層の膜を厚くしてしまって排卵できにくくてしまうということが原因です。

そのためLHサージそのものは起きるのですが、うまく排卵ができないということになります。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の病院での対策

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の病院での対策は軽度であれば排卵誘発剤の服用になります。

重度となった場合はゴナドトロピン製剤による治療もしくはインスリン抵抗性対する薬剤であるメトホルミン製剤(グリコラン等)を併用することが一般的です。

多嚢胞性卵巣の漢方による対策

多嚢胞性卵巣を漢方理論で考えるとほぼ瘀血が原因です。

そのため瘀血を改善する活血薬を用いて治療を行います。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)については下記記事にて、詳しく解説しておりますので、ぜひお読みください。

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原因2:子宮内膜症

子宮内膜症も多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と同様に卵巣の表面の膜を厚くしてしまうことがあります。

そうなると卵胞が排卵しづらくなります。

子宮内膜症は子宮内膜が子宮内膜以外の場所にできることを言います。

それが卵巣内できてしまうとチョコレート嚢胞の原因になりますし、子宮内膜でなく子宮筋肉内にできてしまうと子宮腺筋症となってしまいます。

そしてそれが卵管とそれを取り巻く周辺組織のあたりにできてしまって癒着を起こすと卵管閉塞の原因になったりします。

そしてこの子宮内膜が卵巣の外側の辺りに できて癒着を起こしてしまうとこれもまた排卵障害の原因となってしまうのです。

子宮内膜症で卵巣の外側の膜が少し固くなった状態ぐらいであれば排卵は起こり少しタイミングがずれるというようなことが起こりやすくなるのです。

子宮内膜症の病院での対策

この子宮内膜症の病院での対策は妊娠を希望するかしないかによって異なります。

妊娠を希望されない場合は経口避妊薬ピルの服用で内膜症の症状を減らしていくというやり方もありますに。

妊娠を希望される場合はそれは難しいということになります。

そのため、場合によっては癒着を取り除くような手術を受けるという選択肢が出てきます。

子宮内膜症の漢方による治療

子宮内膜症を漢方理論で考えると瘀血が大きな原因となっています。

しかし、本当の体質的な問題には血虚があります。

そのため、治療としてはまずは瘀血に対する活血薬を用いて、瘀血が改善されてきたら血虚に対して補血を行う治療を行います。

子宮内膜症については下記記事にて、詳しく解説しておりますので、ぜひお読みください。

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原因3:クラミジア感染

クラミジア感染は卵巣付近で炎症を起こし、癒着の原因になります。

この癒着が軽度であれば排卵のタイミングがずれるということになりますし、癒着の度合いがひどければ、 排卵できない無排卵の状態になります。

実際にはクラミジア感染だけではなく、その他の感染症であっても、それが腹腔内で炎症を起こしてしまうとそれが癒着の原因となることはあります。

クラミジア感染に対する対策

これ以上癒着が進行しないようにするには抗生物質の服用によってそれは可能になります。

しかし癒着自体をなくしたい場合は癒着の有無を調べる腹腔鏡検査で癒着を剥離することができます。

 

原因4:手術後の癒着

何らかの目的で腹腔内、特に卵巣付近で手術を行った場合、その周辺の組織が癒着してしまうということがあります。

これもその軽重によって排卵のタイミングがずれたり、排卵障害を起こしたりすることがあります。

手術後の癒着の対策

排卵のタイミングがずれるとしても排卵したのであれば、そのまましばらく様子を見るという選択肢もあるように思います。

この癒着を取り除くには癒着を取り除く手術以外に方法はありません。

軽度のものであれば癒着の有無を調べる検査のひとつである腹腔鏡検査で癒着を剥離することができます

癒着の度合いがひどく、剥離手術が難しい場合は癒着の影響を受けない不妊治療を行う(ステップアップ:体外受精以上の治療を行う) ことが望ましいと思います。

 

まとめ

LHサージと排卵にずれがある時に考えられる4つの原因と対策について書いてきました。

結論としてはLHサージと排卵にずれが生じる原因は軽度な排卵障害があるときなのです。

このずれを無くしてゆくためにはこのずれを生じされる原因の治療を行う必要があります。

しかし、その原因によっては治療を行ってもその原因を完全に取り除くことができない場合もあります。

そのような場合にはこのずれに左右されない体外受精にステップアップするのも一つの選択肢です。

そのほかにも選択肢はあると思います。

それらも含め何かわからないことなどありましたらお気軽にご相談ください。

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