ここでは基礎体温の低温期が35.8℃や35.9℃など36℃を切るような低体温になる4つの原因と対策について書いています。
読者対象は基礎体温が36℃を切るような低体温で悩まれている方です。
この内容は長年基礎体温を基に不妊治療を行ってきた漢方薬剤師としての経験に基づくものです。
なぜ36℃以下の低体温が問題なのか?
基礎体温の低温期が35.8℃や35.9℃など36℃以下の低体温になると何が問題なのか?
それは間違いなく不妊症の原因となっているからです。
基礎体温の温度差で一般的な温度差は0.3~0.5℃くらいです。
仮にそれ以上の0.6℃温度差があったとしても35.9の方は高温期が36.5℃ですし、35.8℃の方は36.4℃になってしまいます。
私の長年の不妊治療の経験から言っても高温期が36.5℃を切って妊娠された方は数えるほどしかいません。
そのため、こういう場合はまず低体温を改善させることによって基礎体温全体を上げることが妊娠するためには大事になってくるのです。
基礎体温が35.8℃や35.9℃など36℃以下の低体温の原因と対策
甲状腺機能低下症(橋本病)
甲状腺機能低下症(橋本病)は基礎体温が36℃を切ることがあります。
甲状腺機能低下症とは
甲状腺機能低下症とは甲状腺の働きの低下によって甲状腺ホルモンの 分泌が低下し、それに伴って身体全体の代謝機能も低下してしまって種々の症状を引き起こす病気です。
この甲状腺機能低下症を引き起こす原因としては様々なものがありますが、最も代表的なものが橋本病です。
これは自分の甲状腺を自分自身の免疫細胞が攻撃してしまうことによって生じる自己免疫疾患です。
甲状腺機能低下症(橋本病)の症状
この甲状腺機能低下症になると様々な症状が出るのですけれども中でも不妊症に直結してしまう重篤な問題というのは基礎代謝が低下することによる体温の低下です。
この体温の低下というのは基礎体温にも影響を与えます。
基礎体温の高温期も低温期も関係なく全体的に体温が低下してしまいます。
これによって不妊症の原因になりますまた甲状腺機能低下症は間接的に高プロラクチン血症と同様の症状を引き起こすことがありますし、 不育症(習慣性流産)の原因の一つになることもあります。
そのため甲状腺機能低下症というのはしっかりと治療すべき問題です。
甲状腺機能低下症(橋本病)かどうかの検査方法
甲状腺機能低下症(橋本病)かどうかの検査は現在通われている産婦人科でも希望すれば可能ですし、内科でも受けることができます。
これは血液検査でホルモンの数値をチェックすることで簡単にわかります。
また甲状腺機能低下症(橋本病)や甲状腺機能亢進症(バセドウ病)のいづれの疾患も自己免疫疾患のため、喉の付近を普通の方と比較すると明らかに腫れています。
それも病院に行く目安の一つです。
甲状腺機能低下症の対策
これは病院でチラージンという甲状腺ホルモン服用することが最も簡単で効率的です。
そのためないかもしくは甲状腺専門のクリニック 多くの場合は不妊専門病院から紹介してもらえることが多いので不妊専門病院にかかって相談されるのが一番良いのではないかと思います。
漢方による対策
不妊の原因となる甲状腺機能低下症を治療するというだけであれば病院で甲状腺ホルモンであるチラージンを服用するのが最も簡単でおすすめです。
ただし、この状態というのはチラーヂン服用しなくなればまた元に戻ってしまいます。
この甲状腺機能低下症を根本的に体質を改善する時から始めたいのであれば漢方薬による治療という選択肢もあります。
さらに詳しく噫りたい方は➡甲状腺機能低下症
加齢(老化)≒腎虚に伴う基礎代謝の低下
加齢(老化)に伴って基礎代謝の低下している方がおられます。
漢方理論ではこのような状態を腎虚と呼び病気になる一つの原因と考えます。
この年齢に伴う基礎代謝の低下というのは特に元々運動不足であるとか体が虚弱であるとかそういった元々の体質があってさらにそれが年齢を経ることでその状況が悪化したものと考えられます。
症状としては冷え性や疲れやすい、倦怠感、食欲不振、気力がないなどの症状を伴うこともあります。
加齢(老化)に伴う基礎代謝の低下の対策
残念ながら対策として若返らせるということはできません。
病院でも特別な治療法はありません。
しかし若返らせることはできなくても老化を遅らせることは可能です。そして長くは続かないのですが、一時的に昔の状態に一部の機能が近づくことがあるのです。
このようなことが起こるのは漢方特有の事だと思います。
漢方では加齢(老化)に伴う機能の低下を腎虚と呼びます。
そしてこの腎虚を改善するための治療薬が補腎薬なのです。
通常、補腎薬には植物性のものであれば乾姜といって生姜を特殊加工して温める作用強めたや附子という心臓の拍動数を増やして代謝を上げるような作用の強いものや鹿茸という鹿の角や動物の胎盤を用いた生薬などが含まれたものを用います。
このような漢方薬を服用することによって徐々に基礎代謝が高まり、基礎体温全体が上がってくるのです。
さらに詳しく知りたい方は➡腎虚と基礎体温
加齢(老化)≒腎虚に伴う基礎代謝の低下に対する養生法
自分でできることとしては軽い運動を継続するということです。
そしてお風呂の湯船にしっかり浸かるということ。
そしてバランスのとれた食事を3食きっちり食べること。
とても当たり前のことですけれどもこれらのことを継続することが何より重要なのです。
このタイプの方でちゃんとやっている人は実際には少ないのです。
そのため繰り返しになりますが些細なことですが継続することが重要になってくるのです。
陽虚(代謝機能が悪く冷えやすい状態)
もともと代謝が悪く、冷え性があり、実際に体温を測っても35℃代の低体温で身体の調子もいまいちで、疲れやすかったり、風邪を引きやすかったりするけれども、病院で検査をしても甲状腺機能低下症のようなはっきりとした病名のつかないような方がこれに該当します。
そのためこれは腎虚(老化)とは異なります。
これは気虚の延長線上にあるもののことが多いですが、単純に代謝が悪いだけの方もおられます。
陽虚(代謝機能が悪く冷えやすい状態)の対策
基本的には元気にして代謝を上げて温めるものか単純に代謝を上げて温めるような漢方薬を用います。
代表的な漢方薬としては人參製剤(高麗人参)を含む漢方薬の人参湯など用いることが多いです。
陽虚(代謝機能が悪く冷えやすい状態)の養生法
冷たいものは控える(アイスクリーム、冷蔵庫で冷やした飲料水など)
温かいものを食べるようにする。
生野菜は控える。
野菜は過熱して摂取する。
辛味のあるものを積極的にとる
嫌いでなければ陸生の動物のお肉などを摂取する
発酵食品(主に味噌)を積極的に摂取する
生まれながらの体質が体温の低い体質(平熱が低いタイプ)
極々稀にですけれども元々体温が36℃以下の低い方がおられます。
簡単に言えば平熱が低いのです。
このような方は体温が低いことが病的(不妊症の原因となっていない)ではないことがあるのです。
先ほど挙げたような老化に伴う基礎代謝の低下の方などは自覚症状で疲れやすいや冷え性などがあるのですけれども、元々体温が36℃以下の低いタイプの方というのは体温が低いことによる自覚症状は全くないのです。
つまり体調は健康そのものだけれども、体温を測ってみると35℃代と低いという方なのです。
そして高温期が36.4℃~36.5℃であってもこのようなタイプの方はちゃんと妊娠し流産することなく出産まで至ったりするのです。
私の経験で言えばおおよそ100人に1人ぐらいの割合です。
けれどもこういう方が一定数をられるのは事実です。
こういう方は体温を上げる漢方薬の治療ではなく漢方的な体質に合った漢方治療を行うと妊娠されたりします。
その際に基礎体温が改善することもあるし改善しないこともあるのです。
しかし改善しなくても妊娠することがあるということです。
そのためこういう方は体温に関しては特に対策の必要が無かったりするのです。
まとめ
基礎体温の低温期が35.8℃や35.9℃など36℃を切るような低体温の4つの原因と対策について書いてきました。
このような状態が起きる原因には西洋医学的な治療が向いている原因と漢方的な治療が向いている原因、そして特別治療の必要のないものもあるという事です。
その判断は残念ながら、ご自身で判断するのは難しいです。
そのため、まずは不妊専門病院or内科などの病院で検査を受けてみて問題があるようであればすぐに治療を開始するということです。
もし特別な原因が見当たらなかった場合は不妊治療に強い漢方の専門薬局で相談されることをお勧めします。