ライフステージとは人生の変化を節目で区切った、それぞれの段階(ステージ)のことです。
女性のライフステージは大きく以下の4つに分けられます。
- 思春期・・・女性ホルモン(エストロゲン:卵胞ホルモン)の分泌が増え始める時期
- 成人期(性成熟期)・・・女性ホルモン(エストロゲン:卵胞ホルモン)の分泌が最も盛んになる時期
- 更年期・・・女性ホルモン(エストロゲン:卵胞ホルモン)の分泌が急激に減少し始める時期
- 老年期・・・女性ホルモン(エストロゲン:卵胞ホルモン)の分泌が少なくなった時期
その中でも今回は成人期についてのお話をしてきます。
思春期についての記事はこちら
更年期・老年期についての記事はこちら
年齢としては19歳~45歳くらいの頃を指す言葉です。女性ホルモン(エストロゲン:卵胞ホルモン)の分泌が最も盛んになる時期であるため、このホルモンの過剰分泌によっての疾患(子宮筋腫や子宮内膜症)も起こりやすい時期でもあります。このことがベースとなり、生理に関連しての疾患(鉄欠乏性貧血)も生じやすい時期です。
甲状腺疾患
甲状腺の病気は男性よりも女性に多い疾患です。
甲状腺の病気として代表的なものに甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症があります。
自己免疫疾患が原因となって甲状腺機能亢進症となる病気がバセドウ病であり、自己免疫疾患が原因となって甲状腺機能低下症となるものが橋本病です。
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)
20代~30代の女性に多い疾患です。
身体の代謝を促進させる甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることによって身体の新陳代謝が過剰に更新した状態になることによってさまざまな症状を引き起こす病気です。
症状としては、心拍数の増加(動悸)、血圧の上昇、体温の上昇(暑がり)、発汗、手の震え
不眠、体重減少などが起こります。この状態が長く継続すると眼球突出などを生じる場合もあります。
血液検査の所見としてはFT3(正常値0.7~1.5ng/dl)、FT4(正常値2.2~4.2pg/ml)が上昇し、TSH(正常値0.5~4.3μU/ml)が低下します。
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)に用いる代表的な漢方薬
加味逍遙散・・・いらいら、怒りっぽいなどの精神的な症状や生理不順など婦人科の症状を伴うような場合に用います。
甲状腺機能低下症(橋本病)
甲状腺機能低下症は男性と女性の比率で言えば1:20くらいの割合で女性に多い病気です。甲状腺機能低下症は年齢的にはどの世代でも起こりえる病気です。
身体の代謝を促進させる甲状腺ホルモンの分泌が低下することによって身体の新陳代謝が低下し、さまざまな症状を引き起こす病気です。
代表的な症状としては、寒がり(体温の低下)、気力の低下、倦怠感、むくみ、体重増加などがあります。
血液検査の所見としてはFT3(正常値0.7~1.5ng/dl)、FT4(正常値2.2~4.2pg/ml)が低下し、TSH(正常値0.5~4.3μU/ml)が上昇します。
甲状腺低下症に用いる代表的な漢方薬
桂枝茯苓丸加薏苡仁・・・瘀血(おけつ:血流障害)を改善することによって新陳代謝を高め改善させる
芎帰調血飲第一加減・・・桂枝茯苓丸加薏苡仁に用いるタイプよりもやや虚弱な瘀血(おけつ:血流障害)タイプの人に用いる。
子宮筋腫
子宮筋腫は30歳以上の女性の2割から3割の方に見られるとてもメジャーな婦人科の病気です。
子宮筋腫は子宮内にできる良性の腫瘍です。そのため、この筋腫そのものが直接病気を引き起こすことは無いのですが、これが大きくなると、様々な病気に影響を与えるようになります。子宮筋腫がなぜできるのかそのはっきりした原因はわかっていませんが、閉経を迎えると子宮筋腫は小さくなっていくことが多いため、女性ホルモンが影響しているということはわかっています。
子宮筋腫はそのできる部位によって名前が異なります。
子宮の外側にできる筋腫を漿膜下筋腫といいます。そして子宮筋の中にできる筋腫を筋層内筋腫といいます。また子宮の内側にできる筋腫を粘膜下筋腫と言います。
筋層内筋腫と粘膜下筋腫は子宮内膜の表面積を増やしてしまう事によって、生理の量が異常に増加したりするため、月経過多や生理痛の原因になります。そして月経過多が続けば貧血になることもあります。また、特に粘膜下筋腫がちょうど受精卵の着床しやすいような場所にできてしまうと、着床をげてしまうため、不妊症の原因になることもあります。漿膜下筋腫は子宮の外にできるため、婦人科の病気を引き起こすことは基本的にありませんが、子宮筋腫があまりにも大きくなりすぎて腸を圧迫するようになると便秘になったり、膀胱を圧迫すると頻尿になることもあります。
漢方的に子宮筋腫は瘀血(おけつ:血流障害)が原因と考えられています。そのため漢方治療は駆瘀血剤(活血薬)を用いることが基本になります。
子宮筋腫に用いる代表的な漢方薬
桂枝茯苓丸(加薏苡仁)・・・子宮筋腫に用いる駆瘀血剤(活血薬)の中でもっとも代表的な漢方薬です。
桃核承気湯・・・桂枝茯苓丸(加薏苡仁)よりも便秘傾向が強い方や身体の丈夫な人に用います。
温経湯・・・桂枝茯苓丸(加薏苡仁)よりも虚弱なタイプの方に用います。
子宮内膜症
子宮内膜症は子宮内膜が子宮内膜以外の場所で増殖する良性の病気です。この病気は20代~30代の女性に多く見られます。
この子宮内膜症起こす原因はまだよくわかっていませんが、症状の増減が生理に影響されるため女性ホルモンが関わっていることは間違いないです。
子宮内膜は卵胞期(低温期)に増殖し、黄体期(高温期)には維持され、生理期に剥がれ、それが生理(経血)となって身体の外へ出ていくのが普通です。しかし、子宮内膜症の場合は子宮内膜細胞が、生理の度に、そのできた場所で子宮内膜が剥がれる現象が起こります。その内膜細胞が剥がれた場所で炎症や癒着を引き起こすのです。
それが卵管付近であれば卵管閉塞や卵管狭窄を引き起こしますし、腸管付近で起こせば便秘や腹痛、ひどければ腸閉塞の原因にもなります。同様にこれば尿管で起こればおしっこの出が悪くなったりもします。それが腹膜などと癒着すると腰痛の原因にもなりますし、卵巣付近に癒着すれば排卵痛の原因やピックアップ障害という不妊症の原因にもなります。
また、この子宮内膜症が卵巣内にできるとチョコレートのう胞という名前の病気になりますし、子宮内膜が子宮筋層内にできると子宮腺筋症という病気になります。これらは月経困難症や不妊症の原因にもなります。
漢方的には子宮内膜症の痛みを出す原因は血虚(けっきょ:女性ホルモンの働きが不十分な状態)であり、子宮内膜症自体を引き起こす原因は瘀血(おけつ:血流障害)と考えられています。
子宮内膜症に用いる代表的な漢方薬
桂枝茯苓丸・・・瘀血(おけつ:血流障害)が原因の子宮内膜症に用いる代表的な漢方薬
当帰芍薬散・・・子宮内膜症が原因の生理痛に用いる血虚(けっきょ:女性ホルモンの働きが不十分な状態)の代表的な漢方薬
鉄欠乏性貧血
鉄欠乏性貧血はその名の通り、鉄が欠乏することにより貧血を起こす病気です。この跌が欠乏する要因は主に、出血、鉄分の摂取不足、鉄の吸収障害などがありますが、この世代の女性の主な原因は生理の出血によるものです。とくに子宮筋腫や子宮腺筋症などの疾患がある場合は生理の量が通常よりも増加するため、より鉄欠乏性貧血になりやすくなります。さらに食事の偏りやダイエットなどすると貧血はより慢性化、重症化しやすくなるため注意が必要です。鉄欠乏性貧血の症状は立ちくらみ、めまい、動悸、息切れ、疲れやすい、集中力の低下などがあります。
鉄欠乏性貧血の漢方治療は漢方の補血作用のあるものを服用していただきながら、食養生の指導(鉄分を多く含む食品(レバー、肉類、カツオ、マグロなどの魚類)の摂取)を行います。血液検査でヘモグロビンの値が低い場合は、ヘム鉄のサプリメントあの摂取やさらにひどければ病院での鉄剤を併用するようお願いする場合もあります。
鉄欠乏性貧血に用いる代表的な漢方薬
四物湯・・・血虚タイプの貧血に用いる代表的な漢方薬。ただし胃腸虚弱のタイプには向かないことが多い
十全大補湯・・・気血両虚に用いる代表的な漢方薬、胃腸虚弱のタイプにも用いることができる
まとめ
成人期は女性ホルモンの分泌が盛んになる時期で、婦人科系の疾患、不妊症の原因になる疾患が生じやすくなります。
漢方薬局ハーブスでもこの年代の方の婦人科疾患や不妊治療ご相談が多く寄せられています。
ハーブスでは漢方による治療だけでなく、食事や生活習慣からのアドバイスも行っています。
不妊症でお悩みの方はまずはご相談いただければと思います。