ライフステージとは人生の変化を節目で区切った、それぞれの段階(ステージ)のことです。

女性のライフステージは大きく以下の4つに分けられます。

  1. 思春期・・・女性ホルモン(エストロゲン:卵胞ホルモン)の分泌が増え始める時期
  2. 成人期(性成熟期)・・・女性ホルモン(エストロゲン:卵胞ホルモン)の分泌が最も盛んになる時期
  3. 更年期・・・女性ホルモン(エストロゲン:卵胞ホルモン)の分泌が急激に減少し始める時期
  4. 老年期・・・女性ホルモン(エストロゲン:卵胞ホルモン)の分泌が少なくなった時期

その中でも今回は更年期と老年期についてのお話をしてきます。

思春期についての記事はこちら
成人期についての記事はこちら

更年期

閉経を迎える前後5年を更年期と呼びます。日本人の平均的な閉経年齢はおおよそ50才であるため、更年期はだいたい45歳~55歳までの期間を指します。
この時期は人生の中でも大きく家庭環境の変化(親の介護や子供の巣立ち、ご主人の仕事や健康の問題)する時期でもあります。また、更年期は最初のところでも書きましたように女性ホルモン(エストロゲン:卵胞ホルモン)の分泌が急激に減少し始める時期です。この環境の変化と女性ホルモンの減少によってさまざまな疾患・症状が出やすくなります。

関節リウマチ

日本では関節リウマチ患者さんが70万人から80万人いるといわれていますが、その男女比では1:3~4と圧倒的に女性に多い疾患です。中でも関節リウマチが多いのが30代~50代の女性といわれています。
関節リウマチは自己免疫疾患であり、それを引き起こす原因は複合していると考えられています。その複合要因の一つとして女性ホルモンが関わっているのではないか?と言われています。
関節リウマチの特徴は、3関節以上の腫脹、早朝の関節のこわばり、主に指の第二関節に症状が出て、左右対称に発症する。そして炎症を繰り返す中で徐々に変形していく一方、炎症部位も広がっていきます。
漢方的には関節リウマチは水毒と考えます。そのため利水薬を用いる治療を行います。

関節リウマチに用いる代表的な漢方薬

越婢加朮湯・・・急性期の関節リウマチで激しい炎症を伴うときに用いる。

薏苡仁湯・・・極端に症状の激しくない亜急性期の関節リウマチに用いる

桂枝加朮附湯・・・慢性期の関節リウマチに用いる。

更年期障害

更年期とは閉経する前後5年を指す言葉です。この更年期の期間にホットフラッシュをはじめとしたさまざまな症状を引き起こすものをまとめて更年期障害と呼びます。
更年期障害の原因は女性ホルモンの中のエストロゲン(卵胞ホルモン)の減少が大きく関わ
っていると言われています。それは女性ホルモンをコントロールする中枢と自律神経をコントロールする中枢が間脳の視床下部にあり、それらはとても近い位置にあるため、お互いに影響を受けやすいためと考えられています。そのため、女性ホルモンのバランスの乱れが原因で自律神経が乱れ、自律神経失調症と同様の症状を引き起こすのです。そのため、更年期障害の症状は不正出血、生理不順、のぼせ、ほてり、動悸、息苦しさ、めまい、頭痛、肩こり、気力低下、イライラ、不眠、倦怠感、関節痛、筋肉痛、皮膚の痒みなど女性ホルモンの減少によって生じる症状に加え、自律神経失調症に類似した症状も合わせたような、様々な症状が表われるのです。
漢方的には更年期障害の基本は血虚(けっきょ:女性ホルモンの不足、働きの低下)と考えます。そのため、補血(ほけつ:女性ホルモンの働きを高める)ような治療が基本になります。

更年期障害に用いる代表的な漢方薬

加味逍遙散・・・ホットフラッシュやイライラするなどの精神症状を伴う場合に用いる代表的な漢方薬

温経湯・・・更年期の不正出血や生理不順に用いるものです。

老年期

55歳以降で更年期を過ぎて以降の期間を老年期といいます。
老年期を迎えると女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が極端に減ります。それに伴って、動脈硬化が進み高血圧が一気に進みます。また、アルツハイマー型認知症は女性の方が多く、その発生率は老年期に上昇します。その原因として考えられているのが女性ホルモン(エストロゲン)の減少です。
骨粗鬆症も女性ホルモンの減少によって老年期に増えてくる病気の一つです。

高血圧

高血圧は女性に多い疾患ではありません。むしろ男性に多い疾患です。ただし、女性の場合、女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)が血圧の上昇を抑えています。具体的には、エストロゲンが血管内の細胞に働きかけ一酸化窒素(NO)を産生し、血管を柔らかくしているからです。そのため、女性ホルモン(エストロゲン)が減少し始める更年期から女性の高血圧の割合が一気に増えてくるのです。
具体的には女性の20代、30代の高血圧の割合は2.5%前後なのですが、40代
になるとその数が約9.5%と上昇を始めます。そして50代になると約34%、60代になると約50%、70代で約74%となり、男性の高血圧の比率とほぼ並ぶのです。
高血圧は自覚症状が無い方も多いです。ただし、高血圧は心臓疾患や脳血管疾患の基礎疾患となるものであるため、高血圧にならないよう予防したり、早めに治療することが重要です。
もし、高血圧で自覚症状が出る場合は頭痛、めまい、肩こりなどが多いです。
女性の高血圧の漢方治療と養生法は原因と体質などによって異なります。

高血圧に用いる代表的な漢方薬

釣藤散・・・加齢に伴って動脈硬化が進んだことが原因でおこる高血圧に用いる代表的なもの早朝の頭重が特徴

温清飲・・・女性で赤ら顔でのぼせやすく、イライラしやすいようなタイプに用いるものです。

桂枝茯苓丸・・・瘀血(おけつ:血流障害)が原因で生じる高血圧に用いる代表的なものです。

認知症(アルツハイマー型認知症)

認知症全体でみると男性と女性では男性の方が女性の1.6倍多いと言われています。しかし、アルツハイマー型認知症に限って言えば女性は男性の1.4倍多いというデータがあります。ではなぜ、女性にアルツハイマー型認知症が多いのでしょう?はっきりとした原因はわかっていないのですが、その原因の一つに女性ホルモン(エストロゲン)の減少が関わっていると考えられています。エストロゲンは女性ホルモンの一つですが、脳内では記憶・学習に関連する神経伝達物質の役割も果たしていると考えられているのです。それ以外にも脳内でアセチルコリンを保護してその減少を抑えるなど様々な役割を果たしています。そのため、閉経によってエストロゲンが減少すると、脳内の神経伝達が不十分になったり、脳内の神経物質が減少してしまう結果、アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβが増加しアルツハイマー病を発症する原因の一つになっていると考えられているのです。
漢方で認知症は瘀血(おけつ:血流障害)や五志(メンタル・精神的な問題)が原因であると考えてアプローチを行います。

認知症に用いられる代表的な漢方薬

桂枝茯苓丸・・・瘀血(おけつ:血流障害)に用いられる代表的な漢方薬
抑肝散・・・情緒を主る肝を抑え、イライラや興奮などを鎮めるために用いられる漢方薬です。

骨粗鬆症

骨粗鬆症は女性に多い疾患です。そしてこの骨粗鬆症は50才を過ぎてから増え始め、60歳になると5人に一人が骨粗鬆症になると言われています。なぜこのような増え方をするのかというと女性ホルモン(エストロゲン)が骨の新陳代謝に深くかかわっているからです。具体的にいうと、骨の新陳代謝は古い骨を破壊する破骨細胞と新しい骨を作り出す骨芽細胞のバランスで成り立っています。骨粗鬆症は破骨細胞の働きが活発になりすぎたり、骨芽細胞の働きが弱くなることによって生じると考えられています。エストロゲンには破骨細胞を減らして骨芽細胞を増やす働きがあるため、閉経前には骨粗鬆症にはなりにくいのです。しかし閉経するとエストロゲンの分泌が極端に低下するため、骨芽細胞が減少し
破骨細胞が増加することで骨粗鬆症が進行しやすくなると考えられています。
骨粗鬆症に対する漢方的なアプローチとしてはミネラル(海産物)の摂取を積極的に行いながら老化を防止するような漢方薬を服用するというのが基本的なやり方です。

骨粗鬆症に用いる代表的な漢方薬

八味地黄丸・・・老化に伴う冷え、腰痛(鈍痛)、下半身の脱力、頻尿などを伴う骨粗鬆症に用いる

温経湯・・・女性の加齢に伴う血流障害を改善する代表的な漢方薬です

まとめ

更年期は女性ホルモンの分泌が減少し始め、老年期では分泌が少ない状態になります。
身体的な変化だけでなく生活環境も変化していくため、ストレスからくる体調不良の症状もあります。

漢方薬局ハーブスでも更年期障害のご相談が多く寄せられており、多くの患者様の治療を行ってきました。
ハーブスでは漢方による治療だけでなく、食事や生活習慣からのアプローチも行っていますので、是非ご相談ください。

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