生理周期が長い時に考えられる5つの原因とその改善策について書いています。
一口に月経周期が長いと言ってもそうなる原因は全く異なりますし、当然その改善策(治療)も異なります。
ここではそれぞれの原因で良く見かける典型的な基礎体温のグラフを載せることによって直感的にその違いを理解してもらうため基礎体温表を載せています。
正常な月経周期というのは一般的には25日から38日の間と言われています。
そのため40日を超えるような月経周期の場合は揮発性月経と考えられます。
月経周期が長いと何が問題なのか
月経周期が長いというのは かなりの確率で不妊症の原因となっていることが多いのです。
そのため月経周期がどうして長くなってるのか原因を明らかにして早めに対策することが重要です。
月経周期が長い時の原因と改善策
月経周期が長くなる原因はいくつか考えられていますけれども、その中で不妊に関わる主なものについて書いてみたいと思います。
高プロラクチン血症
高プロラクチン血症とはその名の通りプロラクチン(乳汁分泌ホルモン) の血中濃度がが通常よりも高い状態を言います。
プロラクチン(乳汁分泌ホルモン) とは乳汁の分泌を促進させるホルモンです。
つまりこのホルモンはお母さんが赤ちゃんを母乳で育てる際には絶対必要なホルモンなのです。
このホルモンは通常妊娠すると血中濃度が上がり、それが出産後まで高い状態で維持されます。
そしてお母さんが、赤ちゃんを母乳で育てている間はこのホルモンが出続け、高い濃度で維持されます。
通常プロラクチンは妊娠から出産までの間だけ、 高濃度に分泌されます。
ところが、妊娠していない場合や断乳したのにも関わらずプロラクチンが高い状態が維持されている際に高プロラクチン血症と診断されるのです。
高プロラクチン血症の症状
高プロラクチン血症の自覚症状は胸の張りや妊娠していないにも関わらず乳汁が出るなどです。
またプロラクチンは黄体形成ホルモン(LH)の分泌を抑制します。
そのため高プロラクチン血症の中でもプロラクチンの分泌が軽度であれば黄体形成ホルモンの分泌抑制も軽度であるため、 排卵が出来応対も形成され黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌も起こります。
高プロラクチン血症が重度となると無排卵、無月経 となったりします
高プロラクチン血症の基礎体温
軽度の高プロラクチン血症の基礎体温のグラフは徐々にあがったり、ギザギザ(ガタガタ)しながら上がることが多いのです。
重度の場合は無排卵、無月経になります。
高プロラクチン血症の検査
病院で血液検査によって判別することができます
高プロラクチン血症の改善策
病院での高プロラクチン血症の治療
病院で行われる高プロラクチン血症の治療としてはパーロデル、テルロン、カバサールなどのプロラクチンの分泌を抑制する薬剤を内服することによって治療を行います。
これらの薬剤の服用は即効性があり治療としても簡単です。
しかし、この高プロラクチン血症に用いる薬にはめまいや吐き気などの副作用を起こすことがよくあります。
漢方薬による治療
病院で出される先ほどのパーロデルやテルロン、カバサールなどと比べると即効性に行きますけれども漢方薬によって治療することも可能です。
現在高プロラクチン血症の薬を内服されていて副作用が辛くて止めてしまった方や減薬して服用している方は漢方薬に切り替えてみるのも一つの方法です。
漢方薬にはめまい吐き気などの副作用ご心配はありません。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
多嚢胞性卵巣症候群とは排卵がうまくいかずに卵巣内にたくさんの卵胞が残ってしまって多嚢胞を形成してしまう排卵障害の病気です。
多嚢胞性卵巣症候群の原因
そのひとつにはインスリン抵抗性、黄体形成ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌のバランスの乱れ、それが男性ホルモン増加させることなどが関係しているというふうに考えられています。
海外では肥満が大きく影響している場合が多いようですけども日本では肥満が影響しているケースは少ないです。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の症状
多嚢胞性卵巣症候群は排卵障害をおこす疾患ですので症状として最も多いのが月経異常です。
月経異常の中でも多いのが生理周期が40日以上と伸びてくる稀発月経、3ヶ月以上月経がこない無月経、 無排卵であるのに月経だけが起こる無排卵月経などが他のほう性卵巣症候群では 多い症状です。
欧米では肥満に伴って男性ホルモンが増加して髭が濃くなったり、多毛となったりニキビが出たりする男性化徴候が見られますが、 日本では肥満による多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が少ないため、このような男性化徴候も少ないです。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の基礎体温
軽度の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の基礎体温のグラフは低温期も高温期も高めになりやすい傾向があります。
重度の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の基礎体温のグラフは低温期が高温のままなかなか基礎体温が上がらない状態が続きます。
多嚢胞性卵巣症候群の検査・診断
一般的に多嚢胞性卵巣症候群は病院で行われる血液検査及び超音波検査エコーによって診断されます。
血液検査の項目としては黄体形成ホルモン(LH)が高値で尚且つ卵胞刺激ホルモン(FSH)が正常値である場合に多嚢胞性卵巣症候群というふうに診断されます。
また超音波検査(エコー)によって卵巣をチェックした際に卵巣内にネックレスサインと言って卵巣の表面に滞留した多数の卵胞が多嚢胞化して数珠状に繋がって存在している状態も多嚢胞性卵巣症候群の特徴といえます。
多嚢胞性卵巣症候群の改善策
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の病院での治療
妊娠を希望していない女性の方には経口避妊薬ピルを用いることが多いです。
妊娠を希望されている方にはクロミッドなどの排卵誘発剤を用いることが一般的です。
排卵誘発剤を用いても排卵が起こらない場合はゴナドトロピン系のHMGやHCGなどの性腺刺激ホルモンを含む注射剤を用いて排卵を促します。
また、多嚢胞性卵巣症候群の患者さんでインスリン抵抗性を示す患者さんの場合はインスリンの血中濃度を下げるためにメトフォルミン(商品名グリコランなどの糖尿病薬)を併用することもあります。
漢方薬による治療
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の状態は漢方で見ると瘀血状態であることが多いです。
瘀血とは血液の流れが悪くなっている状態です。
そのため治療としては活血薬(血液をサラサラにするような漢方薬)を用います。
ただし多嚢胞性卵巣症候群に関しては活血薬の代表的な漢方薬である温経湯や桃核承気湯や桂枝茯苓丸などでは効かないことがほとんどです。
そのためいくつかの漢方薬を併用することによって治療を行う必要があります。
この多嚢胞性卵巣症候群にどんな漢方薬を用いるかがその漢方薬剤師の経験や腕が問われる部分でもあります。
年齢加齢に伴う卵巣機能の低下(低AMH)
これは病気ではありません。
40代に入ってくると誰しもが起こりうる問題です。
このような状況は卵巣内に卵が減ってきて脳下垂体から卵胞を育てるための卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌されても育つ卵がいないという状況が出てきます。
その際に月経周期が一回飛んでしまったりします。
そうすると月経周期が45日であるとか、60日であるとかという周期になってしまうことがあるのです。
40代以降で特に妊娠などを希望していないのであればそのまま様子を見るだけでも良いと思いますが、妊娠を希望しているのであれば話は別です。
生理周期が以前に比べてなくなってきているということは卵巣機能が著しく低下して来ている可能性が高いです。
つまり不妊治療が時間との戦いになってきているということなのです。
そのためこういう状況になってきた方は病院での治療をステップアップすることが必要になります。
またそれと同時に時間とお金が許すのであれば漢方薬などを併用して少しでも早く体の状態を妊娠しやすい状態に持っていくことが重要となるのです。
年齢加齢に伴う卵巣機能の低下(低AMH)の基礎体温
年齢に伴う卵巣機能の低下の基礎体温のグラフはもともとのタイプによって大きく2つに分かれます。
一つはもともと基礎体温の低温期が長めだったタイプの方が無月経になって生理周期が長くなる場合と
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もう一つはもともとの基礎体温の低温期が短くなってきていて突然1回生理が飛んで(無月経)になって生理周期が長くなるタイプです。
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年齢加齢に伴う卵巣機能の低下(低AMH)の基礎体温に対する改善策
妊娠を希望されないことはそのまま経過観察良いことが多い
病院による治療
不妊治療のステップアップ、一般的には体外受精へのステップアップが普通です。
ただし、このような状態になってきた場合一般的なホルモン補充療法ではうまくいかないケースも出てきます。
場合によっては自然周期による体外受精などを得意としている病院などで不妊治療を受けることも選択肢のひとつだと思います。
漢方による治療
漢方薬ではこの年齢によって起きてくる卵巣機能の低下を血虚もしくは腎虚という風に考えます。
血虚とは女性ホルモンの分泌の低下もしくは女性ホルモンに対する生殖系の細胞の感受性の低下と考えます。
そのためこういう状態に対して補血薬という漢方薬を用います。
補血薬には女性ホルモンの分泌を促進させたり女性ホルモンが体で効きやすくするはような働きあると考えられています。
また腎虚とは簡単に言えば老化のことです。
この腎虚の状態に対しては補腎薬という漢方薬を用います。
人を若返らせることはできませんけれども、老化するスピードを遅らせることは可能です。
そして急激に衰えた機能が補腎薬を用いることによって妊娠まで至ったケースは過去に数多くあります。
もっと詳しく知りたい方は➡血虚と基礎体温
もっと詳しく知りたい方は➡腎虚と基礎体温
病院での不妊治療(ホルモン補充療法)の影響
病院での不妊治療を行うと多くの場合、ホルモン補充療法がおこなわれます。
その際にゴナドトロピン製剤や黄体ホルモン製剤を継続的に用いていると、徐々に低温期も高温期の期間が延びてくる方がおられるのです。
これは全員に起こるわけではないですが、そういう風になる方は多いです。
病院での不妊治療(ホルモン補充療法)の影響の対策
これは病気ではないので特別な対策は必要ありません。
ただし、元の周期の長さに戻るには年単位の時間が必要になります。
また、この治療によって急激な肥満になった場合には漢方による治療が必要になることがあります。
早期卵巣機能不全
早期卵巣機能不全は卵巣の機能が著しく低下した状態を指します。
この定義ははっきりとしていませんが、卵巣機能が低下し、女性ホルモンの分泌が低下し、卵胞が育たなくなる状態をさします。それが40歳未満(43歳みまんとするものもある)
この早期卵巣機能不全を起こす原因には過度なストレスや過度なダイエット、過度な運動にともなう体重減少、もともとの卵巣機能の低下など様々なものがあります。
この状態が軽度であれば希発月経となりますが、重症化すると無月経、それが1年以上続くものは早発閉経となります。
早期卵巣機能不全の改善策
早期卵巣機能不全の治療はなかなか難しいのが実情です。
ただし、その原因が急激な体重減少によるものならば、体重を元に戻すことで約8割の方で生理が回復するといわれています。
そのため、体重を元に戻すのが自分自身でできる最大の治療です。
さらに詳しく知りたい方は➡体重減少性無月経
病院での治療
原因にもよりますがその原因がストレスやダイエットによる体重減少であれば現実問題として治療はなかなか難しいです。
その原因が卵巣機能の低下の場合は排卵誘発剤を用いて卵胞を育てることが治療の中心になります。
漢方薬による治療
漢方薬の場合はストレスに対応する漢方薬やダイエットに伴う体重減少にも一定のアプローチはできますが、必ずうまくいくとは限りません。
そして当然、卵巣機能不全になって時間の経過が短ければ短いほど回復しやすいです。
実際のところ卵巣機能不全になった場合は病院の治療、漢方薬の治療と区別せずに両方を併用する方が効果が高いように感じます。
まとめ
生理周期が長い時に考えられる5つの原因とその改善策について書いてきました。
生理周期が長い時は希発月経であることが多く、その原因の中には婦人科の病気が原因となっている場合も多いため注意が必要です。
そのため、生理周期が長い状態が続くようであれば、産婦人科に受診して、検査することをお勧めします。
ただし、これが加齢に伴原因で妊娠を希望されないケースでは特別な治療を必要としないこともあります。
不妊治療を希望される際には、治療を急ぐ必要のあるケースもありますので、年齢によっては早めの受診も必要です。
生理周期を長くする要因としては低温期が長くなるケースと高温期が長くなるケースがあります。
それらの原因を知ることも参考になると思います。
より詳しく知りたい方は➡基礎体温の低温期が長いときの原因と対策とは?
より詳しく愛りたい方は➡基礎体温の高温期が長いときの原因と対策とは?
また基礎体温表のグラフの測り方や見方などより詳しく知りたい方は➡基礎体温表のグラフの測り方や見方などを詳しく解説