医師や歯科医師に処方されたお薬を記録するものとして「お薬手帳」がありますが、どのように活用されているでしょうか。お薬手帳を管理することで、様々なメリットが得られる上、服薬の安全性も増します。これは、漢方相談でも同じことが言えます。
そこで、今回は改めて「お薬手帳」とは一体どんなものかという基本事項から、使い方やメリットについてまで、詳しくご紹介していきます。ここで挙げられるメリットは、漢方相談でも同様に活用することが可能です。ぜひ最後までご一読下さい。

そもそも「お薬手帳」とは?

「お薬手帳」とは、現在服用しているお薬や、過去に飲んでいたお薬の情報がまとめられている手帳です。他にもアレルギー歴や副作用歴、既往症歴などの情報を記載でき、医師が治療方針を決める際の貴重な情報源となります。
さらに、各医療機関で処方されたお薬の飲み合わせを、問題がないかどうか、手帳を元に薬剤師が確認していきます。これにより、安全かつ有効な薬の処方が実現可能となります。

お薬手帳を持つメリットは?

では、具体的にお薬手帳を持つメリットは何でしょうか。ここでは、わかりやすく4つの項目に分けてご紹介いたします。

薬局での支払いが安くなる可能性がある

2016年4月に診療報酬が改定され、6ヶ月以内に同じ薬局でお薬手帳を持参して調剤を受けた場合の管理指導料は380円(3割負担で110円)、初めて行く薬局の場合や、お薬手帳を持参していない場合は500円(3割負担で150円)に設定されています。
つまり、お薬手帳を持って行けば、3割負担の方は40円、1割負担の方で10円安くなる計算となります。そのため、お薬手帳を持参していれば、薬の購入にかかる費用を節約することができるのです。

ただし、薬局によってはお薬手帳の有無に応じて金額が変わらない場合もあります。また、同じ薬局でも半年以上薬局に来てない場合、お薬手帳による管理指導料の減額は受けられなくなるので、注意が必要です。

お薬の飲み合わせを確認できる

お薬手帳の最も大きな役割として、お薬の「飲み合わせ」を確認できることがあげられます。
お薬手帳が全国的に導入されるきっかけとなった事件があります。通称「ソリブジン薬害事件」と呼ばれている事件で、抗がん剤(5-フルオロウラシル)を服用中の患者様に帯状疱疹が出来たため、その特効薬である「ソリブジン」という新薬を処方したところ、抗がん剤の副作用が増強されてしまい、その結果、患者様が亡くなってしまったというものです。これは、お薬手帳がなく、患者様が普段どのような薬を服用しているか把握できなかったために起こった悲劇でした。

このような事件を再発させないため、処方されているお薬の情報や飲み合わせを共有し、安全な処方をするためにお薬手帳が全国的に導入されました。日頃からお薬手帳を薬局などに持参することで、自分の普段服用している薬を記録することができ、万一の場合に参考資料として役立たせることができます。

いつもと違う病院へ受診した際、お薬の情報がスムーズに受け取れる

いつも受診しているかかりつけ病院とは違う病院を受診する場合にも、お薬手帳は有効です。医師はお薬手帳を確認することで、患者様が服用している薬を正確に把握し、投薬や治療の方針づくりに役立てることができます。
投薬が必要となった場合には、現在服用しているお薬と併用しても問題ない薬を選んで処方してもらえます。もし過去に副作用を起こした薬剤やアレルギーなどがあれば、それらについても記載しておくことで、より正確かつ安心安全な診療を受けられるようになります。

災害時にすぐ対応できる

お薬手帳は「災害時の備え」という側面も持っています。災害時には、かかりつけの医療機関で診察できないという事態も想定され、パソコンやスマートフォンなどの通信機器も使用できなくなった場合には、電話などで指示を仰ぐことも難しくなります。
そのような場合、ご自身で治療内容や常用しているお薬について、担当してくれる医師や薬剤師へ伝えなければなりません。しかし、自分が普段服用している薬の名前というのは、意識的に覚えないとなかなか覚えられないものです。そのため、医師や薬剤師に伝えようにも、正確な情報を思い出すことができず、その結果適切な投薬が受けられなくなる可能性が高まってしまいます。

そこで活躍するのがお薬手帳です。これを医師や薬剤師に見せることで、何の病気にかかっているのか、どの薬が必要なのかがすぐにわかり、災害という非常事態でも安全性の高い治療とお薬の処方が受けられます。特に、複数の病院にかかっている人は、お薬手帳を持つことで、それぞれの病院での投薬状況を記録することができ、万が一のことが起きた際にも安心することができます。
実際、1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災では、お薬手帳が普及していたため多くの患者様が安心してお薬を受け取れました。明日来るかもしれない「もしもの時」に備え、普段からしっかりお薬手帳を管理しておきましょう。

漢方でも、お薬手帳で飲み合わせをチェックします

漢方の処方でも、お薬手帳で飲み合わせをチェックします。患者様が複数の医療機関を受診している際や服用しているお薬が複数ある場合、漢方の薬剤師は以下の点をチェックします。
※病院で漢方薬が出されていないか?出されている場合、漢方薬局で出そうと思っている漢方薬と同じものが含まれていないか?
※漢方薬局で出そうと思っている漢方薬の効果を減弱するような漢方薬が出されていないか?
※漢方薬局で出そうと思っている漢方薬の作用が出過ぎてしまうような組み合わせの漢方薬が出ていないか?
などです。

また、それ以外にも、病院で出されている西洋医学のお薬に関してもチェックします。
必ずチェックするのは
※現在漢方相談に来られた症状が病院で出されているお薬の副作用によって出ている可能性は無いか?
です。
これらを行うことにより、薬の過剰摂取や薬効の減少、副作用の発現といったトラブルを未然に防ぐことが可能となります。

「漢方薬局とはどんなところ?漢方相談の流れについてご説明」の記事はこちら
「【漢方 飲み合わせの疑問】サプリメントや健康食品と一緒に服用しても大丈夫?」の記事はこちら

予期せぬ症状を防ぐためにも、来局時にはお薬手帳をご持参下さい

漢方薬と西洋薬は、基本的には併用しても問題ないとされています。しかし、漢方薬の種類や服用時の患者様の症状、体調によっては、予測できない症状が出ることも考えられます。
患者様に現時点で処方されているお薬を正確に把握するためにも、漢方薬局ハーブスではお薬手帳の持参をお願いしています。お薬手帳を確認することにより、患者様の情報がより正しく確認でき、より安全性の高い処方へ繋がります。ぜひ、来局時にはお薬手帳をご持参下さい。

漢方薬の服用で何かお困りのことがあれば、ぜひ漢方薬局ハーブスにご相談ください。