ビタミン、鉄分、ミネラル、DHA等、近年はサプリメントや健康食品が多く販売されています。1994年に「栄養補助健康教育法」が制定されてから、多くのサプリメント・健康食品が市場を圧巻しており、「常飲している」という方も増えてきている印象です。
しかし、安全安心だと思われているサプリメントや健康食品は、しっかりとした知識を持っていないと危うい一面があるのです。飲み方はもちろん、漢方薬との飲み合わせについても例外ではありません。
今回は漢方とサプリメント・健康食品の違いや飲み合わせ、どのように併用していけば安全か等、漢方薬とサプリメント・健康食品の関係について詳しくご紹介いたします。

サプリメント・健康食品と漢方の違い

サプリメントや健康食品と漢方薬の大きな違いはなんでしょうか?どちらもドラッグストアやコンビニエンスストアで販売されており、誰でも気軽に買える仕組みになっています。しかし、実は全く違うものです。
具体的にいうと、サプリメント・健康食品は「食品」、漢方薬は「医薬品」に分類されます。サプリメント・健康食品はビタミンや鉄分、ミネラルといった、日常で足りないと想定される栄養素を補給する「食品」です。一方、漢方薬は効能・効果が認められているしっかりとした「医薬品」です。生薬の組み合わせにより、様々な症状を改善することができます。

サプリメント・健康食品と漢方薬の飲み合わせについて

ここまで、サプリメント・健康食品と漢方薬の明確な違いについてご紹介してきました。ここからは、サプリメント・健康食品と漢方薬の飲み合わせについて、詳しくご紹介いたします。

効き目が過剰に強くなってしまう

日本の漢方には、昔から漢方薬の作用を強める方法や弱めるノウハウがあり、それは漢方の専門家の中で代々受け継がれてきています。しかし、そういった情報は一般の方が知る機会もないため、偶然、漢方薬の作用が出すぎてしまう可能性もあるのです。
今回はその一例をご紹介します。
ある冷え症の方がおられたとします。この方は冷え症を改善するためにネットなどで情報を集め、生姜(しょうが)がメインのサプリメントを購入したとします。

しかし、冷え症は一向に改善しないため、病院で相談したところ、人参湯という漢方薬が出たとします。人参湯の中には高麗人参、甘草、白朮、乾姜という生薬が入っているのです。この中の乾姜とは蒸してから乾燥させた生姜のことです。
この生姜メインのサプリと人参湯をそれぞれ同時に継続して服用するとどんなことが起こるかというと、必ずではないですが、お腹が弱い人は、何か月か経過してから原因不明の腹痛を起こすことがあります。

また呼吸器が弱い方は同様に数か月経過してから原因不明の咳が出るようになることがあります。それがなぜかというと、生姜には粘膜刺激があるのです。(生姜のピリッとする味から何となく想像できると思います)それが人参湯だけなら、それぞれの生薬がバランスしあって副作用を出にくくしているのですが、それに生姜のサプリがさらに加わると生姜の粘膜刺激が過剰になりすぎてしまう可能性があるからです。これは過去に実際、私が自分の患者さんで経験したことです。
このようなことはメジャーなものとして、リコリスというハーブのサプリメントと漢方薬の組み合わせでも起こりえることです。

効き目が弱くなり、治療の効果が出づらくなってしまう

これも漢方理論を理解できていればある程度推測ができるのですが、漢方にあまりなじみのない方は無意識にやってしまいそうなことを具体例を挙げて書いてみます。

メニエル病(めまい)の患者さんが漢方薬局で相談をして苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかかんとう)という漢方薬を出されたとします。それを飲んで徐々に改善していったとします。
ちょうどその時期に、肌荒れが気になっていたこの患者さんが、高濃度のカカオポリフェノールのサプリを美容目的で購入して服用し始めたとします。
そうすると、しばらくすると、メニエル病(めまい)の症状の改善が遅くなってしまいます。どうしてそうなるのかというと苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかかんとう)は漢方的には上に上がった気を降ろすことでめまいを改善させていると考えているのです。(気が上に上がった状態が続くから、くらくらするような不安定な状態になると考えるのです)

苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかかんとう)は上がった気を発散させることによって、上がった気を下げるということをしているのですが、カカオの苦みが気の発散を止めてしまうのです。
結果として今まで苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかかんとう)でうまくできていた気の発散がカカオポリフェノールによって邪魔されてしまうので、気が上に上がったまま下に下がらずいつまでたっても不安定な状態が続いてしまうという事になってしまうのです。

このように漢方理論を理解していればやらないようなことを、知らないためにやってしまい、結果として薬の効果を出ずらくしてしまうことがあるのです。
このように、健康食品・サプリメントと漢方薬では飲み合わせが存在する場合もあります。そのため、健康食品・サプリメントなどをお持ちになってご質問いただければ、お出しする漢方薬との飲み合わせについても丁寧にご説明させていただきます。

サプリメントや健康食品を併用したい時は、薬剤師にご相談を

まず、サプリメント・健康食品を漢方薬と併用したい場合には、薬剤師にご相談下さい。薬剤師は、薬の飲み合わせをチェックするだけではなく、薬の内容や変更に応じて患者様の健康状態を把握します。
サプリメント・健康食品をご持参いただければ、薬剤師が併用して大丈夫かどうかを判断します。「食品だから安全」と自己判断で飲んでしまわず、ぜひ一度薬剤師にお尋ね下さい。

「漢方薬とハーブに飲み合わせがあることをご存知ですか?」の記事はこちら
「漢方薬を飲まれている方が追加で健康茶を飲みたい時には漢方薬局の先生に相談した方がいい」の記事はこちら

ドラッグストアなどでの購入時には「お薬手帳」が役立ちます

近年「セルフメディケーション(自分で症状を判断して医薬品を購入すること)」が推奨されてきています。税制控除の対象にもなっており、政府が推奨している様子がうかがえます。

しかし、全てを自己判断で済ませてしまうのはやはり危険な側面があります。特に飲み合わせや漢方のような医薬品に関しては、できるだけ専門家の判断、指導を仰いだ方が安全です。
薬局ではもちろん、ドラッグストアでもできる限りプロの知識を借りるようにしましょう。その際に「お薬手帳」があると、薬剤師も判断しやすくなります。お薬手帳の内容とサプリメント・健康食品の有効成分を照らし合わせれば、飲み合わせの可否が照合しやすくなるためです。
ぜひ、お薬手帳を持ち歩き、活用するようにしてみて下さい。

漢方薬局ハーブスは、サプリメントや健康食品のご相談も合わせてお伺いしています

漢方薬局ハーブスでは、漢方薬をお出しする際に、漢方に関わるありとあらゆることについてのご質問にもお応えさせていただきます。サプリメント・健康食品に関しても例外ではありません。
併用したいサプリメント・健康食品がございましたら、まずは当局にお持ち下さい。当局でお出ししている漢方薬であれば、今後どのように服用していけばいいかをしっかりとご案内いたします。
ご不明、ご不安な点がございましたら、ぜひ漢方薬局ハーブスまでご相談下さい。
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