ここでは妊娠初期の流産の予防で気をつけるべき9つの重要なポイントに絞って説明したいと思います。
このページの読者対象は現在妊娠されている方、何回も妊娠するけれども流産を繰り返してしまう習慣性流産の方、現在妊娠していない
けれどももし妊娠したらと不安に思ってる方などです。
ここで書いてることは私が実際に漢方薬局で患者さんが妊娠された際に気をつけるべきポイントとして説明しているものです。
そのため重要で現実的な内容となっています。
なぜ妊娠初期に流産の予防に気を付けなければならないのか?
すべてではないですが、気を付けることで防ぐことのできる流産というのもあるからです。
妊娠初期の流産というものの80%~90%は胎児自身の染色体異常が原因となって防ぎようのないものです。
しかし、それ以外の流産を起こす原因の中に、予防が可能なものもあります。
どんなにパーセンテージが低くても予防が可能かもしれなかった流産が、自分に起きてしまった場合、後悔しても後悔しきれないことになります。
そのようにならないために、ぜひ知っておいていただきたいと思います。
妊娠初期の流産予防の9つの重要ポイント
1アルコール(飲酒)は妊娠したら禁止する
妊娠されるまでは不妊症患者さんにアルコールに関してそれほど厳しく言うことはないのですが、妊娠したらアルコールは禁止です。
ここでは日本産婦人科学会ののホームページの中に飲酒喫煙と先天異常というページがあり、
その中にアルコールに関してのことが書かれているので少しその内容について触れてみたいと思います。
アルコールの胎児への影響
妊娠中のアルコール被曝により流産、死産、先天異常が生じる。
アルコールが催奇形性を有することは明らかであり、先天異常としては以下の症状がある。
- 子宮内胎児発育遅延並びに成長障害
- 精神遅滞や多動症などの中枢神経障害
- 特異顔貌小頭症などの頭蓋顔面奇形
- 心奇形関節異常などの種々の奇形
このように アルコールというのは流産、死産、胎児の先天奇形を生じさせる大きな原因となっているということです。
そのため 妊婦の飲酒はしないことが原則となります。
詳しく知りたい方は日本産婦人科学会の飲酒、喫煙と先天異常のページを参考にしてください。
2喫煙(タバコ)は止める(禁煙する)
これは基本中の基本です。
タバコの煙には ニコチンを始め一酸化炭素シアン化合物 などが含まれており、これが強い毒性を持っています。
そしてこの毒性と同時にタバコの煙の成分の中には血管収縮作用が確認されています。
そのため、妊婦が喫煙をすることによって子宮内の血流が悪くなり、胎児の発育が遅くなるということが広く知られています。
この発育の遅れというのは喫煙する本数と相関があります。
またそれ以外に喫煙をしている妊婦の場合は喫煙していない妊婦と比べ流産や早産、前置胎盤などのリスクも2倍から3倍に増えることが分かっています。
そして早産する率も喫煙本数と明らかな相関があると言われています。
また流産 の話ではないですけれども妊娠中の喫煙が出産後の赤ちゃんの神経の発達障害を引き起こす可能性が示唆されています。
そのため、単に流産という問題だけでなく生まれてくる赤ちゃんのことを考えて喫煙は慎むべきです。
詳しくは先ほどの日本産婦人科学会の飲酒、喫煙と先天異常のページもしくは厚生労働省の喫煙の健康影響についてを参考にしてください。
3トーチ(TORCH)症候群に注意する
トーチ(TORCH)症候群とは 妊娠中に感染すると胎児に奇形または重篤な場合、流産を引き起こす恐れのある疾患の総称です。
トーチ症候群のTORCHとは
トキソプラズマ症(Toxoplasmosis)のT、その他(コクサッキーウイルス、EB ウィルス、水痘帯状疱疹ウイルス、B型肝炎ウィルス、梅毒など)その他OtherのO、風疹(Rubella)のR、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)のC、単純ヘルペスウィルス(Herpes simplex virus)のHの頭文字をとったものです。
トーチ(TORCH)症候群の注意するポイント
細かく言い始めるときりがないので、ここでは重要なポイントだけに絞って説明します。
トーチ(TORCH)症候群は感染症ですので、感染しないように予防することが重要です
ポイント1 トキソプラズマ症は流産のリスクあり
トキソプラズマはネコの糞便、加熱不十分な肉、生肉(レアなお肉)に含まれていることのある原虫です。
トキソプラズマ症は重症になると流産のリスクがあります。
そのためトキソプラズマに感染しないことが重要です。
トキソプラズマに感染しないためのポイントは
- 生(レア)のお肉は食べない
- 妊娠中はネコに触らない
- ネコを飼っている場合はネコの糞を処理する場合、使い捨ての手袋を使用する
などが重要になります。
ポイント2 梅毒感染も流産、早産のリスクが高まる
梅毒は梅毒トレポネーマという病原体が原因の感染症です。
これはご存知の方も多いと思いますが、性交渉による感染で起こる病気です。
そのため妊娠後はご夫婦であっても、コンドームを使用して性交渉を行うことが大事になります。
ポイント3 パルボウイルスB19は流産、死産のリスクを高める
パルボウイルスB19はなじみの薄いウイルスと思われますが、これは伝染性紅斑(リンゴ病)を引き起こすウイルスです。
残念ながら治療法は確立していません。
そのため、予防が重要になります。
基本的には予防法はインフルエンザなどの感染症と同じです。
うがい、手洗い、マスク、流行している時には極力外出しないなどです。
このパルボウイルスB19に関する詳しい情報は神戸大学産婦人科の作っている、
パルボウイルスB19によるリンゴ病(伝染性紅斑)が流行しています
をまず読んでみてください。
さらに専門的で詳しい内容に興味がある方は国立感染症研究所のパルボウイルスB19母子感染の実態を参考にしてください。
トーチ(TORCH)症候群に全般に関して詳しくは東京都品川区の妊娠中に気を付けてほしい感染症(トーチ症候群・ジカ熱)のページを参考にしてください。
4コーヒーなどのカフェイン飲料は妊娠後は200mg/日以下に減らすべき
カフェインは妊娠前まで飲んでいても特別なリスクはないといわれています。
しかし、妊娠したら話は別です。
妊娠後のカフェイン摂取は200mg/日以下に減らすべきです。
なぜなら1日200mg以上のカフェインを摂取する女性は摂取しない女性に対して流産の確率が2倍に上昇する
ということがわかったのです。
その根拠は2008年アメリカの産科学と婦人科学の専門誌「American Journal of Obstetrics and Gynecology」に発表された論文です。
5出血したら少量でも病院に問い合わせて指示に従う
妊娠初期に起こる出血の多くは問題のないものが多いです。
しかし、中には流産の兆候となっている出血もあります。
私の経験から傾向としては茶色の出血は比較的安全で、ピンクや赤の出血は少量でも注意が必要です。
しかし、実際その判断は非常に難しいです。
そのため出血の場合は、少量でも病院に問い合わせて指示に従うようにしてください。
6風邪・インフルエンザなどを引いていなくても外出する時は必ずマスクをして出かけること
インフルエンザそのものは流産の直接のリスクは無いといわれていますが、
妊婦の方はもし風邪を引いてしまうと使える薬も限られていますし、トーチ(TORCH)症候群のように罹患するウイルスなどによっては流産や奇形奇形を生じるリスクもあります。
またインフルエンザ感染後の免疫力低下に伴う2次感染で何らかの問題もおきる可能性もあります。
そのためまず感染症にかからないことが最も重要なことなのです。
そのため風邪などひいていなくても外出する時には必ずマスクをして出かけ、帰ったらうがい、手洗い、を必ずするようにしてください。
7下半身の血流を悪くしないために服装には気を付けてください。
妊娠後は下半身の血流が悪くならないように注意すべきです。
キツキツの服は避けるように
キツキツの(制限の多い)服、特に腹部から下半身にかけては血流の良い状態を保った方が良いですから、あまりきつくない衣服を身に着けられることをお勧めします。
薄着は避けるように
温度差などによって風邪をひかないようにするということと、薄着によって冷えてしまって血行を悪くしないようにすることです。
8 ゆったりとした生活を送る
ゆったりとした生活を送ることが基本です。
そのため、動きすぎに注意して下さい。
何もしていないのに少量の出血に生理痛のような症状を伴う時などは、切迫流産の可能性もあります。
こういう時には安静が基本になります。
私は妊娠された患者さんに妊婦はトドのような生活をしなさいと指導しています。
9重い荷物や持ちにくいものを持たないようにする
私の経験上、患者さんで流産を起こしやすい職種というのがあります。
その代表的な職種というのが看護師さんです。
看護師さんというのは仕事もかなり大変なのですけれども、あることをした時に流産したという話を何名かの看護師の方から直接聞いています。
それは何かと言うと人(患者さん)を持ち上げたのをきっかけとし 出血して流産に至っているのです。
普通の人だとそういうことは起こりにくいのかもしれませんけれども看護師さんが普段接する方は病人の方です。
病人の方というのは、もちろん病気の種類やレベルによりますが、自分で力を入れることができず、柔らかく、持ちづらいという特徴があります。
そうすると看護師さんの方は、当然、患者さんを落としたりして怪我させるわけにはいきませんから、普通に人を持ち上げる以上の力で
持ち上げたりすることが多いのだと思うのです。
そのことが通常は関係しないはずの子宮の筋肉にまで影響を与えてしまうのだと思います。
このようなことは人を持ち上げるような仕事をしている他の職種の方でも持ち上げた瞬間に流産起こしたという話を聞いています。
私が実際に聞いたのは、PT(理学療法士)の女性の方でした。
それ以外に同じような仕事をされるのが介護職の方です。
そのため介護されている方もこういう仕事に関しては注意が必要です。
もし可能であれば妊娠していることを周りの人に伝えてこの仕事は変わってもらうようにした方が良いかもしれません。
あとはこのような仕事をされていない方でも出血することがあります。
それは普段持ち上げないような重たい荷物を持ち上げた時です。
例えば瓶ビールのケース を持ち上げるような時です。
最近では瓶ビールをケースで買うことは少なくなったと思いますけれども中にはそういう家庭もあるのではないかと思います。
普段持たないような重い荷物を持とうとすると全身の筋肉を使って持ち上げようとしますから、その結果として内臓の筋肉にも何らかの
影響を与える可能性があるのだと思います。
そのため普段持たないような重たいものに関してはご主人に協力してもらうようにした方が良いと思います。
まとめ
いがでしたか?
妊娠初期の流産の予防で気をつけるべき9つの重要なポイントについて書きました。
妊娠された方の約15%が流産するといわれていますが、その中で妊娠初期に(妊娠16週までの期間)に流産されるのがその中の約80%です。
この妊娠初期に流産された方の約80%が胎児自身の染色体異常によるものといわれています。
そのため、繰り返しになりますが、初期流産の原因のほとんどは母体となるお母さんにはないという事なのです。
つまり、自分自身で気を付けて予防できる流産は非常に少ない、どんなに頑張っても約10%の方は防ぎようのない流産が起きてしまうのになぜ、これほど厳密な内容が必要なのか?
それは何より、もし流産されたとき、誰も責めることはないとしても誰より自分で自分自身を強く責めてしまうからです。
流産する、しないは誰にもわかりません。
何も起きないかもしれませんが、誰より自分自身が後悔しないために、頑張って実践してみてください。
もし、妊娠初期の食事(食べ物)の事が気になるようであれば、流産予防の食事(食べ物)で注意すべき8つの食品とは?を参考にしてください。
より積極的に流産の予防を希望される場合は流産を予防する漢方薬はあるのか?を参考にしてみてください。