この記事では、妊娠された方の流産予防の食事において注意すべき食べ物(食品)8つについて説明します。

これまでに私は、漢方薬等の不妊治療を通じて妊娠された方を多数見てきました。

この内容はその経験に基づいて書いています。

他のサイトでは流産を予防する食事(食べ物)について栄養のバランス考えて食べましょうという内容のものが多いのですが、その点に関して実際には異なると思います。

妊娠された方はその度合いは違いますが、つわりがある方がほとんどです。

つわりがあると食べた方が良いものはわかっていても、気持ち悪くて食べられなくなるのです。

そのため、実際には食べれるものを食べることが最も重要なことなのです。

そして流産予防の食べ物のポイントとは、それを食べて流産を減らすという考え方ではなく、流産を起こすリスクのある食べ物を避けることが流産予防では重要だという事なのです。

 

妊娠中の流産予防の食事において注意すべき食べ物(食品)8つ

ここでは妊娠された方が流産をしないように予防するため食事で本当に注意すべき食べ物(食品)ついて説明します。

この内容は実際にうちの薬局で妊娠された方にもお話しして実際にやってもらってる内容なので、読まれた方もできるだけ実践してみてください。

流産を予防する食べ物

1.お酒(アルコール)

お酒(アルコール)は禁止。妊娠したらきっぱりやめる

お酒は食べ物ではないですが、とても重要なものなので一番最初に書いておきます。

お酒は妊娠するまでは多少であれば飲んでも問題ないと思いますが、妊娠がわかったならば即止めて下さい

お酒(アルコール)の妊婦に与える害ははっきりしていて流産・死産の原因となることが明らかです。

妊婦の飲酒(アルコール摂取)に関しては日本産婦人科学会でも警鐘を鳴らしています

仮に流産とならなくても胎児性アルコール症候群といって飲酒によって胎児に奇形が生じる可能性があります。

そのため、ここはぐっとこらえて、出産するまでは禁酒してください。

流産に影響する飲食物

 

2.カフェイン

1日に200mg以上のカフェインを摂るべきではない

カフェインというのは妊娠するまではそれほど気にする必要はありませんが、妊娠したら話は別です

1日当たり200mg以下に減らすべきです

その根拠は2008年アメリカの産科学と婦人科学の専門誌「American Journal of Obstetrics and Gynecology」に発表された。

1日に200mg以上のカフェインを摂取する女性は、摂取しない女性に比べ流産の確立が2倍になることがわかったのです。

そのためカフェイン量はできるだけ減らすべきです。

では200mgのカフェインとは飲料に換算するとどれくらいでしょう?

品名 カフェインの含有量
インスタントコーヒー150ml 68mg
ドリップコーヒー150ml 135mg
缶コーヒー185ml缶 150mg前後
紅茶150ml 45mg
紅茶ペットボトル500ml 50mg~170mg
緑茶150ml 30mg
ほうじ茶150ml 30mg
玄米茶150ml 15mg
玉露150ml 150mg
ペットボトルのお茶500ml 50mg~100mg
栄養ドリンク100ml 50mg
コーラ500ml 50mg
ココア150ml 45mg

 

普段のむインスタントコーヒーなら2杯程度なら大丈夫ですが、ドリップだと1日1杯程度です。

お茶や紅茶も自分で作れば3~5杯程度は大丈夫です。

意外に注意が必要なのは玉露、ペットボトルや缶コーヒーなどです。カフェインの含量が意外に多かったり、メーカーなどによって差が大きいので注意が必要です。

レアなお肉

3.生や仮熱不十分のお肉

生や仮熱不十分(レア・ミディアム)のお肉は食べない

これは重要です。生(レア)や仮熱不十分(ミディアム)のお肉の中にはトキソプラズマといわれる原虫がいる場合があります。

もし仮にこれに妊娠初期に感染した場合、重症化すると、流産死産に至ることがあります。

また、そこまで重症化しなくても、知的障害や水頭症、網脈絡膜炎といって視力障害をおこすことが知られています。

この原虫は魚でなく陸生動物の生肉に寄生ているため、火が十分にないっていないお肉を食べないでください

ステーキのミディアムであっても火が中心の部分まで入っていなければ危険です。

それ以外に馬刺し、ローストビーフ、お肉のたたきなども同様に食べないようにしてください。

詳しくは神戸大学産婦人科教室の作成したTORCH症候群を参考にしてください。

4.ナチュラルチーズ

ナチュラルチーズや生ハムなどの加熱不十分な動物性の食べ物に注意

ナチュラルチーズにはリステリア菌という細菌がいる場合があります

リステリア菌は本来、感染力の弱い菌ですが、感染して重症化した場合に流産や早産の原因になります

日本では過去にナチュラルチーズを介して健康障害を起こした集団事例が一件論文として報告されています。(詳しくは食品安全委員会のリステリアによる食中毒についてを参考にしてください)

リステリア菌が繁殖しやすいものというものにナチュラルチーズ 生ハムなどがあります。

つまり加熱不十分な動物性の食べ物に感染しやすいのです。

逆に言えば加熱すれば心配する必要はありません。

チーズでもプロセスチーズであれば問題はありません。

ということで加熱したものを食べるように気をつけてください。

5.青汁

青汁は強力に血液をサラサラにする為、出血が起きやすくなる可能性がある

患者さんの中には妊婦になって食べれるものが偏ってしまう、特に野菜不足に対して不安に思って青汁を飲むように考えられる方がおられます。

しかし青汁というのは血液をサラサラにする作用があります

血液がサラサラになることは通常で考えるとよい事なのですが、それが過剰となると、出血しやすくなるのです。

そのため青汁を大量に飲みすぎると胎盤付近でわずかな出血が起きてもそれを自分で止めることができなくなる可能性があります。

その出血が引き金となって流産になる可能性もあるので妊娠後には青汁は一旦お休みしてください。

6.ナッツ類

ナッツ類の大量摂取は控える

ナッツ類には食物繊維が多く含まれていたり 油分が多く含まれています。

そのため、それが原因で下痢になったり腹痛を起こしたりすることがあります

腹痛は内臓平滑筋の収縮です。

切迫流産などによって腹痛が起こるときも内臓平滑筋が過収縮して起こるものです。

そのため作用する場所はもちろん異なりますけれども、近い場所に腹痛が起きるのは良いことはありません。

ナッツ類は漢方理論では降の働きがあるといわれています。降とは下す、下りるという意味が含まれます。

そのため腹痛が起きるような食べ物は控えた方が無難です。

7.苦いものアクの強いもの

苦いものアクの強いもの(ゴーヤや山菜など)控えた方が無難

野菜などのアクの強いもの(エグミの強いもの)は基本的に控えた方が無難です。

何故ならそれらにはアルカロイドと言われる生理活性の強い物質を含んでいることがあるからです。

ここでは苦みやアクの強いもの等の代表的なものについてだけ書いておきます。

ゴーヤ

ゴーヤは正式にはツルレイシという植物の未熟果実です。

このゴーヤですけれども、国立健康栄養研究所はゴーヤは人の有効性については十分なデータが見当たらない。

通常食品として適切に摂取する場合は安全性が示唆されている。

しかし動物実験ではにがうりの種子にはモモカルリンという成分が含まれており、動物実験で妊娠阻害作用と堕胎作用が確認されています。

つまり妊娠を阻害し、流産させる可能性が報告されているため、それを妊娠中に摂取することは危険であると結論付けています

また授乳の安全性については信頼できる十分な情報が見当たらないため 通常の食材として摂取する以外は避ける

受精12日後の妊娠したマウスに0.02から0.05mgのモモルカリンを腹腔内に投与したところ90%の胎児が死亡した。

またにがうり果汁を毎日摂取したマウスは妊娠率が90%から20%に低下する

という国立健康栄養研究所の論文データの中にあるようです

ワラビなどの山菜

ワラビにはブタキロサイドという強力な毒性を持つ成分が含まれています。

ただしこれはアク抜きをすれば全く問題がないものです。

ワラビは日本では昔からあく抜きをしなければ目が見えなくなるとか流産するとか言われてきました

またアク抜きという文化がない地域では、ワラビをよく食べると吹き出物が出たり、妊婦の流産と関係があるということでワラビを有害植物として扱っている国もあるようです。

ただ一回食べたからといってそのようなことが起こるようなことはまずないです。

大量かつそれを継続的に摂取することによって起こりうる問題です。

ただし、わざわざそういったものを摂取する必要はないと思いますのでこれらのものは控えられた方が良いと思います。

8.刺激物

流産に影響する食べ物

ウガラシやコショウなどの刺激物は日常使う程度なら問題ないが激辛は止めましょう

これらは西洋医学的には特に流産との関連するような論文・データは見当たりませんが、これら刺激物の過剰摂取は漢方的にはあまりお薦めするものではありません

ただし、全く食べてはいけないというものではないです。

うどん・そばに七味唐辛子やラーメンにコショウ、肉などに黒コショウなど、日常使う範囲では全く問題はないと思います。

ただし、激辛料理などに関しては注意が必要だと思います。

まとめ

流産を予防するために食事(食べ物)で注意すべき8つのポイントについて書きました。

流産の予防のための食事(食べ物)についてまとめますと、流産の予防のための食事(食べ物)の基本的な考え方は、何か特別なものを食べることで流産を防ごうという考え方ではないのです。

まずは流産をさせる可能性のありそうな食べ物を食べないということが一番重要なのです

そしてできる範囲でバランスを考えて食べる。

しかし、つわりがひどくて、バランスよく食べれなくてもそれが原因で流産することはないという事です。

理想的な食事ができていないからと言って自分を責めたり落ち込んだりしないでください。

妊娠された方の中には胎児がうまく育たなかった方もおられると思いますが、それは食事のせいではありません。

妊娠初期には約15%の方が流産されます。

その中の約8割は赤ちゃん自身の染色体異常が原因です。

そのため、ほとんどの流産はお母さんには責任はないのです。

それ以外の原因は甲状腺機能低下症、高プロラクチン血症、坑リン脂質抗体(自己免疫疾患)などの不育症、黄体機能不全、子宮形態異常などがあります。

食事の質が流産の直接の原因となることは非常に少ないということです。

過去に来られていたうちの患者さんで、つわりがひどくて冷たくて甘いものしか食べれない方がおられました

そのためその方は最初の数ヶ月は本当にアイスクリームだけを食べておられました

食べている間は罪悪感と不安感で一杯でした。

それでも元気な赤ちゃんが生まれました

アイスクリームを奨励しているわけではないです。

もちろん漢方的に考えたら冷たいものは良くないですし、偏った食生活も良くないです。

しかしその方はアイスクリーム以外食べれなかったのです。

結局気持ち悪くなるものを無理して食べても後で吐いてしまうので全く意味はないです。

しかも吐いた分だけ体力を消耗しますのでなお良くないと思います。

つわりのひどい時期は食べれるものだけを食べて、つわりがなくなってから栄養のバランスを考えて食べられたらいいと思います。

もし、積極的に流産の予防を考えておられる方は➡流産を予防する漢方薬はあるのか?

を参考にしてください。