基礎体温とは安静時の体温です。
そのため朝起きた時一番に測るのです。
この体温は女性の排卵のリズムと関係が深いです。
一般的に基礎体温を測ると排卵日の予測(タイミングをとる日の予測)、排卵が起こっているかどうか(基礎体温が2層になっていれば排卵しています)、妊娠したかどうか(高温期が続いていれば妊娠している可能性が高いと考えます)などを知ることができます。
基礎体温の低温期は何日以上になると長いのか?
基礎体温の低温期の日数の厳密な定義はありません。人によっても多少の違いはあります。
基礎体温を30日前後と考えると12日~15日というのが低温期として標準的な期間なのではないかと思います。
そこでここでは16日以上の低温期が続く場合が長いということでお話しさせていただきます。
基礎体温の低温期が長いと何が問題なのか?
基礎体温の低温期が長いというのは西洋医学的には特別な病気の原因となるものはないことが多いのですが、漢方的に見ると不妊症の原因があって起きてることが多いからです。
いつもより基礎体温の低温期が長いときの原因
いつもより基礎体温の低温期が長いときに考えられる原因と、その対策についてご説明します
原因1:卵巣・子宮機能の低下(更年期障害)
卵巣・子宮の機能が低下してきている(更年期障害)ために低温期が長くなることがあります。
多くの場合は、加齢(老化)に伴って卵巣機能が徐々に落ちていき、女性ホルモンの分泌が悪くなったり、女性ホルモンに対する周りの細胞の感受性が低下することによって卵の育ちが遅くなったり,子宮内膜の厚みが不十分になったりすることで低温期が長くなるということが起きてくるのです。
この状態を漢方では血虚もしくは腎虚という風に考えます。
対策
このような状態に対して西洋医学的に考えると、不妊治療をステップアップしていくことになります。
具体的には少しでも早く体外受精を行うということです。
しかし、すでにホルモン補充療法などによる体外受精を行っていて、結果が思わしくないような場合は自然周期による体外受精などを行った方が良いケースもあります。
その際には病院選びも含め吟味する必要があります。
もっと詳しく知りたい方は➡体外受精の病院選びですぐに役立つ16の重要ポイントとは?
漢方的な対策
先ほども書きましたが、このような加齢(老化)にというのは漢方的伴う更年期にさしかかった時期には血虚や腎虚であることが多いのです。
血虚は女性ホルモンの不足した状態もしくは女性ホルモンに対する周りの細胞の感受性の低下を表しています。
具体的な例を挙げると漢方的に閉経というのは出す血が無くなるから起こると考えるのですが、これは貧血とは違いますよね。
この出す血が無くなるという、この血≒女性ホルモンということなのです。
つまり血虚は女性ホルモンの不足・減少を指す言葉なのです。
腎虚は老化に伴う諸症状を表す言葉です。
これも例を挙げると、閉経というのは老化したから起こるものですよね。
そのため、閉経は老化≒腎虚によって起きたとも考えられるのです。
これらそれぞれの原因に対して漢方的な治療法があります。
血虚の場合は補血薬という漢方薬を用います。
代表的な補血薬
当帰芍薬散・・・最も代表的な補血薬です。
腎虚に対しては補腎薬という漢方薬を用います。
血虚に関してもっと詳しく知りたい方は➡血虚と基礎体温
代表的な補腎薬
鹿茸を含むような漢方薬・・・これは漢方薬局によって用いるものが異なります。
腎虚に関してもっと詳しく知りたい方は➡腎虚と基礎体温
原因2:体の循環が悪くなっている(瘀血)
体の血液循環(血流)が悪くなることによって起きてくる問題です。
血流が悪くなると身体全体の新陳代謝が落ちてしまいます。
それによって卵巣の働きや子宮内膜の働きも落ちてしまい、卵の育ちが悪くなったり子宮内膜の発育が遅れ、低温期が長引いてしまうようなことが起きるのです。
対策
これは西洋医学的には特別な治療法がないのです。
そのため、これは漢方薬による治療が向いているケースです。
漢方ではこのように体の循環が悪くなっている状態というの瘀血という状態と考えます。
瘀血とは血液の流れが滞っている状態を表す言葉ですが、単純に血液がドロドロという意味だけではありません。
ストレスによって血管がキュッと細くなって血液の流れが悪くなった状態も瘀血と考えるのです。
つまり瘀血とは血液の流れだけでなく、血管の状態も合わせた概念なのです。
この循環が悪くなっている状態に対して用いる漢方薬を活血薬といいます。
簡単に言えば血液の流れを良くするものです。
代表的な活血薬
桂枝茯苓丸・・・婦人科の瘀血に用いる最も代表的な漢方薬です。主に下半身の血流を良くします。
温経湯・・・桂枝茯苓丸の方よりも虚弱なタイプに用います。
瘀血に関してもっと詳しく知りたい方は➡瘀血と基礎体温
原因3:ホルモン補充療法を受けている
不妊治療によって、女性ホルモンなどのホルモン補充療法を受けると基礎体温は低温期も高温期も徐々に 長くなっていく傾向があります
これは高度な不妊治療(体外受精)を行うと、ほとんど誰でも起こることなので特別なことではありませんし、基本的には病気ではありません。
しかしこの基礎体温の状況が元に戻るには薬を使わなくなってからも年単位の時間が必要になります。
また、人によっては、このホルモン補充療法を行うことによって急激な体重増加(数か月で5~10kg)増加することがあります。
このような場合は、漢方理論で考えると別の不妊症の原因を作りだす結果になっていますので、治療が必要になります。
対策
体重増加に関しては病院の先生は無関心であることが多いです。
そのため、体重増加そのものに気づかないケースがほとんどです。
そのため、まずは現在の治療を行ってから体重が急激に増加したことを伝える必要があります。
そのあとの処置に関しては先生ごとに対応は異なると思いますが、まずは伝えてみることが重要です。
漢方的な対策
漢方理論で考えると急激な体重の増加は瘀血か水毒と考えます。
そのため、その原因が瘀血かそれとも水毒か?もしくはその2つが併存しているのかは、実際の患者さんの状況を見てみないとわかりません。
今までの経験から言えることは、ホルモン補充療法によって体重増加したというのは自然に起きたことではないため、通常の瘀血に使う漢方薬の組み合わせではうまくゆかないことが多いです。
そしてダイエット(食事制限)ではなく、運動療法の併用が不可欠であるといえます。
原因4:合わないサプリメントの服用
自分の体にとって合わないサプリメントなどを服用していると基礎体温の低温期が伸びてくることがあります。
これはどうしてかというとそのサプリメントは体に合っていないため、卵巣がストレスを受けて卵を上手く育てられなくなっているためです。
これはどのようなサプリにでも起こるわけではなく、ビタミン系のサプリやミネラル系のサプリでは起こりません。
こういったことを起こすのはマカやザクロや大豆イソフラボン系などの女性ホルモンに影響を与えるようなものが入っている場合が多く、なおかつその人に合わないものを服用した場合が多いのです。
対策
そのサプリメントをまず止めてみて様子をみることが基本になります。
しばらくすれば(2~3か月が目安)回復してくることが多いです。
それでも改善しない場合は、専門性の高い不妊治療のクリニックか不妊治療を得意としている漢方薬局などで相談されるべきです。
ここで重要なのは自己判断で生理不順の改善がきでるといわれている別のサプリメントを服用しないことです。
これによって問題がより分かりずらくなってしまうからです。
まとめ
基礎体温の低温期が長いときに考えられる4つの原因とその対策について書いてきました。
基礎体温の低温期が長くなる時には大きな不妊症の原因が隠れているケースがあります。
それに対する対策は病院でできることもあれば漢方治療の方が向いているものもあります。
まずは病院で不妊検査を受け、もし明らかに問題があれば病院での治療を行うべきです。
ここで知っておいていただきたいのは、基礎体温の低温期と高温期の長さの違いによって不妊症になる原因が異なりますし、その改善策も異なってくるということです。
そのことを理解していただくためにも下記の記事もあわせてお読みください。
1.基礎体温の高温期が長い時の5つの原因と改善策とは?
2.基礎体温の高温期が短い時の4つ原因と改善策とは?
3.基礎体温の低温期が短い時の4つの原因と改善策とは?