紹介で患者さんが来られました。

症状は咳と痰です。

病院での診断としては間質性肺炎という事でした。

この間質性肺炎になったきっかけや原因をお伺いすると、正直全くわからないということでした。

ただ、しいていうななら小さい頃から肺は丈夫ではなかったそうです。

小さい頃には肺炎を起こしたことがあるそうです。

そして昔からスポーツ(器械体操)をされていたそうですが、その時、冬に冷たい空気を深く吸うとしんどかったそうです。

とはいえ、正直この患者さん見た目にはものすごく元気で、痰が絡んだような咳や時折ヒューヒューするような音が聞こえなければ、本当に病気とは思えない方です。

すでに70代後半だと言われていましたが、自分で車をブイブイ乗り回し、仕事にプライベートに目まぐるしく動いているという事でした。

少ししゃべってもそのバイタリティが伝わってくる感じでした。

それが突然4年前に咳や痰が出始め、病院に行って診てもらったら間質性肺炎の診断を受けたというのです。

でも原因はハッキリとはわからなかったそうです。

このように間質性肺炎の中で原因がわからないものを突発性間質性肺炎といい、難病指定になっています。

難病指定になっているということは、西洋医学的に治療が難しいということです。

漢方治療イメージ

そのため、突発性間質性肺炎になった場合の病院での治療というのは、これ以上進行させない、症状を抑える目的でステロイドや免疫抑制剤が用いられます。またこれらはいずれも免疫抑制作用があるため、免疫力が低下します。

この間質性肺炎で何が怖いかというと、進行すると肺線維症を引き起こしてしまう事があるのです。

肺線維症とはその名の通り肺が線維化して、本来の肺の機能(酸素を吸収して二酸化炭素を吐き出す働き)を失う病気です。

そのため、この病気が進行すると、ちょっとした動作でも息切れを起こし、動くのが苦しくなります。そして空咳が出るようになります。

さらに症状がすすめば酸素飽和度が低下し、酸素吸入などが必要になる場合もあるのです。

話を戻しますが、この患者さんはそこまでではなかったですが、ずっと痰の絡んだ咳をしていました。

そこで改めて東洋医学的にこの患者さんの体質を見極めるために東洋医学的な問診や舌の状態、それ以外の東洋医学的なチェックを行いました。

そうすると、見た目の丈夫そうな感じとは裏腹に、漢方的には虚証(きょしょう→身体は不足気味、弱い)タイプの結果になりました。

そこで間質性肺炎の虚証タイプに用いる漢方薬の中からこの患者さんに合うと思われるものを服用していただくことにしました。

そして、おおよそ2週間間隔でご相談に来ていただくことしました。

そして2週間ごとに症状や現在用いている漢方薬が合っているかをチェックしていったのですが、やはり間質性肺炎は他の呼吸器疾患と比べても症状の改善スピードが遅く感じました。

症状改善イメージ

それでも1か月単位で考えると確実に咳と痰の量が少しづつ減っていきました。

最初はずっと出ていた咳も、出ない時が出てきました。

しかし、2か月経たないうちに最初に用いていた漢方薬が合わなくなりました。

この合わなくなってからの新たな漢方薬の変更に少し苦労がありました。

西洋医学的には突発性の間質性肺炎の原因は免疫異常と考えられているのですが、この患者さんの現在の状況を東洋医学的にチェックしてみても免疫異常を示すような点は見当たらないのです。

そこで、何度もチェックしなおした結果、自分の中で結論に至ったのは、ウイルスや細菌類の複合感染なのではないか?という事でした。

漢方の場合、抗生物質のように直接、細菌を殺すことはできませんが、患者さん本人の免疫力を高めることで、ウイルスや細菌に打ち勝つことができるようにすることは可能なのです。

そこで、免疫力を上げると考えられている漢方薬の中からこの患者さんの体質に合うと思われるものを選んで服用していただくことにしました。

そして、やはり2週間間隔で症状の状態と漢方薬が合っているかをチェックしていきました。

大分症状が良くなってきている段階で大きな病院で定期的な検査を受けたところ、間質性肺炎の状態は無くなっていると言われたそうです。

そのかわり、喘息の症状が出てきていると言われたそうです。

確かに時折、呼吸が苦しい感じはありました。

しかし、これって以前からあった気はするのですが・・・

それでも、咳と痰は確実に減っていきました。

そして、漢方薬の飲み忘れが多いと症状がぶり返す感じでした。

そのような事を繰り返しながら、体調の変化に合わせ、数か月ごとくらいで漢方薬を組み合わせを変えながらトータル約1年間漢方薬を服用していただきました。

そして、咳も痰も全く出なくなりましたし、最初の頃は呼吸(息)が多少苦しかったそうですが、それも一切なくなりました。

喘息様の症状も無くなりました。

そのため、漢方治療を終了することにしました。

時間はかかりましたがホッとしました。

良かったです。

さらに間質性肺炎に興味のある方は→間質性肺炎のページ