ホームページを見て患者さんが来られました。

症状は不正出血ですが、この患者さんのお話をお伺いすると、2~3年前から体温調節がおかしくなってきていて、上半身の汗が止まらくなったり、耳が遠くなったり、訳もなく異常にイライラしたり、もともと心配性だがそれがよりひどくなっているなどの症状が出てきているそうなのです。

また、もともとの症状として、手汗が酷く、のどの詰まりも時々でたり、足がムズムズしたり(むずむず脚)、人の目が気になるなどの精神的、心因的な問題を抱えておられました。

また、婦人科関係で言えば、数年前の検診で子宮内に小さなポリープが見つかったそうです。

しかし、手術はまだしていないとのことでした。

次に生理関係に関して言えば、加齢に伴って生理不順になっていて、生理が来たり来なかったりするようになっているそうです。

そして、私の薬局に相談に来られる約半年くらい前に今までにないくらい生理の量が極端に減ったそうです。

そういったことから、別の漢方薬局に行って漢方薬を出してもらったそうです。

この時期と前後するくらいの時期に病院で子宮内膜を再び診てもらったら、子宮内膜が厚いと言われたそうです。

そういわれた1か月後には大量出血し、それがなかなか止まらず結局10日間続いて貧血になったという事でした。

そこで再度婦人科に行き、事情を説明したらピルを出されたそうです。

それを飲み終わった後の生理も量が多かったそうです。

そこで、病院で子宮体ガンが無いか細胞診をしてもらっているとのことでした。

これらのお話しを基にこの患者さんに合う漢方薬を探しました。

漢方治療イメージ

 

不正出血が生じた時、一番気を付けなければならない問題はやはり子宮がんです。それ以外にも子宮内膜ポリープ、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜増殖症なども頭の片隅に置いておく必要があります。

それ以上に、この患者さんの年齢で考えれば一番可能性が高いのが更年期障害です。

この更年期の時期にはかなりの方が一時的ですが不正出血なることが多いのです。

そこで、さらに東洋医学的問診、東洋医学的チェック、などを行いました。

その中で、私の感覚ではガンの反応の出るツボ(反応穴)には反応が出ていないと感じました。

また、子宮ポリープと不正出血のツボの反応も一致しない気がしました。

不正出血のツボの反応と一致したのが女性ホルモン全般の反応の出るところでした。

つまり、今回の不正出血の問題は、女性ホルモンバランスの乱れ⇒更年期障害の可能性が高いと感じました。

あと、もう一つ気になっていたのは、別の漢方薬局で出された漢方薬でした。

この漢方薬を実際現物を持ってきてもらうようにお願いしていたのです。

そして、その漢方薬を見せてもらったら、思った通りの系統の漢方薬でした。

この漢方薬は補腎(ほじん)と補血(ほけつ)の働きがものすごく強力なものでした。

というのもこの患者さんが別の漢方薬局にご相談に行かれたのは生理の量が極端に少なくなった時期です。

生理の量が極端に少なくなった状態を漢方的に言えば血虚(けっきょ⇒血が不足した状態)です。

それが加齢に伴って血虚になった状態が腎虚(じんきょ⇒加齢に伴って血が不足した状態)なのです。

この血が不足した状態の血とは、ほぼ『血≒女性ホルモン』と考えてもらうとわかりやすいと思います。

症状改善イメージ

この血虚(けっきょ)、腎虚(じんきょ)の状態を改善するには

血虚(けっきょ)⇒補血(ほけつ)

腎虚(じんきょ)⇒補腎(ほじん)

を行うのです。

さて、ここからが重要です。

補血(ほけつ)作用、補腎(ほじん)作用のある薬は血を増やすため、生理の量を増やす作用があるのですが、子宮内膜を厚くする作用もあるのです。

つまりこの漢方薬を飲み続けると子宮内膜が厚くなり生理の量が増える可能性があるのです。
※東洋医学的に子宮内膜が異常に厚くなった状態や生理の量が多い状態を瘀血(おけつ)と言います。

途中からこの患者さんの出血や子宮内膜の厚みの症状が悪化した要因にこの漢方薬が関わっている可能性があると考えたのです。

そこで、この漢方薬を改めてチェックしてみると、やはり、この漢方薬を服用すると東洋医学的瘀血(おけつ)が増える感じが強力にあり、それが多量の不正出血を生じさせる原因になっているように感じました。

そのため、この漢方薬は止めていただくようお願いしました。

瘀血改善イメージ

そして、更年期障害に用いる漢方薬の中で、子宮内膜が異常に厚くなった状態や生理の量が多い状態である瘀血(おけつ)を改善するもので、この患者さんに合うと思われるものをとりあえず2週間お出ししました。

そして2週間後来られた際に様子をお伺いすると・・・漢方薬を飲み始めてすぐに生理は止まったそうです。

そこで、再度身体の状態をチェックして漢方薬はやっぱり合っているようなので、同じ漢方薬を継続で2週間服用していただくことにしました。

そして2週間後に再度来られた際には、子宮体がんの有無の検査結果や、子宮内膜ポリープの状態、今の子宮内膜の状態を婦人科で診てもらっていました。

そうしたら、子宮体ガンではなく、子宮内膜ポリープもガン化しているわけではないとのことでした。

そして、この時に子宮内膜を診てもらったら、子宮内膜は普通の人と同じくらいまで急激に薄くなっていたそうです。

あれだけ厚いままだった子宮内膜が急激に薄くなったのは、恐らく私の読みが合っていたのだと思います。

つまり、生理が減った時に飲み始めた漢方薬が内膜を薄く戻るを妨げていたのです。

その漢方薬を止めてもらって生理の量を減らしたり、子宮内膜を薄くする瘀血を改善するために出した漢方薬(駆瘀血薬・活血薬)が合っていたのだと思います。

このように、良かれと思って始めたことがマイナスに働くこともあります。