ここでは子宮後屈を漢方で妊娠しやすい身体にする方法について説明したいと思います。
様々なサイトでも書かれていますが、病院で子宮後屈と診断されたとしても、
もともと子宮後屈であった場合(可動性子宮後屈)は不妊症の原因になりません。
ただし後天的に子宮後屈となった場合(癒着性子宮後屈)は治療が必要となる場合があります。
ここでは病院を受診すべきかの判断の目安と、癒着性子宮後屈であった場合の漢方薬で妊娠しやすい身体にする方法について書いていますので最後まで読んでみてください。
子宮後屈とは
子宮は、膀胱と直腸の間の骨盤内の中央に存在しています。
大きさは鶏卵ていどで、縦約7cm、横3~4cm、重さは50g前後の小さな臓器です。
そして通常、子宮というのは骨盤内で前屈(前側、お腹側のほうに傾いて存在)しているのが生理的な状態なのです。
女性全体で見た中で、子宮の前屈と後屈の比率はおおよそ前屈:後屈=8:2くらいといわれています。
圧倒的に子宮は前屈が多く(8割の女性)生理的ということです。
しかし子宮後屈も2割はいるということです。
子宮後屈を起こす原因
子宮後屈の多くは生理的なものです。しかしその中に病的なものもあります。
その病的な原因によって生じる子宮後屈は不妊症の原因なることがあるので注意が必要です。
生まれつきの体質(可動性子宮後屈)
昔は子宮後屈は病気と考えられていて、手術の対象となっていたのですが、現在では子宮後屈の多くが体質的なもの(生理的なもの:病的ではない)と考えられており、治療対象とはならないケースのほうが多いと考えられています。
しかし、一部に病的な原因によって生じる子宮後屈も確認されています。
子宮内膜症や骨盤内で生じた炎症などが原因となって癒着した結果生じた子宮後屈は病的なものになります。
子宮内膜症
子宮内膜症とは子宮内膜が子宮以外の場所にできて、増殖し、生理時に剥がれ落ちるという状態を引き起こす疾患です。
子宮内膜症が生理によって内膜組織が剥がれてしまった後、その部分の傷を治そうと思って、その周辺に膜を作って修復するように体が向かいします。
その際に組織と組織がくっついて癒着を起こしてしまうのです。
つまり、子宮内膜症によって子宮と直腸側の組織がくっついてしまうと子宮が直腸に引っ張られて子宮が後屈してしまうのです。
骨盤内の炎症に伴う癒着
骨盤内の腹膜側や直腸付近に何らかの原因(感染症な)で炎症が起きた場合、
最終的に癒着を生じてしまうことがあります。
直腸や腹膜側と子宮が癒着すると子宮が後ろ側に引っ張られるため、子宮後屈を生じることになります。
子宮後屈と症状
子宮後屈は通常生まれながらの生理的(可動性子宮後屈)であれば、特別な症状は出にくいです。
子宮後屈で特別な症状が出る場合は一般的には先ほど書いたような、病的な原因(癒着)によって生じた子宮後屈の際に生じるものが多いのです。
ここでは子宮後屈によって生じる主な症状について書いてみたいと思います。
生理痛
これは癒着によって、子宮筋が従来の位置とは反対に屈曲することによって局所的な血流障害が生じます。
それが生理による子宮筋の収縮が加わって、さらに強い負荷がかかり、痛みが強くなるものと思われます。
腰痛
子宮が本来の位置よりも癒着して後屈することにより癒着周辺部を引っ張ってしまい。、結果としてその周辺の血流が一層悪くなります。
その慢性的な血流障害により慢性的な腰痛が生じている可能性があります。
そして生理の時期になるとさらに、子宮が通常よりも収縮することによって生理時にはより強い腰痛を生じることが考えられます。
性交痛
子宮後屈は本来の子宮の位置といわば逆に向いているので、本来性交しやすい体位が逆に性交しずらい体位となってしまいます。
そのため、癒着などを起こす前に無理のなかった体位と逆の体位で行えば、性交痛は減少する可能性があります。
この性交痛が原因でセックスレスとなることもありますので、これも妊娠の障害となることがあるのです。
癒着性子宮後屈の診断と受診の目安
癒着性後屈症の診断は病院でなければわかりません。
上記した、激しい生理痛、腰痛、性交痛などがあれば病院を受診する一つの目安にはなります。
過去に子宮内膜症の診断を受けたことがあれば、確率的には高くなります。
子宮後屈かどうかは直接膣の中を触診する内診か超音波器具(エコー)を直接膣内に挿入して検査することで診断することができます。
子宮後屈と不妊症
生まれながらの子宮後屈(可動性子宮後屈)の場合
昔は不妊の原因と考えられ、手術で治療していた時期もあったようですが、現在ではもともと持って生まれた体質的な子宮後屈では妊娠に特に問題は生じないといわれています。
ただし、注意すべき点が一つだけあります。
それは、性交後の休み方です。
子宮が前屈している女性の場合は、性交後仰向けで休だ状態で、精子が子宮に入りやす位置に来るように構造上なっています。
しかし、子宮後屈の場合、性交後、女性のが仰向けでしばらくいた場合、膣から入った精子が子宮の入り口の手前の溝のような場所で構造上止まってしまい、子宮の入り口に直接接しないため、精子が子宮に入っていきづらくなります。
そのため、性交後は20分~30分程度はうつぶせ寝をした方が良いそうです。
後天的な子宮後屈(癒着性子宮後屈)の場合
後天的な子宮後屈(癒着性子宮後屈)の場合は不妊症の原因となることがあります。
それはどうしてなのか?
これには2つの要因が関わってくるのです。
一つは癒着をおこした原因(子宮内膜症、骨盤内組織の炎症)そのものが不妊症の原因となってしまう場合ともう一つは癒着によって生じた子宮後屈自体が不妊症の原因となるケースです。
子宮内膜症
子宮内膜症は子宮以外の場所に子宮内膜が生じることによってそれが生理に伴い剥がれることによって、炎症と癒着を繰り返していく病気です。
原因ははっきりとはわかっていません。
しかしいえることは不妊症の原因となりうるという事です。
子宮内膜症はその内膜ができる場所によって病名が変わってきます。
ここではその代表的な病名について書いてみたいと思います。
チョコレート膿腫
子宮内膜症が卵巣内にできてしまう病気です。
子宮内膜が卵巣内にできると、生理のたびに内膜が剥がれますが、その剥がれた血の行き場がないため、卵巣内に延々と溜まっていって、チョコレート色に卵巣が膨らんで膿腫となっている病気です。
これが卵巣内で起きると、卵巣内の卵の質が低下する可能性があります。
それ以外にこれが卵巣内にできたという事は周辺組織にも内膜が生じている可能性があり、それがもし卵管采付近にできると卵管采が癒着してキャッチアップ障害(ピックアップ障害)の原因となります。
子宮腺筋症
子宮内膜症が子宮内膜よりも内側の子宮筋の内側にできてしまう病気です。
子宮内膜が子宮筋の内側にできると、生理の時に剥がれるのですが、内側ですから、その出た血は流れようがないのです。
でも筋肉内で剥がれて炎症が起きて癒着してゆくわけですから、生理の時ものすごく痛いのです。
そして子宮筋内で剥がれて炎症を起こして癒着してを繰り返してゆきますから、本来、受精卵を育てるためにあるはずの子宮の状態はボロボロになってゆくのです。
これが重症化すると、子宮の本来の働きができにくくなるのです。
卵管閉塞・卵管狭窄
卵管閉塞が必ず子宮内膜症が原因で起こるわけではありませんが、子宮内膜症で原因で生じる卵管閉塞や卵管狭窄はあります。
これはどうして起こるのかと言うと、卵管付近とその周辺の組織が癒着することによって卵管が引っ張られて卵管の内径が狭くなって閉塞もしくは狭窄を起こしてしまうわけです。
卵管閉塞もしくは卵管狭窄を起こしてしまうと精子と卵が受精することができなくなる為(受精障害)不妊症の原因となってしまうわけです。
また卵管狭窄は子宮外妊娠のリスクの要因の一つともなりますので注意が必要です。
子宮後屈自身が不妊症となる場合
この話はどこにも書かれていないですけれども、癒着によって後天的に子宮後屈が生じた場合、その子宮後屈そのものが不妊の原因になることがあります。
それはどうしてか?
まず子宮のイメージの代わりとして真ん中あたりで曲がっているナスをイメージしてください。
先天的に子宮後屈の人というのは、言えばそのナスの形自体が通常とは反対に反った形で出来上がっているナスのようなのです。
そのため、その形状で存在していても何ら問題はないわけです。
それが癒着などによって二次的に生じた場合というのは、もともと曲がっていた側と反対側に外力によってねじ曲げられた状態なわけです。
そうするとどうなると思いますか?
ナスは当然裂けるor折れてしまいますよね?
実際には子宮はそんなに硬くはないですから裂けたり折れたり、中身が出てくることもないです。(安心してください)
しかし本来とは逆に曲がっている部分に歪み(ストレス)が非常にかかった状態だっていうのがなんとなく分かると思います。
ここで大事なのは元々曲がっていた側と反対側に無理に外力によって曲げられた状態が起きているということなのです。
それによって生じる問題というのは無理やり歪まされた部分の血流障害なのです。
その血流障害が微細であってもそれが持続的に続くことで子宮内の栄養状態が悪くなり着床に影響を与えるのです。
ただし何度も言うようですけれどもこれは後天的に子宮後屈になった場合のみ限られます。
そして子宮内膜症があるから必ず子宮後屈になってるわけでもないです。
実際私の薬局に不妊症の相談で来られた患者さんの中で、病院で子宮後屈の診断を受けて相談をされた方もおられますけれども、そのほとんどは治療の必要がないという風に私は感じました。
むしろ実際には子宮後屈が不妊症の原因ではなく、子宮内膜症やもともとの体質的な問題が不妊症の原因となっていると感じる人の方が圧倒的に多かったのです。
癒着性子宮後屈を漢方薬で妊娠しやすい身体にする方法
ここでは癒着性子宮後屈を漢方薬で妊娠しやすい身体にする方法について説明します。
子宮後屈が原因の不妊症というのは後天的な原因で生じる子宮後屈症の患者さんに出る可能性があるがその確率は非常に低いです。
そして後天的な子宮後屈(癒着性子宮後屈)で生じる不妊症の治療の漢方薬としては主に次のようなものが考えられます。
子宮内膜症の治療するための漢方薬
子宮内膜症を生じる漢方的な原因には大きく2つのものが考えられています。
瘀血
簡単に言えば血流障害です。
子宮内膜症および先ほど書きました子宮内膜症が原因で引き起こされる子宮腺筋症、チョコレート膿腫などもこれが主な原因の一つになっています。
この瘀血に用いる代表的な漢方薬には桂枝茯苓丸、桃核承気湯などがありますが、実際には患者さんの体質によって、様々な漢方薬を組み合わせます。
血虚
女性ホルモンの分泌異常or生殖系全般の栄養状態の低下を表す言葉です。
子宮内膜症の本治(根本原因)にこれがあると考えられます。
この血虚の状態に用いる代表的な漢方薬は当帰芍薬散ですが、これも実際には患者さんの体質によって、様々な漢方薬を組み合わせます。
子宮後屈そのものが原因の不妊症を治療する漢方薬
先ほど癒着に伴う子宮後屈そのものが不妊症の原因となると書きましたが、その原因のメインのものは血流障害です。
つまり瘀血です。
瘀血に用いる代表的な漢方薬は先ほど書きました。
実際には子宮後屈を治療するには単純な瘀血の薬だけではムリです。
それはなぜか?
子宮後屈を起こした筋肉の歪みを緩和しないと血流が良くならないからです。
そのため、この2つの原因に対する2種類の漢方薬の組み合わせが必要になるのです。
このノウハウは他の漢方薬局にはない長年の経験による漢方薬局ハーブスオリジナルの理論です。
まとめ
癒着性子宮後屈を漢方薬で妊娠しやすい身体にする方法について書いてきました。
話をまとめると、子宮後屈は全体の8割は不妊症の原因にはならないのです。
しかし残りの2割に相当する癒着性子宮後屈は不妊症の原因となりうるわけです。
そして、この子宮後屈改善のためのオリジナルの理論と漢方薬もあります。
しかし最も重要なのは、不妊症の原因を子宮後屈と決めてしまわないことです。
私が実際に子宮後屈の相談を受けた際、子宮内膜症を治療した方が良かったケースや、もともと持っている不妊体質の治療をして妊娠に至ったケースも多々あるのです。
そのため、子宮後屈だけにとらわれず、常に広い視野で不妊の治療を行ってゆくべきだと思います。