ここでは不妊症の原因となる病気と基礎体温の関係について書いてみたいと思います。

すべてではないですが、不妊症の原因となる病気の多くは基礎体温のグラフの形に特徴があります。

そのためそれらのグラフと照らし合わせて基礎体温がおかしいなと思った方は病院で一度受診してみても良いと思います。

この内容は長年基礎体温をもとに不妊治療を行ってきた漢方薬剤師としての自分の経験に基づくものです。

標準的(正常)な基礎体温

標準的(正常)な基礎体温

不妊症の原因となる様々な病気の基礎体温のグラフを見る前にまずは標準的(正常)な基礎体温を知ることが重要です。

標準的(正常)な基礎体温の大事なポイント

  • 標準的な生理周期は28日~30日
  • 低温期は14日前後(ここははっきり決まっていません)
  • 低温期から高温期への移行期間は2日以内
  • 低温期と高温期がはっきり分かれていてその温度差は0.3℃~0.5℃
  • 高温期は36.7度以上を維持する
  • 高温期の期間は12日~14日
  • 高温期の基礎体温が下がった日に生理が来る

※西洋医学的には生理周期は25日~38日までは正常と考えます。しかし不妊治療の視点で考えると28日より生理周期が短い方や30日より長い方は何らかの不妊症の原因を持っている方が多いです。

この基礎体温と比べて自分の基礎体温はどうか?これから出てくる不妊症の原因となる病気の基礎体温の形と自分の基礎体温の形はどうか?

ということに気を付けて以降読んでみてください。

不妊症の原因となる病気の特徴と基礎体温

黄体機能不全

卵胞が排卵した後のものを黄体と言います。

この黄体から出る黄体ホルモンの分泌が不十分であったり、黄体ホルモンに対する子宮内膜細胞の感受性の低下した状態を黄体機能不全といいます。

黄体機能不全の症状ですが、自覚症状はない方もおられますが、生理周期に関して言えば黄体の状態を維持することができにくくなるため高温期が10日未満になったり、途中で出血を起こす不正出血となったりする方もおられます。

また基礎体温をチェックすると低温期と高温期の温度差が0.3°未満となったり、高温期が途中でガクッと下がるといったことが起こります。

そして、黄体ホルモンは妊娠の維持にも働きますので黄体機能不全となると妊娠しずらい不妊の状態になります。

原因はこの黄体を育てるための脳からの指令物質である卵胞刺激ホルモンや黄体形成ホルモンの分泌が不十分であるケースと卵巣そのものが弱って黄体そのものがうまく育たないケースなどがあります。

漢方ではこのような黄体機能不全の状態というのを血虚もしくは腎虚という風に考えることが多いです。

黄体機能不全の基礎体温

高温期の途中で基礎体温がガクっと下がる

黄体機能不全の基礎体温のグラフ

 

さらに詳しく知りたい方は黄体機能不全

 

子宮内膜症

子宮内膜症とは子宮内膜が、体の中の卵巣内や子宮筋の中や腹膜など本来できる場所以外にできてしまう病気のことを言います。

子宮内膜症が卵巣内で起きたものをチョコレート嚢胞と言います。

そして子宮内膜が子宮の本来の部分でなく子宮筋肉内に入ってきてしまったものを子宮腺筋症と言います。

子宮内膜が子宮以外の場所にできた場合は臓器や組織の癒着の原因になったりします。

それによって卵管閉塞や卵管狭窄、便秘、ピックアップ障害などが起こることもありますそのため子宮内膜症は不妊症の原因の一つと考えられています。

子宮内膜症で最も多い自覚症状は生理痛です。

子宮内膜と基礎体温

子宮内膜症の基礎体温は低温期、高温期ともに高くなる傾向があります。

また生理に入ったのに高温期が数日続くようなケースの場合も子宮内膜症である可能性があります。

ただし、子宮内膜症とよく似通った基礎体温を描くものに子宮筋腫があります。

そのため、これらは基礎体温だけでは判別が難しいことが多いです。

そのため基礎体温の高温期が標準的なものよりも高いものが続く形や生理が来たのにも関わらず2日間高温期が維持されるような方で病院で検査を受けたことがない方は病院で一度受診されることをお勧めします。

①子宮内膜症の基礎体温グラフパターン1

子宮内膜症の基礎体温

 

②子宮内膜症の基礎体温グラフパターン2

子宮内膜症の基礎体温

 

さらに詳しく知りたい方は子宮内膜症

 

黄体化未破裂卵胞 (LUF)

黄体化未破裂卵胞(LUF)とは様々な原因で卵胞が育っているにも関わらず排卵ができず卵胞のまま黄体化したものです。

病院でエコー検査を受けた時に「卵巣に大きな卵は残っているね。1周期治療休みましょう!!」みたいなことを病院の先生から言われた方もいるのではないでしょうか?

その1周期休む原因となるのがこの黄体化未破裂卵胞 (LUF)なのです。

これは誰でも約1年に1回ぐらいは起きる自然現象ですけれども、これが高頻度に起こるようであればそれを起こす不妊の原因が隠れている可能性があります。

黄体化未破裂卵胞 (LUF)の基礎体温

黄体化未破裂卵胞の基礎体温の特徴は高温期が10日以内と短いこと、そしてそのために生理周期が短くなることです。

これは黄体機能不全でも見られる基礎体温のグラフと同じなので、その判別は基礎体温だけからでは難しいです。

そのため病院での検査を受けた方が良いと思います。

黄体化非破裂卵胞(LUF)の基礎体温

 

さらに詳しく知りたい方は黄体化未破裂卵胞(LUF)

 

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は排卵障害をおこす不妊症の原因のひとつです。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は排卵ができないために卵巣内にたくさんの卵胞が数珠状につながって見えるのが特徴です。

これをネックレスサインと呼びます。

これは超音波検査(エコー)で調べることができます。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の基礎体温

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の基礎体温の特徴は軽度であれば低温期が高くて長い、そのため月経周期も長くなります。

これがさらに重症化してくると希発月経となったり無排卵・無月経となったりします。

生理周期の長い(希発月経)の多嚢胞瘀性卵巣症候群の基礎体温のグラフ

多嚢胞瘀性卵巣症候群(PCOS)の基礎体温のグラフ

 

さらに詳しく知りたい方は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

 

子宮筋腫

子宮筋腫とは子宮内にできる良性の腫瘍の事を言います。

子宮筋腫はできる部位によって不妊症の原因となることもあります。

子宮筋腫は自覚症状のない方もおられまずが一般的には生理の出血量が多い、生理痛がひどいなどがあります。

子宮筋腫の基礎体温

子宮筋腫の基礎体温の特徴は基本的に高温期が高めであるということです。

人によって低温期も高めであることもありますし、低温期は普通である人もいます。

あともうひとつは生理が来たのにも関わらず高温期の体温がしばらく続くということが起きる方がおられます。

子宮筋腫の基礎体温

 

さらに詳しく知りたい方は子宮筋腫

 

卵管閉塞(卵管狭窄)

卵管閉塞及び卵管狭窄はその名の通り、卵管が閉塞または狭くなってしまう病気です。

これによって精子と卵子が受精できなくなり、不妊症となってしまうのです。

卵管閉塞起こす原因は完全にはわかっていないですけれども子宮内膜症、感染症(代表的なものはクラミジア)、卵管水腫などが原因と考えられています。

卵管閉塞の場合は自覚症状が無い方が多いです。不妊検査をやって初めてわかることの方が多いです。

卵管閉塞(卵管狭窄)の基礎体温

卵管閉塞の形の基礎体温というのは低温期から高温期に徐々に上がるという特徴があります。

卵管閉塞の基礎体温のグラフ

 

さらに詳しく知りたい方は卵管閉塞(卵管狭窄)

 

高プロラクチン血症

高プロラクチン血症とは妊娠、出産していないのにも関わらずプロラクチン(乳汁分泌ホルモン)の分泌が高い状態を言います。

このプロラクチンはお乳を出すために必要なホルモンで妊娠から出産まで高くなり、赤ちゃんを母乳で育っている間は高い状態が続きますが、妊娠していない方や断乳された方は低くなっているはずなのです。

それが高い状態の場合に高プロラクチン血症といわれるのです。

高プロラクチン血症になると、黄体形成ホルモン(LH)の分泌を抑制するため、排卵障害や黄体機能不全のような症状を起こすことがあります。

この状態があまりにもひどくなると無排卵無月経となることもあります。

高プロラクチン血症の基礎体温

高プロラクチン血症の軽度な状態の基礎体温というのは低温期から高温期への移行がゆっくり上がってくるとかギザギザしながら上昇してくるというようなグラフを描くのが特徴です。

あまりにもひどくなると無月経となりますのでフラットな基礎体温になります。

①高プロラクチン血症の基礎体温のグラフパターン1

高プロラクチン血症の基礎体温

②高プロラクチン血症の基礎体温のグラフパターン2

高プロラクチン血症の基礎体温2

 

さらに詳しく知りたい方は高プロラクチン血症

 

PMS(月経前症候群)

PMS(月経前症候群)とは早い人だと生理のおよそ2週間前から発症し、生理の直前まで続く精神的もしくは肉体的な症状のことです。

この症状は生理とともに消失することが一つの特徴です。

PMS(月経前症候群)ば必ず不妊の原因になるわけではないですけれども、不妊の原因となっているPMS(月経前症候群)の方もおられます。

そういう方は基礎体温にその影響が出ています。

PMS(月経前症候群)が不妊症の原因となっている方の基礎体温

PMS(月経前症候群)が不妊症の原因となっている方の基礎体温の特徴というのは高温期の基礎体温がガタガタ・ギザギザになっているのです。

PMS(月経前症候群)が不妊症の原因となっている方の基礎体温

 

さらに詳しく知りたい方はPMS(月経前症候群)

 

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)は甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、新陳代謝が高まる病気です。

その症状としては動悸、発汗、体重減少、手の震え、眼球突出などです。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の基礎体温

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の方の基礎体温というのは代謝が盛んになりますから低温期も高温期も高くなります。

その結果として低温期が短く、低温期が高く、 高温期が高くなる傾向があります。

ただしメルカゾールなどの甲状腺機能亢進症の薬を飲むとそのような特徴はなくなります。

さらに詳しく知りたい方は甲状腺機能亢進症(バセドウ病)

 

甲状腺機能低下症(橋本病)

甲状腺機能低下症(橋本病)は甲状腺ホルモンの分泌が低下することによって身体の代謝機能全般が低下する病気です。

症状としては激しい疲労倦怠感、低体温、むくみ、記憶力の低下など様々な症状を引き起こします。

甲状腺機能低下症(橋本病)の基礎体温

甲状腺機能低下症(橋本病) の方の基礎体温というのは代謝が悪くなりますので低温期も高温期も低くなります。

そして代謝が悪くここでは不妊症の原因となる病気と基礎体温の関係について書いてみたいと思います。
すべてではないですが、不妊症の原因となる病気の多くは基礎体温のグラフの形に特徴があります。
そのためそれらのグラフと照らし合わせて基礎体温がおかしいなと思った方は病院で一度受診してみても良いと思います。
この内容は長年基礎体温をもとに不妊治療を行ってきた漢方薬剤師としての自分の経験に基づくものです。なるため卵の育ちも悪くなり低温期の期間が長くなる傾向ます。

甲状腺機能低下症(橋本病)の基礎体温

 

さらに詳しく知りたい方は甲状腺機能低下症(橋本病)

 

 

卵胞期短縮症

卵胞期短縮症とはその名の通り生理周期の卵胞期が短くなっていくる結果、生理周期も短くなってしまう状態のことを言います。

これは元々の生理周期は正常な形で加齢に伴って生理周期の卵胞期を短くなり、トータル的に生理周期そのものも 短くなってしまうもののことを言います。

これは加齢に伴って起こってくるものですので、若い頃から生理周期が短いタイプの形はこれには当たりませんし,思春期の卵巣の状態が安定しない頃に起こるものとも違います。

診断としてはFSH(卵胞刺激ホルモン)の軽度の上昇が認められ、生理周期の卵胞期が以前に比べて短くなってきて、なおかつ生理周期が短くなってきている場合にこれにあたると判断されます。

卵胞期短縮症の基礎体温

卵胞期(低温期)が短くなった分だけ生理周期の短くなった形が基礎体温の特徴です。

卵胞期短縮症の基礎体温

 

さらに詳しく知りたい方は卵胞期短縮症

 

早発閉経

早発閉経とは40歳未満(文献によっては43歳未満で)閉経した状態のことを言います。

早発閉経の定義は確立されていませんんが、日本産婦人科学会で言われているのは年齢が40歳未満で、4カ月以上の無月経、FSH(卵胞刺激ホルモン)のホルモン血が40mIU/mlなどの条件が揃えば早発于閉と診断しているようです。

早発閉経の基礎体温

早発閉経と一口に言っても実際にはその軽重によって基礎体温のグラフの形は異なってきます。

FSH(卵胞刺激ホルモン)の値が26(mIU/ml)を少し超える程度の軽度な早発閉経状態の方はほぼ黄体機能不全の方に近いような基礎体温になることが多いです。

このFSH(卵胞刺激ホルモン)の値が100(mIU/ml)近くになってくるとほぼ自力で生理がくることがなくなります。

そのため基礎体温はフラットな状態(無排卵・無月経)になります。

軽度な早発閉経の基礎体温

軽度の早発閉経の基礎体温

重度な早発閉経(無排卵)

 

さらに詳しく知りたい方は早発閉経

 

自律神経失調症

自律神経失調症とは自律神経の乱れが原因で起こる様々な症状が合わさったもので、特定の病名をつけることができないような場合にこの名称がられつけられることが多いです。

原因はストレス、ホルモンバランスの乱れ、生活リズムの乱れ、元々のストレスに弱い、体質的な問題など様々なものがあります。

症状は頭痛、耳鳴り、めまい、肩、首こり、動悸、息切れ、不眠、呼吸困難、 喉のつまり、胸の苦しさ、胸焼け、げっぷ、腹部膨満感、吐き気、嘔吐、腹痛、便秘、下痢、便秘と下痢を繰り返す、残便感、食欲不振、頻尿、残尿感、冷え性、多汗症などです。

自律神経失調症と不妊治療

自律神経失調の方が必ず不妊症になるわけではありません。

不妊症の方で自律神経失調症が原因となっている場合には基礎体温に特徴が出ます。

それは基礎体温がギザギザになることです。

特に高温期がギザギザになります。

このような場合には不妊治療の目的で自律神経を調整するな漢方薬を服用していただきます。

自律神経失調症は漢方理論では気滞(肝気鬱結)の状態であるというふうに考えます。

そのため気の巡りを良くするような漢方薬を用います。

自律神経失調症が不妊症の原因となっている方の基礎体温

 

より詳しく知りたい方は自律神経失調症

 

まとめ

ここでは不妊症の原因となる病気と基礎体温の関係について書いてきました。

すべてではないですが、不妊症の原因となる病気には基礎体温に特徴があることが多いです。

そして漢方理論ではその基礎体温の形から漢方的な不妊の原因を見つけ出し、治療を瘀kなうノウハウもある程度確立しています。

もし、現在病院に行かれていない方はまずは基礎体温に問題がないかチェックして、何か問題がありそうであれば、病院を受診して検査を受けてみてください。

それ以外の事で何かご相談があればご連絡いただければとと思います。

広島の漢方薬局ハーブスのTEL082-507-3470