ホームページを見て不妊治療の患者さんが来られました 。

この方、現在30代半ばで、今までに人工授精を4回と体外受精を一回行っています。

体外受精の採卵の際には4個採卵できて、そのうち一個が受精し、それが初期胚までは育ったのです。

けれども、それを移植したのですが妊娠はされなかったのです。

そこで、体質改善や体調を整える目的もあって漢方相談に来られたのです。

そのため、まず、この患者さんの全体の状態を知るために、体の状態について問診してみることにしました。

まず、病歴についてですけれども、この患者さんは甲状腺機能低下症があって、甲状腺の専門のクリニックに10年ほどかかっているそうです。

そこから甲状腺に関する3種類のお薬を出されているということでした。

それ以外に産婦人科の内診で子宮内膜症の気があると言われたことがあるそうです。

ただし特別な治療は受けていないということです。

また、右側の卵管に水腫(右卵管留水腫)があるそうです。

自覚症状としては、脇汗などが出やすくて、むくみや冷え症があり、特に足が冷えるそうです。

また、疲れやすく、胃もたれしたり、時折下痢、便秘をするなど、胃腸の状態はあまり良くなさそうです。

あとは、ひどくはないそうですけれども、痔もあるそうです。

漢方治療イメージ

生理周期は29日から35日で、生理の期間は5から7日間、生理の量は多い、そして生理の時に血の塊は出るそうです。

そして生理痛もあるそうです。

これらをことを漢方的に考えてまとめると、気虚(エネルギー不足)or脾虚(胃腸の働きの低下)、水毒(むくみなど水分代謝や体の中の水が片寄って存在している状態)、瘀血(血流障害)などの原因が身体にあると思われました。

ただ、このすべてが不妊症に関連しているわけではありません。

これらの漢方的な原因の中でどれが不妊症に関連しているのか?

そして、その原因を改善されるためにどの漢方薬をメインに選ぶのか?

そういったところに治療のセンスが問われてくるのです。

私の見立てでは、水毒と気虚が大きな原因になっているのではないかと思いました。

そこで、今回は水毒をメインに改善させると思われるものをまず2週間お出してみることにしました。

そして、2週間後に来られた際に、再度体の状態をチェックしてみると・・・悪くはないけれども、体調的には大きな改善は見られませんでした。

基礎体温的にも大きな変化みられませんでした。

そこで、再度チェックしなおして、今度は気虚がメインで水毒も改善させる可能性のある漢方薬を出してみることにしました。

そして、また2週間後に来られた際に体調や基礎体温をチェックしてみると・・・今回は全体的に微妙に良い気がします。

そのため、この漢方薬を継続していただくことにしました。

そして、2週間ごとに体調をチェックしていったのですが、漢方薬は合っているという手ごたえがあるのに思ったほどの改善が見られない状態が続いたのです。

こういう場合、自分の経験では煎じ薬に変更すると一気に改善することがあるのです。

そのため、この方は普段働いておられるのですが、煎じ薬を試してもらうようお願いしました。

そして、同じ漢方薬を煎じ薬に変えて、やはり2週間ごとに来ていただいていたのですが、実際、漢方薬を煎じ薬に変えてから1か月くらいではっきりとした違いが出てくるようになりました。

そして、煎じ薬に変えて2か月経過した段階で基礎体温にもはっきりとした違いが出てきました。

それが下のグラフです。

最初の頃の基礎体温

 

基礎体温の高温期は36・7℃以上の温度が12日~14日続く形が理想です。

この患者さんは高温期の温度は最初が36.7℃を少し切る日があり、高温期を多めにカウントしても11日と10日でした。

基礎体温合っている漢方薬を煎じ薬に変更しいた後の基礎体温

 

それがこの方の体質に合っている漢方薬を粉薬から煎じ薬に変更した後の基礎体温が上のようなものです。

高温期の長さが11日と10日➡14日と12日に伸びています。