切れ目

紹介で患者さんが来られました。

主なご相談内容は

①身体の痒み、②中途覚醒、③体重増加ということでした。

この①~③疾患の系統が全部異なるので、もしそれぞれに対して漢方薬をお出しすると、最低3種類の漢方薬が必要になり、費用的にもかかりますし、服用も別タイミングで服用したほうが良いので1日6回の服用になってしまうので現実的ではないと思いました、

そこで、優先順位をつけて治療していきましょうというお話をしました。

そうすると、上記の①~③で最も気になるのは①の皮膚のかゆみという事だったので、それをまず治療していくことにしました。

そのため、まずはこの皮膚の症状がいつから出てきたのかさかのぼってお話をしていただきました。

そうすると、小さい頃から小児アトピーがあり、良かったり悪かったりを繰り返しているそうです。

皮膚科に通っているのか確認すると、積極的に治療しているという感じではないですが、痒みを抑えるために皮膚科には通っていて、定期的にストロイドの軟膏やローションを出してもらっているということでした。

なるほど・・・昔から皮膚トラブルはお持ちだったということです。

漢方治療イメージ

そこで改めて、皮膚の気になる場所を教えていただきました。

そうすると、身体全般痒いそうですが、顔と頭部が特に痒いということでした。

顔の中では目の周りや耳付近、首と頭皮の際付近が特に痒いそうです。

そして、頭皮は脂漏性湿疹の患者さんのように、頭皮の皮が広範囲に白くなって、大型のフケのようなものがものすごく沢山ありました。

そして、どういう時に症状が悪化しやすいか尋ねたところ、体温が高くなった時、汗をかいた時、寝ている時に多いということでした。

さらに、東洋医学的な問診なども行いました。

そうすると、この痒みにストレスも関係している気がしたので、ストレスを緩和するような漢方薬も多少は使わないと良くならない気がしました。

そこで、あらためてこの患者さんに合いそうな漢方薬をチェックしてみることにしました。

そうすると、一つは中くらいの体力のの人に用いる漢方薬ともう一つはストレスがある人に用いる漢方薬が合う気がしました。

それら2つの漢方薬をそれぞれ食前食後で服用していただくことにしました。

そして凡そ2週間間隔でご相談に来られたのですが、全身の痒みは少しずつ減ってきました。

それと同時に中途覚醒も消えてゆきました。

数か月のストレスの漢方薬の服用でストレスによる全身の痒みと中途覚醒は消えました。

健康イメージ

そして症状が残ったのは目の周り、耳周辺、頭皮、後頭部と首の境界線付近になりました。

そしてストレスの漢方薬は必要が無くなり、アトピーの漢方薬だけで良くなりました。

そして、アトピーの漢方薬だけになって、さらに数か月服用していただくことで基本的には目周りも、耳周辺の痒みも無くなりました。

ところが・・・というか、このアトピーの漢方薬で改善できたのはここまででした。

あと残ったのは頭皮、後頭部と首の境界線付近だったのですが、今までの漢方薬を服用していただいても治っていかないのを実感したので漢方薬を変えてみることにしました。

ところがこの部分に合う漢方薬がなかなか見つからず苦労しました。

そこで改めて、この後頭部の患部を間近でチェックしてみました。そうすると今までのアトピーの部分とは異なり、皮膚がボコボコしていました。

あと、この首から後頭部にかけての頭皮の皮膚に関しては皮膚の皮がぺりぺりになって白くなり、痂皮となって見た目は大量なフケがあるように見えました。

この後頭部の皮膚のボコボコは湿疹でも出る可能性もありますが、化膿症でも出る可能性があります。

また頭皮の痂皮が大量に出ている個所は湿疹でも出ますが脂漏性湿疹でもこんな感じ鳴ります。

どこから治療するか?

そこで改めて患者さんにどこの症状が気になるかお伺いするとボコボコしたのが気になるということでした。

体質改善イメージ

ここのボコボコの部分今は乾燥して痒くないのですが、悪化すると痒みが増し、つい掻いてしまうと汁が出てきてジュクジュクして非常に辛いそうなのです。

そこで地道に時間をかけてこの患者さんに合う漢方薬をチェックしてゆくと、やっと合いそうな漢方薬を見つけることができました。

その漢方薬はアトピーでも使いますが、化膿症の方にも使う漢方薬でした。

その漢方薬をまた2週間間隔で服用していただきました。

この漢方薬に変えてから、後頭部付近に関しては激しい症状の悪化は無くなりましたが、すっきりと治ったという感じにはなりませんでした。

そして頻度は圧倒的に減りましたが時折痒みが出て、その際には搔いてしまい、ジュクジュクしたりもしていました。

でも間違っているようには思えないので、組み合わせる漢方薬を微妙に変えながら2週間間隔で継続的に服用していただきました。

そして、一進一退を繰り返しながらも微妙に良くなっているという感じで気が付けば1年が経過していました。

最初に比べればボコボコしている個所も減ってはいるし、痒みもジクジクも前ほどではありません。

そのため、このまま行けるところまでこの漢方薬で行こうと思ったのですが、途中でこの患者さんの症状、仕事でのストレスが強くかかった時に強く出ていることに気づいたのです。

そこで、一時期、ストレスを緩和する漢方薬に変更したのですが、これが思ったほど効いた感じがありませんでした。

漢方薬を変更してみたりもしたのですが、ストレスやメンタルがこの疾患のメインではないということだと思いました。

そこで、また再びもとの漢方薬の組み合わせに戻して数ヵ月服用していただいたのですが、悪くは無いのですが、この漢方薬では治るまではいかないのではないか?と思うようになりました。

そこで再び漢方薬を見直してみることにしました。

そして改めて患者さんに気になる箇所を聞いてみたところ、私が見て明らかに悪いボコボコのひどい箇所よりも酷くない箇所のところが気になるという事だったのです。

そこでその個所に効くと思われる漢方薬を時間をかけて探してみました。

そうすると・・・今服用されている漢方薬の類方によさそうなものがありました。

その漢方薬を2週間間隔で服用していただくことにしました。

正直、最初の1~2か月はひとつ前に出していた漢方薬との違いを感じることはありませんでした。

そのため、元の漢方薬に戻そうかとも思ったのですが、3か月経過した頃から、患者さんがブツブツが小さくなってきたと言われたのです。

そして5か月を経過した頃、このブツブツが全く無くなり、そして出なくなったのです。

うわっ・・・やっぱり漢方は匙加減、正確な漢方処方って大事なんだと改めて実感しました。

まだ、これから暑くて蒸し蒸しする時期が来るので絶対悪化しないとは言えないですが、自分の感覚として治った感じがしました。

そのため、ここで治療を終了することにしました。

この患者さん気がつけば2年半通われていましたが、何とか無事に卒業となりました。

本当に良かったです。

ホッとしました。

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