紹介で患者さんが来られました。

症状は肺気腫だそうです。

肺気腫とは中年以降の男性に好発する疾患で、その原因は主に長期間の喫煙です。

長期間の喫煙によって徐々に肺の組織(肺胞)が破壊されて、その結果、ちょっとした日常の動作でも、息苦しい、呼吸困難、痰、咳などが慢性的に続く病気なのです。

そして、一度発症した人の肺を元の状態に戻すことは、現在の医療ではまず無理だと考えられています。

そのため、病院での治療は肺組織の回復ではなく、現在残っている肺の機能をできるだけ有効に利用するか?に重きを置いた治療になるのです。

具体的には、ステロイドホルモン剤や気管支拡張剤、咳止め、痰切りなどの薬が出されることが多いのです。

この方も例外でなく、ステロイド剤が出されていました。

この患者さんは最初めまいの相談で来られていたのですが、その原因がステロイド剤による副作用ではないか?と私が指摘して、実際、ステロイド剤を止めてみたら、めまいがピタッと止まったのです。

ただ、ステロイドの吸入剤を止める前までは、病院でも、特にステロイドの吸入剤は使っても使わなくても良いと言われているし、このステロイドの吸入剤は使っていても効いている実感が全くない。

と患者さんは言われていたのです。

でもこのステロイドの吸入剤を実際止めてみたら、ものすごく息苦しくなってきたそうなのです。

そこで、何とかしてほしいということで再度相談に来られたのです。

この相談に関しては正直困りました。

ステロイド剤と同等の即効的な働きを漢方薬に求めるのは無理があると思いましたし、

もし、一過性でステロイド剤のように肺の働きを賦活する以外には、肺組織を回復させるしか方法はないのです。

常識的に考えると、一度破壊されてしまった肺組織を再生させることは漢方でも難しいです。

この話を患者さんにお話しして、試行錯誤的になるのを了承していただいたうえで、2つのアプローチの視点から、漢方薬を組み立ててみることにしました。

漢方治療イメージ

 

①一つは、自前のステロイドホルモンの分泌を促進させることで呼吸を楽にすることができないか?という視点で漢方薬を組み合わせるやり方です。

②もう一つは肺の組織の回復を狙って漢方薬を組み合わせるやり方です。

まずは①の視点で漢方薬を組み合わせて1週間様子をみていただくことにしました。

そして1週間後来られた際に様子をお伺いすると・・・全く自覚症状に変化はないとのことでした。

ただ、1週間だと漢方薬が合っていても自覚症状が変化するほどの改善に至っていない場合も考えられるので、東洋医学的な独自のチェック方法でも確認してみたのですが・・・やはり、この漢方薬ではこれ以上の改善は見込めそうもありませんでした。

そこで今度は②のやり方で漢方薬を組み合わせてみることにしました。

正直、なかなか合いそうな漢方薬を見つけることができませんでしたが、何とか候補を一つ見つけることができました。

その漢方薬をとりあえず1週間服用していただくことにしました。

そして1週間後来られた際に様子をお伺いすると・・・

見違えるほど症状が改善したそうです。

それを聞いて正直私の方がびっくりしました。

ほんとかな?と思い、東洋医学的な独自のチェック方法でも再度確認してみました。

そうすると、確かに改善している感じがします。

ただ、漢方薬の組み合わせは若干変えた方がよさそうでした。

そこで、漢方薬の組み合わせを少し変更してまた、1週間分お出ししました。

それから、1週間ごとに相談に来られているのですが、ご本人曰く、1週間ごとに確実に自覚症状は改善しているとのことでした。

きっと自覚症状に関しては、このまま改善していくような気がします。

ただ、この漢方薬が実際、肺組織の改善を起こすかどうかに関しては、今後の経過をみて書けるようなことが出てくればまた書きたいと思います。

でもとりあえずは良かったです。

ホッとしました。