何かあった時に相談に来られる患者さんの紹介で新しい患者さんが相談に来られました。

この方は音楽家で、演奏に関わる手指が動きにくくなってきているという事でご相談に来られたのです。

そこで、まずお話をお伺うことにしました。

このようになったきっかけかけについてお伺いすると、15年以上前に重たい楽器を長時間持って歩かなければいけないことがあって、その時にかなり無理をしたそうなのです。

それ以降筋肉のこわばりが一気に出てそれ以降ずっとその症状が続いているそうなのです。

この筋肉のこわばりは直接演奏する楽器にかなり影響を与えてしまうため、いままでに様々な治療法を試したそうなのですが、効果を実感するものがあまりなかったそうなのです。

ただし、比較的最近試した病院で出された筋弛緩薬が比較的良かったそうなのですが、このお薬を服用すると、胃が気持ち悪くなったり、吐き気がしたり、食欲不振になったりして、とてもこのまま続けることは出来そうもないと断念されたそうなのです。

とりあえず筋弛緩剤で症状が改善したという事は、実際に筋肉の過緊張(こわばり)の問題が病態に関わっていることは間違いなさそうです。

そこで、まず、漢方的な筋肉疲労に用いることのある漢方薬の中からこの患者さんに合いそうなものを探してゆくと・・・合いそうなものが見つかりました。

 

そこで、まずこの漢方薬を服用していただくことにしました。

漢方薬のイメージ

そこからだいたい1週間間隔でご相談に来られたのですが、最初の1週間、2週間は正直よくわからない感じでした。

ただ、漢方薬の場合胃腸障害などの副作用は全く感じないため、願望も込めて続けておられました。

ただ、3週間当たりを超えた頃からご自身で、若干ですが症状が良くなっていると実感されてきたようです。

通常この漢方薬は激しい運動をした時の筋肉疲労に用いるもので、正直もっと即効的に効くのが普通だがこの患者さんの話から、かなり深い部分まで痛めてしまっていると感じました。

それからも大体1週間間隔で相談に来られたのですが、その時々で、環境的要因、人間関係、風邪などの体調の変化により、治療すべきポイントが微妙に変化しました。

その変化に伴って必要な漢方薬の組み合わせ、配合比率、量などがその都度変化しました。

こういう傾向はプロの音楽家の方には多いのですが、その中でもこの患者さんはかなり繊細な感じでした。

このような状況に応じて治療し始めてから玉ねぎの皮をむくように徐々に徐々に症状は改善してきました。

このころまでの漢方薬は筋肉のこわばりを取り除いたり、肉体疲労を取り除くもnだったり、筋肉の使い過ぎを改善するものだったりしたのですが、漢方薬を服用し始めてから10か月を超えたあたりから、漢方薬の方向性が大きく変わってきたのです。

この頃からこの患者さんに合うように感じるようになったのは、精神的なものに用いるような漢方薬でした。

この漢方薬は自分の経験ではジストニアに用いることがあるものでした。

音楽家ジストニアの可能性イメージ

この患者さんが最初に来られた時、ジストニアの可能性もあるかもとチラッと言われていたのですが、最初の段階では私はそうは思わなかったのです。

ちなみにジストニアとは自分では制御できない持続的な筋肉の収縮のことです。

代表的な物には顔面痙攣や書痙、斜頸などがあります。

つまり、ジストニアとは自分の意志とは別に筋肉が勝手に動いたり、収縮して思い通りに動かせなかったりする病気です。

この病気は音楽家の方に多く、ドイツの作曲家シューマンがピアニストになるのを断念したのがこれが原因だったというのは有名な話です。

この音楽家に起きやすいジストニアのことを特に音楽家ジストニアと呼ぶのです。

この音楽家ジストニアの原因はわかっていないのですが、筋肉を長時間、長期間酷使した方、同じ動作を反覆すようなことを繰り返す、ストレスが多い方に出やすい傾向があるのです。

 

話が脱線しましたが、この患者さん最初は確かに筋肉疲労の蓄積が演奏に大きく影響を与えていたように思うのですが、この頃から筋肉疲労の漢方薬が合う反応が消えてきたのです。

しかし、少しずつ軽くなっているものの自覚症状としては依然として、こわばりが原因で楽器を思い通りに動かせないということは続いていました。

それから、この精神的ストレスに用いるような漢方薬を使うようになって、もう一つ大きく一皮むけた感じがありました。

実際、患者さんからお話を伺うと、最初の楽器を長時間持ち運んだ以前から、こわばりで楽器を上手くコントロールできないことはずっとあったそうなのです。

そのため、現在の治療は音楽家ジストニアの治療をしているような気がしています。

とりあえず、今までの所、玉ねぎの皮をむくように徐々に改善しているので、ホッとしていますが、玉ねぎの皮をむいた先にはまだ何があるかははっきりわかりません。

また、何か治療していく中で気づきがあれば続きを書きたいと思います。