以前、漢方相談に来られていた患者さんから、お父様のことで、ご相談を受けました。

お父様は県外にお住まいで、簡単には来られる距離にはないので、代わりに相談してお薬を出してもらえないか?というご相談でした。

基本的に私は、直接ご本人と相談してお薬を出すようにしており、ご相談内容によってはお断りすることもあるのですが、この方は以前、私の薬局で治療を受けれらたこともあるので、代理で来ていただきながら、ご本人様からも、時々お電話でお話をお伺いするということで、ご相談することにしました。

そこで、ご本人様に問診票をお送りして、問診票を書いていただき返信いただいてから、追加で直接ご本人に電話で話をお伺いしました。

ご相談内容は、夜間頻尿と、日中の尿の出が悪いので困っているということでした。

具体的には現在、前立腺がんと前立腺肥大を患っているそうです。

ただし、前立腺がんはかなり軽度であり、年齢が80歳ということもあって、前立腺癌については当面手術は考えず、経過観察されているとのことでした。

そのため、病院での治療としては、前立腺肥大のための排尿改善薬が出されていましたが、夜間に必ず2回はトイレに行かなければならないのと、排尿時の尿の出が悪く、ちょろちょろとしか出ないため、日中も回数がどうしても多くなるという事で、ご本人の実感としては病院のお薬が効いていない感じでした。

そこで、いただいた問診票や検査データや東洋医学的なチェックを行い漢方薬を絞り込んでいきました。

とても悩んだのが前立腺がんの治療をどうするか?です。

病理学的には前立腺肥大と前立腺がんは全く別の病態ですが、漢方治療上は前立腺肥大と前立腺がんは重なる部分があるのです。

前立腺肥大の漢方薬の加味方が前立腺がんの漢方薬として用いられることもあるのです。

しかし、実際この患者さんの状態を東洋医学的にチェックしてみると、どうも、前立腺肥大に用いる漢方薬の加味方はこの患者さんの前立腺がんには合わない気がしました。

でも、内心、病院の治療は前立腺がんの治療ができていないから、症状が改善しないのではないか?と最初お話をお伺いして私は感じたのです。

しかし、この患者さんに合いそうな漢方薬としては前立腺肥大の漢方薬しか見つけることができませんでした。

そこで、まずは前立腺肥大の治療をしてみて、症状が改善しない様だったら、前立腺がんの治療を追加してみることにしました。

そして、前立腺肥大に用いる漢方薬に、もう1種類漢方薬を併用して服用していただくことにしました。

そして服用されて約2週間後、代理の娘さんが来られました。

症状の変化をお伺いすると、夜間頻尿に関しては今までは必ず2回以上は起きていたのが、1日1回になる日が出てきたそうです。

ただし、ここ最近ふらつくような症状が出てきたそうです。

そこで、実際お父様にお電話して症状をお伺いしたところ、頻尿に関してはいままで病院で出されている前立腺肥大の薬よりも効いてる実感があるとのことでした。

しかし、めまいのような症状も出てきて困っているとのことでした。そこで再度身体の状態をチェックすると、確かにめまいの反応の出るポイントに出てきていました。

そこで今回は漢方薬を若干変更して服用しいていただくことにしました。

そしてさらに2週間後、代理の娘さんが来られた際に様子をお伺いすると、夜間頻尿の回数はやや減って、ふらつきも減ってきたとのこと。

そこで、今回は同じ漢方薬で1か月分お出ししました。

そして、この日から約2週間後、遠方のお父様が直接ご相談に来られたのです。

症状をお伺いすると、夜間頻尿は随分改善されて、夜中に1度もトイレに起きない日もあるようになったとのことです。

ふらつきは気持ち残っているそうです。

ただ、まだ気になっているのが日中も含め、おしっこの出ずらさだということでした。

どうしても勢いよく出ず、前よりはましなようですが基本はちょろちょろ出るという事なのです。

ただ、全体としては改善していますし、今までの経過を考えると、おそらく、もう少し時間が経過すれば出ずらさも改善してくるのではないか?と思いました。

そのため、やはり同じ漢方薬で様子をみていただくことにしました。

前立腺がんがあったため、自覚症状の改善が難しいのではないか?と心配していましたが思った以上に順調に改善していてホッとしています。