漢方医学では「瞑眩(めんげん)」という言葉があります。今回は、なかなか聞き慣れない瞑眩についての基礎知識や、瞑眩のような症状が出たらどうしたらいいか、さらにはよく間違われがちな瞑眩と「誤治(ごち)」の違いについても詳しくご紹介いたします。
聞き慣れないけど覚えておきたい「瞑眩」の基礎知識
実は、漢方医学の中で「瞑眩」は非常に重要な要素です。この項目では「瞑眩」とはどういった意味なのか、瞑眩の出る時期や期間、さらには瞑眩のような症状が出た場合はどうしたらいいか、具体的な内容や対処法について詳しく解説していきます。
「好転反応」のことを「瞑眩」と呼ぶ
病気が治っていく時に発生し、患者様にとって不快な症状のことを、西洋医学では「好転反応」と呼びますが、漢方医学ではこれを「瞑眩」と呼びます。個人差はあるものの、下痢や吐き気、発熱の症状が出たり、皮膚から汗を突然多くかいたり、湿疹のような症状が出ることもあります。
どうしてこのようなことが起こるのかははっきりとはわかっていません。少なくとも言えることは、この症状が治まってから急激に症状が改善してくるということです。
瞑眩の出る時期や期間は個人差が非常に大きい
瞑眩の出る時期や期間は個人差が非常に大きく、一概にいえるものではありませんが、参考としては1週間程度で症状が現れ、数日で収まることがほとんどです。
例外として、メンタルに影響する漢方治療を行った際に、眠気や倦怠感が数ヶ月続くことが非常に稀な事例としてありますが、これは今まで極端に緊張した生活を強いられてきた方が漢方薬の力で急激に緊張が緩んだだめに起こるものです。
基本的には非常に短期間で起こるものが「瞑眩」の可能性がある、といえるでしょう。
瞑眩が出たら一旦服用を中止して専門家に相談を
「これは瞑眩なのか別のものなのか?」というのは、患者様が判断するのは難しいです。そこで、当局では以下のことを推奨しています。
・瞑眩のような症状が出たら、一旦服用を中止し、来局いただくこと
・瞑眩がどうかの判断は当局の薬剤師にお任せいただくこと
サプリメントや健康食品を販売している店では「瞑眩はよく出る症状」として説明されることもあるようですが、それほど頻繁に起きるものではありません。
瞑眩のほとんどの原因は、後述する「誤治」によるものです。そのため、そのまま放っておいて快癒することはまずありません。
薬を飲んで体調を崩す、または不快な症状が出る等、瞑眩のようなものが起きたら、まずは当局にご相談下さい。
瞑眩と誤治の明確な「違い」について
前の項目で「瞑眩は誤治によるものがほとんどである」という説明をしましたが、瞑眩と誤治には明確な違いがあります。
「誤治」とは漢方医学的に誤った治療や処方を行い、かえって症状を悪化させることを指します。誤治の場合、薬やサプリメントを飲んで体調を崩す、または不快な症状が出ても、急激に回復する、または薬を飲む前より良くなるといった現象は起きません。最も悪化した状態より多少良くなることはあっても、そのまま症状は維持されてしまい、いつまで経っても回復する兆候が見られないのが特徴です。
例えば皮膚疾患等でサプリメント等を飲み、悪化したものが数ヶ月の長期に渡る場合、間違いなく誤治といえます。
瞑眩はあくまでも「好転反応」ですので、数日は症状が出たとしても、その後どんどんと症状が軽快していきます。漢方薬を飲む前よりも明らかに症状が改善した、あるいは快癒した場合のみ、瞑眩となります。
瞑眩が起きる方は非常に稀です
通常、瞑眩は頻繁に起こる症状ではありません。むしろ極めて稀といえる症状です。当局での瞑眩は、1年に1名いるかどうかという非常に稀な事例です。瞑眩のような症状が出ても、誤治による症状の可能性の方が高いといえるでしょう。瞑眩と感じるような症状が出ても、まずは当局にご連絡いただき、可能であれば来局していただくことをお勧めいたします。
瞑眩かな?と思ったら、できるだけ早めにご相談下さい
近年の健康志向ブームにより、漢方薬を身近に感じていただく方が増えてきています。特にここ数年は新型コロナウィルスの影響もあり「免疫力を上げたい」と漢方薬局の門を叩かれる方も多いようです。
漢方と瞑眩、誤治は切っても切り離せないものです。非常に難しい境界線にあるため、専門家でない方が簡単に「瞑眩である」と信じて飲み続けてしまうのは非常に危険なことといえるでしょう。
漢方薬を飲んでいて、身体に不快な症状、不調が出た場合は、まずは当局に早めにご相談下さい。適切な対応を行い、患者様に安心していただけるよう尽力いたします。