いつもはお一人で来られる膝痛患者さんに、今日はご主人も一緒に来られていました。
この方はだいたいは調子が悪いときに、一緒に来られることが多いのです。
そこで、今日は何か不調がありますか?とお伺いすると・・・ここ1~2週間、急に耳鳴りがし始めて、あまりにもその音がうるさくて眠れないと言われるのです。
そこで、耳鳴りに効く漢方薬がないか?相談に来られたそうなのです。
通常の疾患なら、それじゃあ漢方治療をしましょうか?
という話になるのですが、耳鳴りに関してはちょっとだけ事情か異なります。
というのも、耳鳴りは他の疾患と比べて治りにくいのです。
その耳鳴りの中でも特に難しいのが、老化に伴って出てくる耳鳴りです。
今回相談に来られた患者さんは70歳は越えておられます。
可能性としては、老化に伴って生じた耳鳴りの確率が高いのです。
そこで、この患者さんに、「老化に伴う耳鳴りは難しく良くならないことも多いですよ。」とお話ししました。
それでも、とりあえずみてほしいと言われるので、とりあえず、みてみることにしみした。
まず耳鳴りの治療において大事なことがいくつかあります。
この中で最も重要なのが、耳鳴りの音がどんな音か?ということです。
耳鳴りの音が、ジージーという蝉の鳴くような音やザーザーという、テレビ番組の終わった後の砂嵐のような音の場合、ほぼ間違いなく老化に伴う音でこれは漢方薬による治療をしても良くならない方がおられるのです。
そこで、この患者さんに、耳鳴りの音がどんな音か?お伺いしてみました。
そうすると・・・
シーーという高い音なのだそうです。
一般的に耳鳴りの音には先ほどのジージーという低い音のものと、キーンとかピーとかいう高い音に分かれるのです。
そして、経験的に比較的治りやすいのが、キーンとかピーとかいう高い音なのです。
シーーという音がするというのは正直あまり聞いたことがないとのですが、音が高いという事で、いけるかもしれないと思いました。
そこで、やってみないとわからないけど、合う漢方薬が見つかれば、可能性は多少あるかもしれないというお話しをしました。
この患者さんも了解されたので、耳鳴りの漢方治療をすることになりました。
そこで、耳鳴りに関する一通りの問診を済ませた後、耳鳴りの反応のでるツボでこの方の耳鳴りに合う漢方薬を、探してみました。
そうすると・・・あまり耳鳴りに使ったことがない漢方薬が合っている気がしました。
そこで、自信がなかったのでとりあえず、この漢方薬で1週間様子をみていただくことにしました。
そして、1週間後来られた際に様子をお伺いすると・・・
症状は減っているそうです。
耳鳴りはするのだけれども、だいぶ気にならなくなっているそうです。
でもなんとなく、この漢方薬はベストではない気がしました。
そこで、再度合う漢方薬を探したのですが、他に良い漢方薬を見つけることができず、結局、同じ漢方薬を出すことになりました。
そして、また2週間後来られた際にに様子を、お伺いすると、あまり変わっていないそうです。
そのため、この患者さんはもう、少し諦めモードに入っていました。
そこで、再度漢方薬を探してみました。
そうすると・・・やはり感覚的には今の漢方薬の系統で合っている気がするのです。
そこで、この漢方薬にもう2種類の漢方薬を併用していただくことにしました。
そして、1週間後来られた際に様子をお伺いすると・・・
耳鳴りは全くしないそうです。
治ったんじゃないか?と言われるのです。
それと、最近、胃の調子が悪いので漢方薬が強いのではないか?といわれるのです。
いくら、漢方薬が合っていたとしても、服用1か月弱で治ることはありえません。
恐らく、これは単に一過性で症状が消えただけだと思いました。
また、漢方薬はあまり強弱では考えないのですが、漢方薬が強いという言われ方をする時は、経験上、漢方薬が合わなくなってきていることが多いのです。
そこでツボの反応使って、現在の胃の状態と耳の状態、そして漢方薬が合っているかどうかをチェックしてみることにしました。
そうすると胃の状態は今飲んでいる漢方薬の影響のような気がします。
最初、副作用が出ないことを確認して、お薬をお出しているので、これは服用されてから出てきた問題だと思います。
胃の問題が漢方薬によって出てきているとするならば今飲んでいる耳鳴りの漢方薬も合っていない可能性があります。
そこで症状も強く出ていた右耳の状態をチェックしてみると・・・
耳鳴りの反応が消えています。
耳鳴りの場合症状が消えたと言われたといたとしても、実際に耳をチェックしてみると、完全に消えているのではなく、改善して反応が弱くなってることが多いのです。
ところがこの患者さんの場合は耳鳴りの反応そのものが全く消えていました。
通常の耳鳴りであれば1年以上はかかるはずです。
にわかには信じがたいですが、これに関しては全く患者さんの言われる通りでした。
正直どうしてこんな風に短期間で治ったのか私にも分かりません。
しいて言うなら耳鳴りの音がシーという高い音だったため、老化が原因ではなかったということなのかもしれません。
この事でどうして胃が悪くなったのかも分かりました。
この患者さんにとって耳鳴りの漢方薬は必要なくなったから耳鳴りの漢方薬が働き場を失って違う場所に作業したのです。
今回用いた漢方薬は本来胃腸薬として使う漢方薬なので胃腸の方に作用したのだと思います。
これも漢方薬をやめて数日すれば元に戻るレベルの問題でした。
それにしても高齢であっても短期間で耳鳴りが治る事があるのだということはとても驚きでしたし、良い経験になりました。