今回は流産された後になかなか妊娠しないという方に知っておいてほしい7つの重要ポイントについて説明します。
読者対象の方は流産後なかなか妊娠されない方とそのご家族の方、そして流産を繰り返す、不育症や習慣性流産などを経験されている方やそのご家族の方などです。
この話は、多くの不妊症患者さん・不育症患者さんに漢方薬剤師として携わってきた私の約20年の経験を基に書いています。
そのため、今後どのように不妊治療をすすめればよいか参考になる部分があるのではないかと思います。
稽留流産と進行流産
流産の症状には稽留流産と進行流産があります。
稽留流産は胎卵もしくは胎児が子宮内で死んでしまっているのに子宮内にとどまったままの状態です。
腹痛や出血などの自覚症状を伴わないので、エコー(超音波検査)によって発見されます。
稽留流産については下記ページにて、詳しく解説しておりますので、ぜひお読みください。
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稽留流産について
進行流産は子宮内容物が外に出てきている状態のことです。完全流産と不全流産に分けられます。
流産後、なかなか妊娠しない方にポイントをまとめた理由
それはここが、次に再び妊娠できるかどうかの一つの分岐点になることが多いからです。
当然これを知っておくと知っていないっては今後の不妊治療にに大きく関わってきます。
流産後妊娠しない時に知っておくべき7つの重要ポイント
1 流産後半年ぐらい妊娠しないのは普通です。焦らないでください。
流産後半年ぐらい妊娠しないのは普通です。
このくらいの期間であればそんなに心配しなくていいです。
ウチの薬局で漢方相談をされている患者さんの中にも妊娠された後、流産される患者さんがおられます。
そういう患者さんが再び妊娠されることが多いのは、およそ半年から1年ぐらいの間です。
ご存じない方もおられるかもしれませんので書きますが、妊娠できる良い質の卵ができるのは年に数回程度なのです。
これは最先端の不妊治療を行っている高度医療の先生方も認めていることです。
そうすると流産後の半年間で良い卵が出てくるのは良くて1回~2回程度なのです。
そんな少ないチャンスで妊娠することの方が難しいと思います。
そのため流産後1年ぐらいまでは妊娠しなくても極端に心配しなくても良いです。
まずは焦らないことです。
2 流産した後、高齢出産になる方は早めに病院を受診をする
これはポイント1と矛盾するような話の内容ですが、40代の高齢不妊になってきた場合は話は別です。
40代にこだわる必要ないのですけれども、もう少し若くても明らかに卵巣機能が低下している場合などは早めに病院に行ったほうが良いと思います。
それはなぜかと言うと、年齢が上がれば上がるほど年齢に伴う問題によって妊娠がしづらくなるからです。
ウチの漢方薬局に来られてる患者さんの場合、その人の体の状態にもよりますけれども、40代の方は次の月ぐらいから病院には行ってもらうようにしています。
これは不妊治療をすぐに再開するという意味ではなく、体の状態をチェックするという意味合いで行ってもらうのです。
四十歳以上超えてくると、流産をきっかけとして次の生理が来なくなってしまったりするケースもあるのです。
そのため一回リセットするような形で、病院でピルなどのホルモン剤を服用することを勧めることもあります。
不妊治療そのものは3ヶ月後に始めるとして、 いざ治療を始めた時にはベストな状態に近づいていることが望ましいのです。
そのため、次の不妊治療のために早めに準備しておくということが四十代の高齢不妊の人には良いと思います。
3不妊治療の病院に通っている人も通ってない人も流産後一度は不妊専門病院で不妊検査を受けてみる
現在不妊治療で病院に通っている人も、通わずに妊娠された方も流産後なかなか妊娠しない場合は一度はしっかりとした不妊専門病院で不妊検査を受けてみることをお勧めします。
それはなぜか?というと、何らかの不妊症の原因があって流産した可能性があるからです。
そういう方は妊娠もしにくいということも可能性としてはあるのです。
現在、不妊専門の病院に通っていて詳細な検査を日ごろから受けられている方は問題ないと思いますが、近くの産婦人科で診てもらって
いる方の場合は、不妊検査が不十分であるケースもあります。
そのため病院でそういった問題がないかをあらかじめ調べておくことは時間を無駄にしない事につながります。
流産後なかかな妊娠しない原因
私が不妊治療していてよく見かける流産後なかなか妊娠しない原因としては次のようなものがあります。
高プロラクチン血症
これはプロラクチン(乳汁分泌ホルモン)というホルモンが普通の人に比べて過剰に出ている場合に起きるもので不妊症や不育症の原因になります。
この高プロラクチン血症が特に多いのは二人目不妊の患者さんです。
特にお子さんを母乳で育てたお母さんの場合は普通の人に比べてプロラクチンの分泌が高いことが多いです。
なぜならプロラクチンはお乳を出すことを促進するためのホルモンだからです。
このプロラクチンが過剰にあると、排卵をしにくくしたり、子宮内膜の発育にも影響を与えますし、仮に受精卵が着床してもうまく育たないなど、妊娠をし難くたり、妊娠の継続をしにくくしたりするのです。
つまり流産しやすくなるのです。実際これは不育症(習慣性流産)の原因の一つなのです。
そのためこのプロラクチンの値が高いか低いかを検査しておくことは重要なことです。
この検査は血液検査で行うことができます。
注意しないといけないのは日中はプロラクチンの値が正常でも夜になると高くなってしまう潜在性高プロラクチン血症という状態もあります。
そのため、特に二人目不妊の方とか、40代の方で少しでも不妊の原因をはっきりさせておきたいような方はそれも合わせて受けられておいた方が良いと思います
黄体機能不全
元々が問題なかったとしても妊娠をきっかけに身体の体質が変わってしまうということはたまにあります。
黄体機能不全になっていると血液検査でプロゲステロンの値が低下します。
そのため 血液検査でこれらの値が低くなっていることがあります。
このような状態であれば、生理学的にはホルモン補充療法が必要となります。
卵管閉塞・卵管狭窄
これは妊娠がきっかけではなく、もともと持っていた可能性があるものです。
一度妊娠されている場合は両方の卵管が詰まっていたり狭くなっていることはほぼないと思います。
仮に片方の卵管が詰まっていたり狭くなったりしていると妊娠する確率は単純に半分になるわけです。
そのため、これがあるかどうかを知っておけば確率は1/2に減るということも理解できますし、
もし卵管閉塞・卵管狭窄が見つかった場合は、これらの影響を受けない体外受精に一気に進むという選択肢も出てきます。
そのため卵管閉塞・卵管狭窄の検査(卵管造影検査、通気検査、通水検査)など受けておくことをお勧めいたします。
甲状腺機能低下症
これも流産がきっかけで起きたものではないと思いますけれども元々甲状腺機能が低下していると妊娠を維持しにくく、流産しやすい傾向があります。
甲状腺の値は通常の血液検査で調べることができます。
そして甲状腺機能低下症の場合はチラージンなどの甲状腺ホルモンを補充することで治療が可能です。
この検査も普通の産婦人科では不妊症の検査としてしないことがあるのでやっていない方は検査してみてください。
4 流産後に始めた妊活(不妊)サプリメントなどが足を引っ張っていることがある
流産後に身体の状態を少しでも良くしようと思って始めた不妊サプリ・妊活サプリことが、逆に身体の状態を良くする足を引っ張ってしまうことがあります。
こういったものはサプリメントということで手軽に服用されることが多いのですけれども、意外な落とし穴となっていることがあります。
多くの方はサプリメント(健康食品)は身体に無害である(副作用がない)という風に間違って理解されてる方が多いのです。
けれど、 良い効果だけあって副作用(害)がない なんて都合のいい話は世の中にはないのです。
しかしサプリメント(健康食品)には副作用についての記述はありません。
なぜなら※健康食品やサプリメントは法律上、効能効果を書いてはいけないからです。
法律上、効能・効果が書けないので、当然副作用についても書くことができないのです。
そのような社会的背景があるため、サプリメント(健康食品)には誤ったイメージが浸透してしまっているように思います。
そのため、自己判断でサプリメントを購入して飲んでしまうことで自分に合わないサプリメントを服用して逆に妊娠しずらくしているケースを実際目にします。
そのため、どうしてもサプリメントが摂りたいのであれば不妊治療に詳しい薬剤師もしくはお医者さんに相談して最小限必要なサプリメントを飲むようにされるた方が良いと思います。
それが、状況的にどうしても難しい場合は、まずは1つのサプリメントに絞って服用し、自分の体調の変化(基礎体温も含め)をチェックしてみて良ければ続けて、ピンと来なければ止めて別のサプリメントを試すというやり方が良いと思います。
※一般的に言われるサプリメント(健康食品)は厚生労働省の定義するカテゴリーの中では一般食品に該当し、機能性(効能効果)の表示ができないのです。
そして健康食品の中でちゃんと、検査などを行って、安全性と有効性の許可を得ているものは特定保健用食品(トクホ)のみなのです
5 流産が原因でなく年齢的な問題(高齢不妊)で妊娠しなくなっていることがある
これは40代以上の高齢の方が特に関係してくる問題です。
流産後に妊娠しなくなった患者さんの中には加齢(高齢)にともなって妊娠しずらくなっている患者さんもおられます。
これは不妊治療を始められる年齢が遅くなったたために出てきた問題だと思います。
これは病院での検査ではっきりと出る場合と出ない場合があります。
まずは病院の検査で出る場合につい説明します。
加齢による問題で卵巣機能が著しく低下してくるとFSH(卵胞刺激ホルモン)というの値が高くなってきます。
このFSH(卵胞刺激ホルモン)の値も血液検査で調べることができます。
このFSH(卵胞刺激ホルモン)の値がを26mIU/ml超えてくると数値上は閉経状態ということになります。
実際にはこの値と身体のコンディションには個人差があり、26mIU/mlぐらいでは実際には正常に排卵している方もおられるのですが、
卵巣機能は衰えてきているというふうに考えられます。
このような場合は少なくとも治療を急いだ方が良いですし、今後の病院選びも かなり重要になってきます。
病院の検査データ上では問題なくても、高齢による不妊の問題が表れているケースがあります。
それはホットフラッシュに代表されるような更年期障害の症状が出始めているケースです。
このような更年期症状が出始めた場合は、病院での検査で問題が無い場合でも治療法をステップアップするなど不妊治療を急ぐ必要が出てきます。
6 基礎体温をつけてみることで原因を見つけることができることがある
病院の検査で全く問題がないという結果が出ても基礎体温をつけてみると身体の問題に気がつくことがあります。
高度な不妊治療をされているお医者さんの中には基礎体温をつけることに関して否定的な意見もありますけれども、西洋医学的な検査で
問題が出ない場合に基礎体温をつけてみると、なかなか妊娠しない原因を見つけることができることがあります。
この原因は漢方理論に基づくものですが、その原因に対して漢方治療を行うことによって今まで妊娠できなかった方が妊娠できているケースは多々あります。
そのため病院の検査で大きな問題がない場合には基礎体温をつけてみるのも一つのやり方です。
7 前回の妊娠が続いていると身体が勘違いしている場合がある
これはあくまで長年の不妊治療経験による私の個人的な見解です。
これは全ての流産後のすべての方に当てはまるわけではないのです。
掻把手術後に生理不順や基礎体温の乱れが顕著になった方、限定の話です。
繋留流産もしくは胎児の発育が止まったとこで掻爬手術を行った患者さんの中にそれ以降から生理不順、もしくはその後の基礎体温が乱れるという患者さんがおられます。
病院では流産をきっかけにホルモンバランスが乱れたという風に表現されるところが多いのですけれども、私の個人的な見解はこれとは異なります。
私は掻爬という外的な力によって人為的に流産させたけれども、自分自身で自然に流産を起こさななかったため、自分で流産したと気づいていないということが起きているのではないかと思うのです。
そのために身体がまだ妊娠していると勘違いをしているとしか思えない現象(流産後もずっと高温期が続いている等)が自然流産でなく掻把手術を受けた方に限ってかなりあるのです。
実際に私が使っている東洋医学的な妊娠反応点(妊娠を確認するツボの反応)、妊娠された方はこの反応が出ていて、通常流産された方はこの反応は消えているのですけれども、掻把手術されてその後、生理不順などになった患者さんにこの反応が残ってることが多いのです。
そのため妊娠していると勘違いしているとしか考えられないのです。
そしてこの妊娠反応点の反応を消すような漢方薬による治療を行うことで生理不順が解消されたり、基礎体温が正常化したりするケースが多くみられるのです。
まとめ
いかかでしたか?
ここでは流産後、なかなか妊娠しない時にに知ってもらいたい重要な7つのポイントについて説明しました。
ここですごく大事なことは焦らないことです。
それがなぜ大事なのか?
それは焦ると判断力が低下するからです。
判断力が低下した状態で何かをしようとしてもうまくいかないことの方が多いです。
そのため流産後、半年は妊娠しなくても焦る必要はないということを知っておいてください。
でも半年の間に次の準備をしておくことは大事だと思います。(※40代以上の方は次の準備はできるだけ早めにしておくことは大事になります)
この時期に重要なのは流産後の自分の身体を把握するということです。
検査や基礎体温などでできるだけチェックしておいて、新たな不妊の問題が出てきていないか?取りこぼしがないかチェックしておくことが重要なのです。
人によっては不育症が潜んでいる場合もあると思います。
かりにそうであっても何か問題があればそれを治療してゆけば良いわけです。
でも、大きな問題がない場合、今後のように不妊治療を進めてゆけば良いのか?
ここでみなさん悩まれるわけです。
継続か?それとも何かを変えるか?何か新しく追加で始めてみようか?何を始めたらよいのか?様々な問題が出てきます。
こういう時に重要になるのがなんでも相談できる場所(存在)です。
ここでいう相談できる場所(存在)というのは不妊治療に対して専門知識があってアドバイスがもらえるところという意味です。
正直、不妊治療専門のクリニックの先生方は忙しすぎて、不妊に関わる細々とした相談まではできないのが実情です。
そのため、もう少し身近に相談できる場所が何より大事になると思います。
お近くの産婦人科の先生や漢方薬局、不妊治療に力を入れている鍼灸院、特別に不妊治療の勉強をされている整体の先生などはそのような場所になると思います。
そういう場所(存在)を見つけて、様々なことを相談しながら不妊治療を進めてゆくことが流産後、再び妊娠するうえで重要なのではないかと思います。