葛根湯と不妊治療について

 

今日は漢方薬の専門家として葛根湯と不妊治療について書いてみたいと思います

まず葛根湯の基本的に入っている薬味(生薬)とその働きについて書いてみたい思といます。

まず葛根湯には葛根というものが入っています。

これは葛という植物の根っこです。

これは一般的にもよく知られている葛湯のクズのことです。

葛は食品としても使われていますからものすごい強い薬性はありません。

働きとしては中国では解という言い方をして肩頸の凝り・こわばりを取るような働きとして使われています。

だから葛湯そのものにも肩の凝りを取るような働きはあります。

葛根湯で葛根が使われている一つの理由として、寒気があるとき肩から首にかけてこわ張ります。それを緩和するための目的も葛根にはあるのです。

それ以外に含まれているものは芍薬、桂枝、麻黄、生姜、大棗、甘草、以上の生薬が葛根湯には含まれています。

これらの働きについて説明しますと、芍薬は 血を増やすような働きもありますけれどもそれは漢方薬に含まれる量によって 異なってきます。

この 方薬に含まれている生薬量はあまり多くないのでどちらかといえば血を増やすというよりも緊張取り除く みたいな働きで使われているのだと思います。

そして桂枝、これはシナモンの枝の部分です。

働き的にはシナモンに近い働きあります。

漢方薬局ハーブスイメージ

桂枝は温める作用もあるのですけれども葛根湯で使われる時の働きとしては体の表面を温めて汗を発散させるという作用が主なのです。

そして麻黄という生薬も発散をさせて汗をかかせるという作用が主な働きです。

この桂枝と麻黄の働きによって、発汗させるという作用がさらに強まるのです。

そして大棗と生姜と甘草というのは何通りかの考え方がありますけれども、一つには麻黄の胃腸障害を防ぐような働きがあります。

この三つの生薬は東洋医学では胃腸に働くため 自然治癒力を高める方向に働くのです。

トータルとして風邪によって表面が冷えている外側を温めて汗を発散させることで風邪を取り除くというような働きになるのです。

さて、それでは改めて不妊症について考えてみたいと思います。

不妊症の原因は様々ですが、傾向としては冷えているのか温まっているのかといえば、冷えている方が多いです。

そういう意味では葛根湯は完全に間違っているとは言えません。

 

では、不妊症というのは体の内側が冷えてるのか?外側冷えてるのか?といえば基本的には内側が冷えているわけです。

葛根湯の薬の作用は先ほども書きましたように外側から入ってくる風邪を取り除くために飲むわけですから、内側を温めるのではなく外側を温める薬なのです。

そうすると卵巣などの内側には作用しにくいというふうに考えられます。

大棗、生姜、甘草だけなら内側に作用します。

内側に作用しないように桂枝と麻黄が入っていて、それによって外側に意図的に作用させるように処方が組まれているのです。

さらに別の視点から考えてみます。

不妊症の原因となる部分は主に卵巣・子宮ですので、これらは身体の下の方にあるわけです。

そのため下に作用するような漢方薬が有用なわけです。

それに対して葛根湯はどこに作用しやすいかと言うと上の方に作用しやすいのです。

なぜなら、風邪の症状というのは基本的に体の上部に症状が出やすいのです。

特に葛根湯が効くような風邪の症状というのは、頭痛や悪寒、くしゃみ、鼻水、熱 、肩から首にかけてのこわばりを感などが主な症状です。

つまり下半身には症状はほとんど出ないのです。

不妊症イメージ

ということはどういうことかというとか半身にはあまり作用せず、上の方に集中して作用するように処方が組まれているということなのです。

実際に葛根湯は風邪以外の時にも使うことが多いのですけれども、そのほとんどは上焦(上の方)に作用するため、体の上半身の「疾患や症状などで使うことが多いのです。

それでは最後に、葛根湯長期服用することによって出てくる可能性のある副作用について書いてみたいと思います。

葛根湯は昔から日本人によく親しまれている漢方薬ですけれども基本的に飲む期間というのは非常に短いです。

ぞくぞく来たら葛根湯と言われるように寒気を伴って首筋がゾクゾクするような 時だけに用いるものなのです。

日数にすれば2・3日服用するのが標準なわけです。

それを長期服用した場合ですけれども葛根湯には先ほど挙げたように麻黄という生薬入っています。

この麻黄という生薬は強力な咳止めの作用が実際にはあるのですけれども、その有効成分の一つであるエフェドリンというものを生成した場合、医薬品として劇薬に指定される強いものです。

この成分は強力に咳を止める作用があるということですけれども、それ以外に興奮させるような作用があります。

そのため長期服用することによって心臓に負担がかかり、動悸などが出てきたり、眠れにくくなるみたいな症状が出る可能性があります。

それ以外に麻黄そのものに胃腸障害があるのです。

そのため先ほども書きましたように大棗、生姜、甘草が入っていて胃腸を守っているわけです。

しかし長期服用していくとで大棗、生姜、甘草で胃腸を守っているのですけども、それでは十分守りきれず、胃腸障害を起こす可能性が出てくるわけです。

後は葛根湯というお薬というのは体の体力的なもの言えば、中程度の体力の人を目標に用いる漢方薬です。

日本人の多くがこの中程度の体力の人なので、比較的多くの方に親しまれているわけです。

けれども、この葛根湯を虚弱な人が飲むと汗が止まらなくなったりすることがあるので注意が必要です。

そのため、もしこのような副作用が出たと思われたら直ちにやめたほうがいいと思います。

どちらにしろ可能性として葛根湯というのは不妊症の治療には向かない可能性が高いのではないかという風に思います。