不妊治療(不妊症)にはまことしやかにささやかれている都市伝説のような話がいくつもあります。
今日はその中でも不妊症とコーヒーについて書いてみたいと思います。
この話は病院などでは決して話題にならないものなのです。
けれども、不妊症の患者さん同士でよくこのような話をしているみたいで、うちの薬局でも不妊症の患者さんからコーヒーは飲んでいいですか?というような質問されたり、こちらからは何も聞いていないのに私は コーヒーを飲まないように気をつけています、というような話をされます。
どうしてコーヒーが不妊症の原因となるというような話が広まったのでしょう?
おそらくそれにはコーヒーの漢方的な解釈を上辺だけしか理解できていないことが要因なのだと思います。
まず結論から言います。
コーヒーは不妊症には影響しないと思います。
動物を使った実験レベルでは違う結果が出ていることは知っています。
これは理論ではなく私の経験的なものです。コーヒーを飲んで妊娠率が下がったというような感覚は全くありません。
そしておそらくそれは事実であり、コーヒーを飲む・飲まないは妊娠率に大きく影響しないと言えるます。
これからコーヒーと妊娠率について少しお話ししていきたいと思います。
まずコーヒーのざっくりとした漢方的な解釈というものについて説明したいと思います。
まずコーヒーの味ですけれども、これは苦いですよね。
これがおそらくコーヒーが不妊症に影響するという風に考えられるようなった一つの大きな理由なのではないかと思います。
漢方では苦いものは 冷やすという風に考えるのです。
苦→寒という考え方です。
この考え方そのものは間違ってないのです。
そして不妊症の方は多くの場合冷えている方が多いので冷やすのは良くないです。
じゃあ冷やすコーヒーは良くないよね!!という結論になったのではないかと思うのです。
けれどもここに誤りがあるのです。
漢方では寒という意味合いには何通りかの意味があるのです。
寒(冷やす)で一般的に浸透しているのが(寒)が冷やすという意味だという理論です。
それ以外に寒(冷やす)の意味合いには鎮静させるという意味もあるのです。
そこで再びコーヒーについて考えてみたいと思います。
コーヒーってどんな時に飲みますか?
コーヒーに関連する言葉でよく知られているものにコーヒーブレイクという言葉がありますよね。
これはコーヒーを飲んで休息するという意味ですけれども、何のために休息するのかというと、オーバーヒートした頭を鎮静させるためにコーヒーブレイクをとっているわけです。
つまりコーヒーの苦さというのは頭の興奮を鎮静させるという意味で用いられているわけです。
これが冷やすという意味なのです。
もちろん苦味には他の意味合いもなくはないですけれどもコーヒーの苦さの意味合いとしてはこれがが強いように思います。
実際、ホットコーヒーを飲まれて寒いと感じる方はおられないと思うんですよね。
もし実感として冷えるのであれば冷え性の人は多分飲んでないと思います。
ということでコーヒーの苦いは身体を冷やすというよりもむしろ頭を鎮静させるという働きがあるというふうに考えてもらった方がいいと思うのです。
ここに大きな誤解があったわけです。
それでもまだ信じられないというあなた!!
もう少し理論的に説明してみたいと思います。
もしコーヒーが不妊の原因となるのであれば、コーヒーをたくさん摂取している国の女性は妊娠率が低くなるはずですよね。
そこで現在出ている統計的な資料を見て考えてみたいと思います。
その資料はどこでも手に入るようなものの方がいいと思いますのでネットですぐに検索できる資料を見て考えてみましょう!!
まずネットで”コーヒー摂取量 国別 ”というキーワードで検索をしてみてください。
そうすると「世界のコーヒー消費量を図解」一番たくさん飲む国と日本との差はというサイトが出てきます。
そこをクリックしてみてください。
そうするとどこの国が一番摂取しているか一目瞭然でわかります。
ここには何年度データが正確には書いていないですけれども、2012年にこのページがアップされているのでそれより少し前のデータであろうという風に思われます。
ではここに書かれているデータを見ていきます。
一人当たりの年間は杯数(コーヒーを飲んだ量)というものが書かれているわけです。
コーヒー摂取量が一番多いのはルクセンブルクで一年間あたり2844杯です。
次にフィンランドが1212杯、デンマークが946杯という風についています。
後は4番以降はノルウェー、スイス、スウェーデン、ドイツ、オーストリア、カナダ、スロベニア、ブラジル、イタリア、フランス、イギリス、キプロス、ベルギー、オランダ、エストニア、スペイン、アメリカと続きます。
コーヒーをたくさん飲んでるイメージのあるアメリカでも実は20位なんですね。
あとコーヒーのイメージが強いイギリスなども14位で533杯です。
さて日本ですけれども、年間340杯で29位です。
さて日本と一番摂取量の多いルクセンブルクを比較すると 日本の340倍に比べてルクセンブルクは2844杯です。
つまりルクセンブルクの人は日本人と比べ8倍から9倍多く摂取しているということになります。
もしコーヒーが不妊に影響するのであれば間違いなくこのぐらいの差があればはっきりと妊娠率に影響がないとおかしいです。
では次にまたインターネットで検索をしてみてください。
これもネットで調べるとすぐに出てくるサイトです。
最初に検索をかけたのは”ルクセンブルク 妊娠率”というキーワードです。
そうするとトップページの 2行目にルクセンブルグの出生と死亡、世界ランキング国際統計格付センターというサイトが出てきます。
ここをクリックしています。
そうするといろんなデータが出てます。
その中でルクセンブルクの出生と死亡というところの出生という項目を見てみます。
そうすると女性一人が生涯に産む子供数 (who 版)によると 2012年の資料で平均1.7人という風に書いてます。
そして千人当たりの出生数は ibrd 1という数値で11.3人という風になってます。
そして初産時の母親の年齢というのは30.2歳という風になっていますこの同じ サイト上の中から日本のデータを探してみます。
そうすると 日本の出生と死亡の順位一覧というページが出てきます。
その中に同じように日本の女性一人が生涯に産む子供数(who 版)でも出ています。
これは同様に2012年ので平均1.4人という風に書いてあります。
同様に同じ人口一斉にあたりの出生数出生率 ibrd 版で見ると日本は8.2名 です。
でもひょっとすると妊娠する時の年齢が日本の方極端に高いのかもしれません。
それでえーと初産時の母親の年齢というのを見てみると30.3歳という風になっています。
つまりほぼ初産する妻の年齢も変わっていないのです。
これを比較すると コーヒーはあまり摂取していない日本とコーヒーを8倍以上余分に摂取しているルクセンブルグでは、ルクセンブルグの方がむしろ出生数、出生率が高いのです。
これから考えてもコーヒーが不妊にマイナスに影響しているとはとても考えづらいのです。
私は特にコーヒー信者でもないですし、コーヒーの会社からリベートをもらっているわけでもありません(笑)
けれども不妊治療をするにあたって極端にコーヒーを減らすということをしなくても良いのではないか?と思います。
もちろんコーヒーを飲みすぎれば精神的には何らかの影響を与えますし、胃腸障害も起こす可能性があります。
なのでたくさん飲みなさいということではないですけれども1日に一杯二杯飲んだからといって妊娠に影響することはまずないと思います。
ですからコーヒーの好きな方は我慢せず安心して飲まれれば良いのではないかと思います。
ただし、コーヒーが嫌いな人が無理してコーヒーを飲めばそれはその人にとっては不妊症の原因になりうると思います。
こういう都市伝説的な話はたくさんあります。
ただし、妊娠後のコーヒー摂取となると話は別です。
妊娠後のコーヒー(カフェイン)が流産のリスクを高めることは広く知られています。
そのため、妊娠後はコーヒー(カフェイン)はできるだけ飲まない方が良いです。