今回は妊娠体質のつくりかたの『始めに』本書P3のところに書いてある「良かれと思って始めたことが実はマイナスにはたらくこともある」の1例についてお話ししたいと思います。

以下に書いてある症例はインスタグラムにupしてある症例です。

症例そのものは一緒なのですが、途中で起きた詳細についてインスタグラムでは省略しています。

なぜかというと、インスタグラムというのは字数制限があってトータル2200字以内に収めないといけないのです。

この字数以内に収めようと頑張ったのですが、そうすると、うまく内容の本質を伝えることができなくなるため、こちらのページだけで紹介することにしました。

ぜひ読んでみてください。

症例

30代の女性の方が不妊治療のご相談に来られました。

私の本を見たご両親に勧められて来られたそうです。

この方は現在、妊活3年目でタイミング療法、そして人工受精をすでに数回されていていました。

それ以外に軽めのチョコレート嚢胞かあるそうです。

気になったのはフーナーテストを何回やっても結果が良くなかったということです。

しかし、ご主人の精液検査も問題が無く、この方にも抗精子抗体は無く、なぜフーナーテストの結果が悪いのかハッキリとした理由がわからないとのことでした。

このこともあって、来られた段階ですでに体外受精を考えておられました。

そして、体外受精の前に少しでも妊娠しやすいよう体質改善するためにご相談に来られたのです。

そこで、漢方的な体質をチェックすることにしました。

もともとの生理の期間は長め(7日以上)だけれども、生理の量は減ってきているそうです。

また、舌の裏の舌下静脈には瘀血(おけつ→血流が悪い状態)の兆候がでていました。

参考ページ:舌の状態から漢方体質がわかります(舌診と瘀血のはなし)
舌下静脈(瘀血)はこんな感じで改善していきます

ただ、ひどい感じではなく、軽めの印象を受けました。

そこで、さらに東洋医学的なチェックを行い、軽めの瘀血(おけつ)本書p89の状態に用いる漢方薬にしました。

それから、この方は漢方薬を服用しながら体外受精に向けて、不妊治療の病院にも通っておられました。

そして、体外受精を受けられる数週間前くらいに来られた際、いつも通り、東洋医学的なチェックをしたのですが、その際ちょっと変な感じを受けました。

何となく、瘀血(おけつ)を改善させる漢方薬の効きが悪くなっているのです。

こういうとき、単純にお出しした漢方薬が体質とずれてきていることも考えられるですが、新しく何か始めた事が足を引っ張る結果になっていることもあるのです。

そこで、妊活のために何か新しいことを始めていないかお伺いしました。

そうすると、お灸を始めたそうです。

それは特に鍼灸師の先生から聞いた訳ではなく、本を読んで自分で始めたそうです。

どのツボにお灸をされているかお伺いすると、補血効果のあるツボにお灸をされていたのでした。(ご本人は特に血虚に良いとか瘀血に良いとかの自覚は無く、妊活に良いと思ってツボ押しをされていたようです)

補血効果のあるツボにお灸をすると血虚(けっきょ)を改善します。

もし、血虚(けっきょ)が原因で、瘀血(おけつ)が生じているなら瘀血(おけつ)も一緒に改善するのですが、そうでない場合、補血(ほけつ)を行うと瘀血(おけつ)が生じる可能性があるのです。

※ここはわかりにくいと思いますが血虚と瘀血は真逆の側面があるのです。それは、以下の部分と本書の指定したページをチェックしてもらうと理解できると思います。
血虚タイプの基礎体温の形で多いのは本書p56の❼、p58の❾、p59の❿です。(特徴:高温期が短い、低い、途中で下がる
瘀血タイプの基礎体温の形で多いのは本書p52の❸、p55の❻、p57の❽です。(特徴:高温期が長い、高い、低温期も高い
※本書p82~p83にも血虚タイプの基礎体温、p89~p91にも瘀血タイプの基礎体温について書いていますが、ページ数の制限がありすべてのパターンは載せれていないのです。そのため、基礎体温のパターンは上記の3つずつを参考にしてください。

では話を戻しますね

一般的に女性の不妊症の原因として、血虚(けっきょ)と、瘀血(おけつ)が多いので、どうしてもツボ押しやお灸の本は血虚や、瘀血(おけつ)を改善させるツボを載せることが多いです。

しかし、患者さん自身が、瘀血(おけつ)タイプなのか血虚(けっきょ)タイプなのか、両方持っているのか?を見分けることはなかなか難しいです。

そうすると一般的なツボ押しやお灸の本で体調が改善する方もいる一方、悪化する方もおられるのです。

しかし、良かれと思ってやっていたことが、まさか自分の妊娠力を低下させるなんて考えもしないのです。

経絡理論に基づいて治療されている鍼灸師の先生で毎回同じツボだけを治療される先生は私の知っている限りおられないです。

それは、様々な要因で患者さんの体調が日々変化して行くことと、鍼灸治療を行うことで患者さんの体質が変化していくことなどがあるからです。

そのため、本を読んで自分の今の体質に合っているかどうかわからない同じツボに毎日刺激を与え続けることを私はあまり、おすすめしません。

それよりも、本当に身体を良くしたいのであれば、自分でツボを押す(お灸をする)努力をするより、安心して身体をあずけれる先生を見つける努力(本当に腕のよい先生の情報を集める努力)をした方が良いと思います。

話はずいぶん脱線してしまいましたが、この患者さんは以降、ツボ押しは止められました。

このツボ押しによって一旦瘀血の漢方薬をさらに追加しましたが、2週間後には元の種類と量に戻すことができました。

そして、体外受精に伴う採卵の結果、20個以上採卵することができました。

この方のAMHは2の後半位(2.〇〇)なので、結果としてはAMHから推測される採卵数の約2倍採卵できたことになります。

そして、最終的には10個以上の卵胞を凍結できました。

結果としてはまずまずだったと思います。

そして、1回目の胚移植で妊娠されたのです。

まとめ

今回は「良かれと思って始めたことが実はマイナスにはたらくこともある」ついて症例を通してお話ししてきました。

この話はもともと軽度な瘀血が不妊の原因となっていた患者さんに瘀血の治療の漢方薬を出していたのに、患者さんが体外受精の前に少しでも身体を良くしようと始めたツボ押しが結果として瘀血を作り出す結果となり、漢方治療のやろうとしていることと真逆の事をしていたということです。

ただし、かなり早い時点で気づいたので大きな問題は生じませんでした。

しかし、もし気づかなければ『こんなにいろいろ努力しているのになかなか妊娠できない』という負のスパイラルに入っていた可能性もあるのです。

実際、このようなことは日常、不妊治療に関わっていると本当に良く遭遇します。

ではどうしてこのようなことが良く来てしまうのか?

それは、『妊活(不妊治療)に良いという』ものや方法に出会った時、誰に(どんな体質のひとに)どのように(どういう意味で(働きで)良いのかをチェックする癖がないからです。

本書の中でも、何度か書いていますが、まず自分(自分の体質)を知ること、自分が興味のある妊活サプリや妊活法に出会ったとき、そのサプリや妊活法がどんな作用(働き)をするから妊活に良いのか?、それは自分の体質に合っているのか?(自分の現在の体質の問題点を改善してくれるものなのか?)をチェックすることが大事なのです。

そこをちゃんと確認せず、そのサプリや妊活法をなんとなく良さそうという理由で始めてしまうと、無駄な費用や時間を費やすことになったり、場合によってはマイナスに働くこともあるのでくれぐれも気を付けてください。

この点を踏まえ次回は漢方理論の大原則からどういう点に注意すれば、妊活に関して新しいこと取り入れる際に失敗しないのか?について書いてみたいと思います。