体質改善に効果があるといわれている漢方薬。正しい飲み方をすれば効果も高まりやすくなります。一方で、飲み方を間違ってしまうと体質改善の効果が出にくくなることもあるのです。そのため、今回は漢方薬の正しい飲み方や飲む際の注意点などについてお話したいと思います。

漢方薬服用の基本

漢方薬は食間服用が基本

漢方薬は、基本食間服用です。食間とは食事と食事の間の時間帯のことです。ではなぜ漢方薬は食間に服用するのでしょう?食間というのは普通空腹ですよね?
漢方薬の場合、食間(空腹)服用の方が吸収率が高まるからなのです。
でも、多くの方は『お薬は食後服用』というイメージが強いと思います。これは病院で出されるお薬の多くが食後服用だからです。
では、病院で出されるお薬の多くが食後服用なのはなぜなのでしょう?

病院で出されるお薬が食後服用なのはなぜ?

それは大きく2つの意味があります。
1つは、お薬そのものに胃腸障害を起こす可能性があり、食事と一緒に服用することで胃腸障害を緩和させる目的があるためです。
もう1つは、食事(食べ物)と一緒に服用することで薬の吸収率を高めるためです。
病院で出されるお薬は油溶性のものが多いのです。食事(食べ物)の中の油脂と油溶性のお薬が混ざることでお薬の吸収率を高める目的があるのです。

漢方薬局ハーブスでは食前服用をお勧めすることが多い

最初に書きましたが漢方薬は基本食間に服用するのが一般的ですが、漢方薬局ハーブスでは多くの方に食前服用をお勧めしています。
それはなぜかというと、食間に服用していただくと多くの方が飲み忘れてしまうからです。特に仕事をされている方は飲み忘れが多くなります。
飲み忘れが多くなると身体の中にある漢方薬の血中濃度が下がります。漢方薬の血中濃度が下がると、体内での持続的な改善作用が低下します。つまり体質改善がうまくいきにくくなるのです。
そのため、空腹でなおかつ飲み忘れの少ない(食事と薬の服用が記憶に引っ掛かりやすいため)食前に服用していただくことが多いのです。

漢方薬の服用回数は基本1日3回

それでは次に、漢方薬の服用回数についてお話しします。
漢方薬の服用回数は基本的に3回です。それはなぜかというと、お薬の血中濃度を一定に保つためです。漢方薬に関わらずお薬というのは身体の中で一定の濃度(有効域)のものが持続的に作用する必要があります。
特に体質改善を目指すためには、比較的長期間同じ漢方薬を持続的に服用して、その成分が身体の中で常に作用する状態を作らなければ体質は改善していきません。そのため、どこのメーカーの漢方薬も1日量は3包化されているのが一般的です。
ここにも体質改善する際の注意点が存在します。
病院で出されるお薬の中には1日に1回で良いものや、ものによっては週に1回で良いものも存在します。
これらは徐放錠や徐放性製剤といわれるもので、特殊な技術を使って徐々に有効成分が解け出るように処方設計されているものなのです。
漢方薬にはそのような技術は用いられていません。そのため、通常3回飲むべき漢方薬を1回とか2回などにしてしまうと漢方薬の血中濃度が維持できず、体質改善がうまくできなくなるのです。

漢方薬の剤型と正しい飲み方

漢方薬にも様々な剤形が存在します。漢方薬がその剤形になったのには意味があり、その意味を理解しておくと服用の際に漢方薬の効能が発揮されやすくなったり、薬の副作用を出にくくするようにする対処方法もわかります。そのため、ここでは漢方薬の剤形の代表的なものとその飲み方についてお話ししたいと思います。

〇〇湯という漢方薬はもともとは煎じ薬由来

みなさんは漢方薬で〇〇湯というお薬の名前を聞いたことがありますでしょうか?
比較的身近なものだと風邪の引き始めに用いる葛根湯、花粉症やアレルギー鼻炎に用いる小青竜湯などは病院でも比較的良く出されるメジャーな処方です。
これらは語尾に〇〇湯というお湯の文字が入りますよね。これは煮だしてお湯の状態で飲む場合が多いことからこの名前がついているのです。そのため、基本的には温かい状態で服用する方が効きが良いものが多いのです。
現在、漢方薬を服用されている方でも煎じ薬で服用されている方は少ないと思います。多くの方はツムラなどの粉薬を利用されている方が多いのではないでしょうか。
ではそういう方はどのように服用すればよいのでしょうか?
これはやはり、やけどしない程度のお湯の状態で服用された方がより効きが良くなると思います。特に高麗人参の入った漢方薬はお湯で服用することで効能が高まると言われています。
そのため、高麗人参を含んだ漢方薬は熱いお湯に溶かしてフーフーしながら服用される方がより効きが良くなるのです。

〇〇丸というお薬は丸剤といってお薬をハチミツで練って丸めたもの

〇〇丸という名前の漢方薬をご存じでしょうか?これだけを書かれてもピンとこない方もおられるかもしれません。
しかし、不妊治療や婦人科の病気で漢方治療を受けられたことのある方は桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、前立腺肥大(夜間頻尿)で悩まれたことのある方だと八味地黄丸(はちみじおうがん)などの漢方薬の名前を聞いたことがあるかもしれません。
これらの漢方薬は原料となる生薬を蜂蜜で練って丸めたものなのです。そして、この蜂蜜の効能は胃腸障害を予防する効果があるのです。つまり丸剤になる前の漢方薬は胃腸障害を起こしやすい傾向があるのです。
そのため、これらの漢方薬を服用されて胃がもたれるとか、食欲が減ってきた場合などは、この〇〇丸という漢方薬が胃腸に影響している可能性があります。
そのような場合は、ご相談orご購入されている薬局or薬店でご相談いただくことが一番なのですが、当面の方法として食後服用に変更してみるというやり方もあります。
食後服用にすると漢方薬の効きがマイルドになりますが、その分、薬の副作用もマイルドになるのです。
それから、これら桂枝茯苓丸や八味地黄丸というお薬は、ツムラ、コタロー、クラシエなど病院で出される漢方薬の中にもあります。しかし病院で出されるものは丸剤ではなく、顆粒の粉薬です。
これは本来丸剤で出されるものを煮出して成分を抽出してそれを顆粒状にしたものです。このような本来丸剤だったものを煎じ薬に変えたものを〇〇丸料と言います。先ほどの桂枝茯苓丸や八味地黄丸を例に挙げると桂枝茯苓丸料、八味地黄丸料という名前になっています。
このようなものは丸剤を煎じ薬で作ったため、本来入っていた蜂蜜が入っていません。そのため丸剤よりも胃腸障害が出やすい可能性があります。そういった場合はその粉薬をハチミツを加えたお湯で服用されると副作用が出にくくなります。

〇〇散は入っている生薬を細かく粉砕したもの

次に漢方薬には〇〇散と呼ばれるような漢方薬があります。
これはその漢方薬の中に入っている生薬をすべて細かく粉砕したものです。代表的なものだと、婦人科なら当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や加味逍遙散(かみしょうようさん)、市販されているもので有名なものは龍角散(りゅうかくさん)です。
これらはかなり微細な粉末なので、上手にのまないと細かい粉粒子が気管等に入って粉を吹き出したり、むせて咳き込んだりしやすいです。
そのため、これらを飲む際にはあらかじめ口の中に水or白湯(さゆ)を含んで、その後、粉薬を含んでくちゅくちゅと口の中で混ぜ合わせてから一気に飲み込むとこのような誤飲を防ぐことができます。
※オブラートに包んで服用されても問題ありません

上記以外で漢方薬を服用する際の注意点

漢方薬の正しい飲み方について、ご理解いただけましたでしょうか。実は漢方薬には他にも、飲み方や飲む際に注意していただきたいことがあります。
ここからはその詳しい内容についてご紹介いたします。

お茶・牛乳・ジュースではできるだけ飲まない

漢方薬は飲みにくいものでも、お茶や牛乳・ジュースではなく、できるだけ水か白湯で飲むようにするのがお勧めです。
私個人の意見を言わせてもらえば、合っている漢方薬というのはまずいなりに飲めるものです。アトピーなどで乳幼児のお子さんも漢方薬を飲まれるケースはありますが、ほとんどの方はお水で飲ませたりしても飲んでおられます。飲まない場合は、漢方薬が合っていない時や、もともと肝の虫があるようなデリケートなタイプのお子さんだったりします。それはそれでひとつの情報なので、私の薬局に来られるお子さんは、最初出来るだけお水や白湯で飲んでいただくようにしています。
もし漢方薬が合っていなくて牛乳やジュースで服用された場合、最初は抵抗なく服用されても、だんだん拒絶されるようになり、最終的にジュースや牛乳を嫌がるようになるケースも稀にあるそうです。(私の薬局ではそうなる前に漢方薬の変更を行うので経験していませんが、他の薬局ではそういうケースもあるようです)
また、お茶に関してですが、知らない方も多いのですが、お茶はそもそも漢方薬(正確には漢方薬を構成する生薬)のひとつなのです。
そのため、お茶と一緒に漢方薬を服用すると、本来の漢方薬の働きが出ずらくなることが多いのです。なので基本的に漢方薬をお茶で服用されるのは避けるようにしてください。

他の漢方薬と一緒に飲む場合には必ず専門家に相談を

複数の漢方薬を同時に服用することにより、それぞれの漢方薬に含まれる「生薬(しょうやく)」のバランスが崩れてしまうことがあります。適切な効果を発揮することができない場合があり、お勧めできません。他の漢方薬と一緒に飲む場合には、専門家に相談の上併用するようにして下さい。
また、漢方薬ではありませんが、ハーブティーもハーブ(薬草)の種類によっては、漢方薬の効能に大きく影響してしまうことがありますので、漢方薬を服用している間はハーブティーを飲まない、または処方の際にどんなハーブティーを飲んでいるのかを専門家に伝えるようにしてください。
「漢方薬とハーブに飲み合わせがあることをご存知ですか?」の記事はこちら

まとめ:正しい飲み方が効果的な症状・体質の改善につながります!

自分の体質に合った漢方薬には体質改善や特定の症状を改善してくれる効果があります。しかし「正しい飲み方」で服用しないと思ったような効果が出にくくなることがあります。
今回ご紹介した飲み方のポイントや注意点は漢方薬を上手に効かせるコツでもあるのです。そのため、ぜひしっかり守っていただきなら、漢方薬を活用していただければと思います。
漢方薬局ハーブスでは、漢方薬剤師として20年の実績をもつ漢方の専門家が患者様のご相談をお受けします。処方の際には漢方薬の正しい飲み方や注意点も一緒にご説明させていただきますので、漢方薬を飲むのが初めての方も安心してお気軽にご相談ください。