腎機能が随分前に私の薬局で不妊治療されて妊娠された患者さんが久しぶりにご相談に来られました。
本当にひさしぶりだったのです約
私は結構忘れっぽい方で、しかも10年以上経過しているので通常であれば忘れていることも多いのですが、この患者さんの不妊治療で、体質に合う漢方薬が本当に見つけられず、数年にわたって苦労したので、しっかり覚えていました。
そこで、今回ご相談に来られた内容をお伺いすると・・・
会社の健康診断で腎機能の数値が引っかかったということで気になってご相談に来られたということでした。
そこで、健康診断の結果を見せてもらうと・・・
ほとんどがA判定です。基本健康なんだと思います。
その中で腎機能がB判定でした。
普通の人なら気にならないかもしれませんが、ほとんどがA判定のこの方にとっては腎機能のB判定は気になるのだと思います。
その腎機能の数値で悪かったのはクレアチニンでした。
eGFRという腎臓のろ過機能を調べる指標は正常でした。
そのため、腎臓がものすごく悪くなっているわけではないという印象でしたが、ご本人の希望なので、この患者さんに合う漢方薬を探してみることにしました。
最初に合っていると思ったのは腎臓の機能の軽度な機能低下の際に用いるものでした。
それを数週間服用していただいた後に、疲れやすく浮腫みやすいような体質の方に用いるような漢方薬が合っている気がしました。
それを2~3週間間隔でチェックしながらお出ししたのですが、約4か月後にこの漢方薬が合わなくなってきました。
そこで、改めてこの患者さんに合う漢方薬を探したのですが、なかなか合う漢方薬が見つけられません。
以前の不妊治療の二の舞になるか?と一瞬不安が頭をよぎりましたが、さすがにあの頃の自分よりも漢方の知識も経験も積んでいます。
こういう時に大事なのは、もう一回カルテを読み返すことと、基本的なところに戻ることです。
そこで、カルテを再び読み返し、過去に学んだ腎臓疾患と漢方薬について読み返し、それと
関連する項目も読み返し、しているうちに、この患者さんの腎臓の漢方治療のヒントが思いつきました。
そういえば、この方妊娠して、出産しているのです。
妊娠すると妊娠時高血圧症になったり、妊娠腎といって腎臓を傷めたりするケースがあるのです。
この時、痛めた問題が後々引きずることがあるのです。
そこで改めて、それを踏まえてこの患者さんの状態をチェックしてみると・・・
やっぱりその可能性が高いと感じました。
漢方薬は単純な腎臓を良くする漢方薬ではなく、妊娠腎に用いる漢方薬が合っているように思われました。
そこで、その漢方薬をとりあえず2週間お出しして様子をみることにしました。
そして2週間後来られて、再度身体の状態を東洋医学的にチェックしてみると・・・
やっぱり合っていました。
そこから、大体2週間間隔でご相談に来られたのですが、ここから漢方薬を変更することはありませんでした。
そのため、途中から患者さんのご希望で1ヵ月間隔でご相談に来られるようになったのです。
そして漢方治療を始めてから約1年経過した頃に、再び健康診断を受けられてその結果は・・・
正常値になっていました。
ただ・・・感覚的にですが、今漢方治療を止めてしまうと元に戻ってしまう気がしたので、継続して服用していただくことにしました。
そして、引き続き1ヵ月間隔でご相談に来られたのです。
その都度、東洋医学的に腎機能の改善の度合いをチェックしているのですが・・・どうもこの患者さんの改善のペースが他の方に比べ極端に遅いのです。
最初は気にならなかったのですが、思った以上に体質改善のスピードが上がらないので、不思議に思うようになりました。そこで改めて患者さんに日ごろの生活をチェックしてみました。
良くあるのが身体に良いと思って始めたサプリメントや健康法が身体に合っていなくてむしろ足を引っ張っているというケースです。
しかし、この患者さんは特にそのようなことはやられていませんでした。
そこで、気のせいか?と思ってまた1ヵ月間隔でお薬を出ししたのですが、やっぱり改善のケースが遅いのです。
そこで再度、過去に患者さんでこういうものが足を引っ張っていたことがあるというものを片っ端から挙げてチェックしてもらったところ、患者さんが一つ可能性のあるものを挙げてくれました。
それは浄水器です。
患者さんは浄水器を付けていることも忘れていたみたいですが、結構高性能なものみたいでした。
浄水器の機能が高いと、有毒な成分を除去したりもしますが、微量ミネラルも一部過剰に除去する可能性もあるのです。
そこで、試しに浄水器を通さず、普通の水道水で生活してもらうようにお願いしました。
それから1ヵ月後、再び来られた際に身体の状態をチェックすると・・・
他の人と比べると若干改善のペースは遅い気がしますが、今までと比べると明らかに改善のペースがアップしています。
やっぱりこれが大きな原因の一つだったのだと思います。
これ以降は順調に改善してやっと体質改善が終了し、卒業となりました。
気が付けば、2年弱経過していました。
バッチリあった漢方薬を出すことも大事ですが、正しい養生法を指導することも大事だな、と改めて思いました。
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