基礎体温がガクっと下がらないでゆっくり下がるときに考えられる3つの事と対策について書いています。
本来、生理後の基礎体温はガクッと下がるのが普通です。
通常は1日で下がるべきですし、長くても2日では下がらないとおかしいと思います。
しかし、そうなっていない方は一定数おられます。
それは、自然に生じるものと、人為的に生じるものがって、自然に生じたものに関しては対処する必要があります。
ここでは長年、基礎体温をベースに不妊治療を行ってきた私の経験に基づいて書いていますので一読されることをおすすめします。
基礎体温の下がり方と女性ホルモンの関係について
どうして基礎体温がカクッと下がらずにゆっくり下がるのか理解するために、まずは基礎体温の下がり方と女性ホルモンの関係について説明します。
これは女性ホルモンの働きが大きく関わっています。
基礎体温で高温期の状態といいうのはホルモンの分泌で言えば黄体ホルモン(プロゲステロン:P4)が活発に分泌されている時期です。
そしてこの時期にもし排卵された卵が精子と受精し、受精卵になった状態であれば、子宮で着床するわけです。
この着床という現象が丁度、黄体ホルモン(プロゲステロン:P4)の分泌を維持するスイッチの役割を果たすわけです。
つまり子宮内膜の厚みも維持されて、高温期も維持されるわけです。
つまりそれを妊娠と呼んでいるわけです。
しかし、着床というスイッチが押されなければ、卵巣内の黄体は高濃度に黄体ホルモン(プロゲステロン:P4)を分泌することを止めてしまいます。
黄体ホルモン(プロゲステロン:P4)の分泌は子宮内膜の厚みを維持する働きがありますので、その分泌が低下すると内膜の状態を維持することができず、内膜が剥がれ落ちて生理が起こるのです。
また黄体ホルモン(プロゲステロン:P4)には体温を高温に保つ働きがあるので、黄体ホルモン(プロゲステロン:P4)の分泌が減ると体温は下がるわけです。
黄体ホルモンの働き
- 基礎体温を高いまま維持する
- 子宮内膜を厚いまま維持する
つまり生理なのに基礎体温がカクッと下がらず、ゆっくり下がるというのは西洋医学的に考えると生理の時期になってもこの黄体ホルモンの濃度が高い可能性があるわけです。
そのような状態になる可能性は西洋医学的には2つ考えられます。
黄体ホルモンを内服している(膣坐剤を使っている)
不妊治療でホルモン補充療法などを行っている方の場合、ルトラールなどの黄体ホルモンの内服やウトロゲスタンなどの膣坐剤を膣に挿入すると、血中の黄体ホルモン(プロゲステロン)の濃度が上昇します。
そうすると、自然な状態に比べ、基礎体温は高くなる傾向があります。
そして生理が来た際にも、徐々に基礎体温が下がることがよくあります。
対処法
対処法は特にありません。
黄体ホルモン剤を止めるとすぐに基礎体温が元にもどる方もおられますが、
年単位で見たら元に徐々に戻ってくるケースが多いように思います。
ただ、このような基礎体温だからといって妊娠しないということはありません。
ゴナドトロピン製剤を使っている
ゴナドトロピンとは性腺刺激ホルモンのことでFSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体形成ホルモン)の2つの総称です。
このゴナドトロピンを製剤化したものの1つにHCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)があります。
これは不妊治療の黄体形成ホルモンの目的で排卵を促すためや高温期を維持する目的で注射剤で用いられるのです。
これを注射すると黄体を刺激して黄体ホルモンの分泌を促すため、結果として高温期を維持することになるのです。
この効果が残っている場合には黄体ホルモンの分泌も通常より多いため、基礎体温がガクっと下がらず、ゆっくり下がることがあります。
対処法
特別な対処方法はありません。
ホルモン補充療法の効果が切れてくると元に戻るケースもありますが、元に戻るのに1年以上要する場合もあります。
しかしこの状態だから妊娠しないということはありません。
ホルモン補充療法を受けていないのにカクッと下がらず、ゆっくり下がるとき
西洋医学的には説明が難しくなります。
しかし漢方的には説明がつきますし対処法もあります。
これは漢方的には瘀血の状態です。
瘀血とは血液の流れが滞っている状態です。
昔はドロドロ血とも言われていましたが、必ずしもドロドロではないことが多いです。
しかもこの瘀血はただの瘀血ではありません。
多くの場合加齢(年齢)に伴って出てきた血液の滞りが原因になっていることが多いのです。
その事実をわかっている漢方薬局は非常に少ないですし、その状態に合う漢方薬を調合できる技術を持つ漢方薬局は全国的に見ても非常に限られると思います。
対処法
血液の流れの滞りをとるような漢方薬の服用や養生法(生活上で気を付けること)を行うのが原則です。
漢方薬
先ほども書きましたが、原則は血流をよくする漢方薬を用いるの一般的です。
ただし、血流をよくする漢方薬ならどれでもいいかといえば違います。
この場合は加齢(年齢)に伴って生じた血液の滞りを改善する漢方薬を用いないと効果はありません。
もし合わない漢方薬を飲みすぎると、高温期が低くなったり、短くなったりして妊娠しづらくなります。
そのため、正確に合わせてゆくことが重要になります。
養生法
これはあくまで補助的なものです。
これだけで改善するものではありません。
しかし、これを行えば早めに改善が起こるというものです。
- ウォーキング(20分/日、週3回以上)
- お風呂(湯船につかる:毎日)
- 野菜(特に緑の濃い葉物野菜))を食べる。(生で食べる必要はない)
まずはできることを確実にこなし継続することが重要です。
さらに詳しく知りたい方は➡瘀血と基礎体温
まとめ
基礎体温がガクっと下がらないでゆっくり下がるときに考えられることと対策について書きました。
通常考えられるのは上記の3つですが、上記したものに該当しないケースも当然あります。
そのような場合は個々での対応が必要になります。
上記に該当しなくて不安に思っておられる方はご相談ください。