少し遠方から不妊治療の患者さんが来られました。

この方は2年半前から不妊治療を始められて、途中で転院をされて、トータル体外受精を3回されています。
しかし思うような結果が出ず、今はタイミング療法を行っているそうなのです。

この患者さん、病院での不妊症の原因として、大きな問題は言われていませんけれども、卵管閉塞が片方にあるということでした。

ただ、患者さんご自身としては、何回も体外受精も失敗しているため、卵の質に問題があるのではないかと思っているそうです。

まず、卵管閉塞についてですが、根本的な部分では、免疫力が関わってることが多いと、私は考えています。

そのため、卵管閉塞の治療する際は免疫力を上げるような漢方薬を用いることが多いのです。

そこでまず、卵管をチェックするツボと不妊症チェックするツボを使って、今のこの患者さんの状態をチェックしてました。

そうすると、やはり卵管閉塞の問題はありそうです。

そして問診をしていくと、汗をかきやすく疲れやすいなどの症状があります。

このような症状がある方は免疫力が低いことが多いのです。

そこで実際、私が卵管閉塞に用いる漢方薬が合うかどうかをチェックしてみると・・・合いそうな感じです。

次に卵の質についてですけれども漢方理論では卵の質そのものを改善するというものはありません。

しかし、実際に漢方を服用していただくと、採卵できる卵の数が増えたり、受精率が上がったり、胚盤胞まで分裂が進む卵の数が増えたり、受精卵のグレードが上がったりすることはよくあることなのです。

それがなぜなのかと言うと、患者さんの身体を良くするからなのです。

どうしても病院で高度な不妊治療を受けていくと、患者さんは卵胞とか女性ホルモンの値とか身体の細かい部分に目が行きがちになります。

東洋医学では身体は一つのものと考えます。

当たり前ですが、卵巣だけで生きている人はいないですよね。

卵巣は身体の一部であり、そこだけで独立して存在することはできないのです。

つまり、卵巣は身体全体の影響を常に受けているのです。

そのため、身体全体の状態が良くなれば、当然、身体の一部である卵巣の働きも良くなります。

卵巣の働きが良くなればその中にある卵胞の働きも良くなります。

卵胞の働きが良くなればその中にある卵の状態も良くなるのです。

つまり、その患者さんの身体のコンディションを良くすることは妊娠しやすい体作りになったり、卵の質を上げることにつながるのです。

この考え方がベースにあって、その患者さんの身体を良くする効果が卵巣まで届くような漢方薬をチョイスするのです。

そのために、不妊症のツボでその個々の患者さんの不妊症の原因を探して、その原因を改善する漢方薬を探してゆくのです。

その基準となるのが、患者さんに行う問診や舌診(舌の表と裏の状態のチェック)と基礎体温なのです。

具体的な例を挙げると、この患者さんは疲れやすいという症状があるので漢方的には気虚(エネルギー不足)がベースにあると考えられます。

この気虚が不妊症の原因になっている場合、基礎体温の高温期は低めになりがちです。

そして、この患者さんの最近の基礎体温をチェックすると、予想どおり、基礎体温の高温期が途中で下がったりしています。

8月漢方服用前の基礎体温(気虚)

漢方薬を服用する前の9月の基礎体温(気虚)

それが漢方薬を服用し始めてから、高温期の高さが維持されるようになりました。

気虚に対する漢方薬を服用後の10月の基礎体温

このように基礎体温が変化するの時には漢方薬はおおよそ合っていることが多いのです。

ただ、実際に不妊症のツボでチェックすると若干、薬がずれている気がしたので、今回は修正を加えましたが、ベースの漢方薬は合っていると思いました。

このように良い基礎体温の状態が続いてゆけば、卵の質もいずれ良い方向に変わってくることが多いのです。