チョコレート嚢胞多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)早発閉経というのは、共通して排卵障害を起こす疾患ですけれども、その原因は全く真逆です。

チョコレート嚢胞や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)というのは卵巣内に卵はたくさんあるけれども排卵ができないという排卵障害です。
一方早発閉経というのは卵巣内に卵はなくなってしまったために起こる排卵障害です。

この卵巣内に卵が残っているかどうかというのはAMH(抗ミュラー管ホルモン:卵巣年齢)の値で間接的に知ることができます。

特に多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)はこのAMHの値が異常に高いのです。

一方、早発閉経の方はこのAMHの値が1を切って限りなくゼロに近い数値になっているのです。

チョコレート嚢胞というのはどうなのかと言うと多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を生じる原因となることが多いのです。

つまりチョコレート嚢胞になると一つは卵巣が硬くなってしまい排卵しづらくなるというのと卵巣周辺に癒着を生じて排卵を抑制してしまうのです。
このような排卵障害を起こしてしまうことによって卵巣内にたくさんの卵胞が残ってしまい、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)となることがあるのです。

漢方薬局ハーブスイメージ

この多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と早発閉経の卵胞の残卵数で考えると、真逆の状態なのですけれども、うちの患者さんの中にはこの二つの病気になった方がおられるのです。

一見それは、とても稀なことに思えるのですが、実際によくよく話を聞いてみるとこれは稀なことではないかもしれないな、と思ったので、あえてここでお話ししておきたいと思います。

ここの話に出てくる患者さんは早発閉経だったのですが、見事に妊娠・出産された患者さんです。

もともとこの患者さんというのは、チョコレート嚢胞と多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を併発している患者さんでした。
そのため排卵障害はあるもの残卵数はたくさんあったわけです。

そして、その当時通っていた産婦人科の病院で、ずっと診てもらっていたのですが、左の卵巣にチョコレート嚢胞と多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、それにさらに卵巣に水が溜まっていると言われて左側の卵巣を全摘出したのです。

それから2年後、残っていた右側の方にチョコレート嚢胞が再発したのです。
その時はチョコレート嚢胞部分がまだ3cmだったということで、さすがに全摘出ではなく部分摘出となったのです。

しかし、その担当された先生はチョコレート嚢胞をきれいに取り除くことを主眼に、摘出手術をされたそうなのです。
それ以降チョコレート嚢胞は確かに再発しなかったのですけれども、卵巣のかなりの部分を摘出したため、一気に早発閉経となってしまったのです。

そして、実は、過このような理由で早発閉経となってしまった患者さんを私は過去にもう一人みたことがあるのです。

チョコレート嚢胞(子宮内膜症)は低用量ピルなどの生理を止める薬を長期間服用すれば再発率は非常に低いのですが、妊娠をも望んでいる方にはこの治療を行うことはできません。

そうすると5年も経過するとチョコレート嚢胞の再発率は約50%ぐらいになるのです。

この再発率50%に驚かれる方もおられると思うのですが、ここで重要になるのは病気の再発率ではなく、再発した際のチョコ

レート嚢胞を処置する先生の意識の持ち様だと私は思うのです。

妊娠希望で、チョコレート嚢胞が再発した場合、通常、薬剤による治療はできません。(薬剤による治療は基本、生理を止める治療なので妊娠出来なくなるからです)

排卵障害イメージ

そのため、チョコレート嚢胞を取り除こうとすると手術しか選択肢がないのです。

チョコレート嚢胞を取り除くことを主眼において処置するか?それとも妊娠を主眼において処置するか?

ここの意識の持ち用で患者さんのその後の状況が変わってくる可能性が高いのです。

チョコレート嚢胞の手術に関してIVFクリニックの先生が出されている論文の中にことのこの事に関して説明している箇所があります。

興味がある方は詳しく読んでみてください。

この論文で書かれている内容の中のポイントの1つが、チョコレート嚢胞の手術をした場合、妊娠率が上がらない事があるということです。

多くの文献では、子宮内膜症の手術をすると、術後の妊娠率は高くなるという論文が圧倒的に多いのですが、実際には妊娠率が下がるケースがあるというのです。

それはどうしてか?と言うと、チョコレート嚢胞以外の卵巣の部分を多くて切除してしまうと、卵巣内にあった卵胞も一緒に切除してしまうため、残りの残卵数が少なくなってしまうのです。

つまりAMH(卵巣年齢)の値が下がってしまうのです。

そうすると、体外受精などを行っても採卵できる数が非常に限られてくるそのため、結果として妊娠率が下がってくるということなのです。

そこで重要になってくるのは、チョコレート嚢胞の手術をする先生の意識と技術ということになります。

極力卵巣の中の卵胞を保存しながら、チョコレート嚢胞の病巣をできるだけ多く取り除くという意識とそれを実現する技術が求められるのです。

少なくともこの手術に対して注意深くやろうという意識が何より重要になってくると思います。

そのためチョコレート嚢胞があるからなんとなく手術をして取り除こうというのは後々を考えるとマイナスになることがあるということです。

チョコレート嚢胞の手術をしなければならないことはあるかもしれませんが、もし、それをされる際、病院選びは慎重にされた方が良いということです。

また、子宮内膜症の手術をして妊娠率が上がるケースというのは自然妊娠のケースであって、体外受精の場合は、チョコレート嚢胞の手術をしたから必ずしも妊娠率が上がるわけではないのです。

そのため、もし高度な不妊治療(体外受精)など受けても良いという気持ちがあるのであれば、チョコレート嚢胞などの手術をせずに、そのままステップアップする方が残卵数のことを考えると良い選択かもしれません。

そこら辺も含めて総合的に考えることが大事なのではないかと思います。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とチョコレート嚢胞と早発閉経一見関係がないような話に思えますけれども、時間的な経過を踏まえて考えてみるとチョコレート嚢胞がある方は、自分の身に降りかかることがないとは言い切れないことなのです。

そのため、是非このことは知っておいていただきたいと思います。

 

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