ここでは流産を予防する漢方薬はあるのか?という問いに答える内容です。
まず、結論を言います。
流産を予防する漢方薬はあります。
しかし、すべての流産を予防できるわけではないです。
もっと言えば、止めない方が良い流産もある(仕方のない流産もある、それは染色体異常のよる流産です)のです。
まずはそこを理解して読み進めてみてください。
流産に関する基本的な知識
一般的に妊娠された女性の約15%の方が流産されると言われています。
その流産される中でも妊娠初期(妊娠1か月~妊娠4か月までの期間)に流産される方が最も多いです。
妊娠初期における流産の約8割は胎児の染色体異常が原因です。
この約8割の染色体異常による流産というのは防げないものです。
そしてこれは自然の摂理として起こるべくして起こるものというふうに考えたられた方が良いものなのです。
つまり流産の予防の漢方というのは自然の摂理に抗えるものではなく、染色体異常のような流産を無理やり止めることはできないということです。
一口に流産を予防する漢方薬といっても 実際には様々なものがあります。ここからはさまざまな流産を予防する漢方薬について書いていきたいと思います。
流産を予防する漢方薬
流産を予防するという漢方薬と一口に言っても妊娠してから飲み始めるものと、妊娠する前から体質改善するために飲んでおくものがあります。
まず妊娠されてから流産の予防のため使用する漢方薬を安胎薬とか流産止めと呼びます。
妊娠する前から流産しにくい身体づくりのため体質改善で服用する漢方薬というものもあります。
漢方では不妊体質の患者さんは流産もしやすいと考えます。
そのため、漢方的には不妊体質を改善する漢方薬を服用することが流産しにくくすることにつながるのです。
不育症(習慣性流産)の患者さんも漢方的にはこの不妊体質の中の一つと考えます。
そのため、不育症の患者さんも漢方的には不妊体質を改善するための体質改善を行うのです。
安胎薬(流産止め)は妊娠が確認されてから飲み始める流産予防の漢方薬
流産を予防する漢方薬の中で安胎薬(流産止め)は妊娠が確認されてから飲み始める漢方薬です。
この安胎薬(流産止め)は患者さんの体質によって用いるものが異なります。
流産止めの中で代表的な漢方薬が当帰芍薬散や芎帰膠艾湯などです。
それぞれ、どんな時に用いられるかというと
当帰芍薬散・・・生理痛のような腹痛から始まるような流産
芎帰膠艾湯・・・出血をきっかけとして始まるような流産
それ以外にも安胎薬(流産止め)用いる漢方薬はありますが詳しくは流産止め(安胎薬)についてを参照してください。
妊娠する前から飲んでおく漢方薬が不妊体質を改善する漢方薬で、それが流産を予防する
先ほども書きましたが、妊娠する前から飲んでおく漢方薬が不妊体質を改善する漢方薬であり、それか流産を予防する漢方薬でもあるのです。
そのため漢方的には不妊体質を改善してゆくことが不育症(習慣性流産)の治療につながるのです。
これが漢方的な発想です。
一方西洋医学では流産予防というのは不育症(習慣性流産)をベースに考えてゆきます。
初回の妊娠などに関する流産の予防に関してはあまり理論的にも、技術的にも確立されていないです。
2回以上の流産の場合に様々な検査や原因の特定を行い治療を行ってい行くのです。
ここでは西洋医学的な不育症(習慣性流産)をベースに話を進めたいと思います。
流産と不育症(習慣性流産)の基本
厚生労働省の不妊研究班の調べたデータによりますとを、妊娠された女性の約4割が流産を経験したことがあるそうです。
さらに約6%の方が2回以上の流産を経験されています。
また3回以上の流産を経験されている方というのは約2%おられます。
この2回以上流産を経験がある場合を不育症、3回以上流産の流産経験がある場合を習慣性流産というふうに呼んでいます。
ただし、この区分けを厳密にしていない場合も多いので、不育症と習慣性流産はほぼ同じ意味として理解してもらってもいいです。
そこで次にこの流産を繰り返す不育症(習慣性流産)の原因と治療法について書いてみます。
流産を繰り返す不育症(習慣性流産)の原因とそれを予防するための漢方薬。
不育症(習慣性流産)の原因としてはっきりとわかっているものは全体の中の4割程度で、坑リン脂質抗体、甲状腺機能異常(甲状腺機能低下症)、血液凝固因子(第Ⅻ因子欠乏症)、高プロラクチン血症などがあります。
ここではこれらの不育症(習慣性流産)ついて書いてみたいと思います。
坑リン脂質抗体などの自己免疫疾患と予防の漢方薬
この不育症(習慣性流産)の主要な原因の一つに抗リン質抗体に代表されるような自己免疫疾患があります。
この自己免疫疾患に関してどのように考えてゆくのでしょう?
自己免疫疾患に対応しようとすれば普通に考えれば免疫を調整する必要があるというのは何となくわかると思います。
漢方理論では身体を構成する要素を気・血・水という3つの成り立ちで考えます。
この中で免疫と最も深く関係しているのが水なのです。
そこでこの水の問題(免疫)に対応する五苓散というお薬に漢方理論で調整の働きのある小柴胡湯を合わせてできた柴苓湯という漢方薬をこの疾患用いることが多いのです。
詳しくは不育症(習慣性流産)のページを参照してください。
甲状腺機能異常(甲状腺機能低下症)と予防の漢方薬
甲状腺の機能異常特に甲状腺機能低下症がおこると、基礎代謝が不足します。
基礎代謝が不足すると、身体に必要なものを作るスピードが遅くなってしまいます。
そうすると、胎児が作られるスピードが遅くなり不育症となってしまうわけです。
そのため、甲状腺の機能低下を防ぐことはとても重要なことなのです。
この甲状腺機能低下症の予防(治療)に用いる漢方薬は実際にはかなりの種類があります。
そのためかなりの専門的な知識を必要とします。
その中でもポピュラーなものについてお話しします。
桂枝茯苓丸加薏苡仁という漢方薬があります。
これは、甲状腺機能異常の患者さんの多くは甲状腺腫(甲状腺の腫れ)を起こしている方が圧倒的に多いのです。
桂枝茯苓丸加薏苡仁という漢方薬はこの甲状腺腫(甲状腺の腫れ)を取り除く代表的な漢方薬なのです。
それ以外にも甲状腺機能異常(甲状腺機能低下症)用いられる漢方薬はたくさんあります。
詳しくは甲状腺機能低下症のページを参照してください。
血液凝固因子(第Ⅻ因子欠乏症)の予防と漢方薬
血液凝固因子(第Ⅻ因子欠乏症)というのはなじみがない病名だと思いますが、これはその名の通り血液の凝固に関連する因子で、これが欠乏すると血栓ができやすくなるのです。
つまり血管、特に細い血管が詰まりやすくなるのです。
そのため、これを予防するためには普段から血液をサラサラにしておく必要があるのです。
漢方的に血栓≒瘀血ですので、血栓を予防するには活血(血液をサラサラにする)必要があるのです。
そのため、その予防に用いられる漢方薬としては活血薬(血液をサラサラにするもの)になります。
代表的なものとしては下半身の血流をよくする桂枝茯苓丸などが用いられる可能性が高いです。
※ただし、気を付けなければならないのは、活血薬というものは妊娠してから長期間用いると、血液をサラサラにする結果、流産させるリスクが出てきます。
そのため、活血薬は妊娠したら、止めるのが一般的です。
高プロラクチン血症の予防と漢方薬
高プロラクチン血症とはプロラクチンというホルモンが過剰に分泌されることによって起きる病気です。
これは特に二人目不妊で妊娠しても流産してしまうような不育症(習慣性流産)の方に多い原因です。
このプロラクチンというのは乳汁分泌ホルモンのことで、本来は妊娠出産した後、赤ちゃんを母乳で育てる際に多く出てくるホルモンです。
このホルモンが出ることによって母乳が多く出るようになります。
それと同時に このプロラクチンの過剰は排卵するのを抑制したり、妊娠しにくくしたり、流産の原因となったりするのです。
一般的な病院でもこのプロラクチンの値を重視する病院があり、正常値の範囲であっても、やや高めであればプロラクチンの分泌を抑えるような薬を服用するように指示するところもあります。
高プロラクチンの予防(治療)に用いられる漢方薬で有名なものには炒麦芽などがありますが、実際には患者さんによって用いる漢方薬は異なります。
詳しくは高プロラクチン血症のページを参照してください。
不育症(習慣性流産)の原因不明なものが漢方の不妊体質
一般的には約6割の不育症(習慣性流産)の原因は分かっていません。
私の経験から言うと、この原因が分かっていない不育症(習慣性流産)の原因というのが、漢方的な不妊体質なのです。
そのため不育症(習慣性流産)の予防に使う主な漢方薬が不妊体質の改善に用いる漢方薬とほぼ一致します。
不妊治療の体質改善に用いる漢方薬代表的なものについて少し書いてみます。
血虚
漢方的に血が足りない状態の時に用います。
実際には栄養状態の不良、女性ホルモンの分泌不足、貧血などを指す言葉です
このような血虚の状態に用いる代表的な漢方薬が四物湯や当帰芍薬散なのです。
腎虚
漢方的には腎が不足した状態を言葉ですけれども、実際に腎虚とは老化に伴う生殖器の機能低下を指す言葉です。
このような状態に用いる代表的な漢方薬が鹿茸(鹿の角)製剤、や紫荷車(プラセンタ製剤:胎盤エキス)といったものが入った漢方薬です。
気虚と
漢方的には気が不足した状態ということです。
気が不足するというのはエネルギー不足(ガス欠)みたいなニュアンスで使われます。
一般的には疲れやすかったりするような状態を指します。
この気虚にはエネルギーを補いような漢方薬つまり元気にする漢方薬を用います。
その代表的なものとして補中益気湯などのように高麗人参を含む漢方薬が使われることが多いです。
瘀血(血液の滞り)と流産予防の漢方薬
瘀血とは言葉通り血流が悪くなっている状態を指します。
このような状態に対する予防(治療)に用いる漢方薬というのは血液をサラサラにする漢方薬です。
代表的なものとしては桂枝茯苓丸などのように主に下半身の血流を良くするような漢方薬が用いられます。
以上が不育症(習慣性流産)などので原因がはっきりわからない時に予防に用いられる漢方薬の主なものでした。
しかし漢方的には他にも原因として考えられることはあります。
詳しくは不妊治療と漢方薬を参照してください。
流産を予防する漢方薬のまとめ
流産を予防する漢方薬とはどういうものかについて説明しました。
流産を予防する漢方薬と一口に言っても、流産経験の有無とその回数(不育症、習慣性流産)や流産を起こした原因
などによって、流産を予防する漢方薬の飲み始めの時期や用いる漢方薬が異なるということです。
しかし、流産を繰り返すような方は流産の原因が1つではなく複数あることが珍しくありません。
そのような場合にはそれぞれの原因の予防のために複数の漢方薬を服用しないといけないケースも出てきます。
そのためここで改めて少し整理して一覧表にしました。
流産の経験の有無 | 不育症あり | 漢方的な不妊の原因がある | 予防に用いる漢方薬 | 漢方薬の服用を始める時期 |
流産経験なし | (ー) | (-) | 流産止め(安胎薬) | 妊娠が確定してから(妊娠検査薬で陽性反応が出てから) |
流産経験なし | (ー) | (+) | 流産止め+不妊治療の漢方薬 | 妊娠するまでは不妊治療の漢方薬を服用して妊娠確定後に流産止めに変更 |
流産経験あり | (+) | (−) | 不育症の漢方薬 | 妊娠する前から不育症の体質改善のためにずっと服用し、妊娠が確定しても不育症の漢方薬を続ける |
流産経験あり(流産の原因が漢方的不妊症の体質改善が不十分なケース) | (-) | (+) | 流産止め+不妊治療の漢方薬 | 妊娠するまでは不妊治療の漢方薬を服用して妊娠確定後に流産止めに変更 |
流産経験あり(流産の原因が漢方的不妊症+不育症の両方の原因を持っているケース) | (+) | (+) | 不育症の漢方薬+不妊治療の漢方薬 | 妊娠するまでは不育症の漢方薬と不妊治療の漢方薬を併用して妊娠確定後には不育症の漢方薬を続ける |
このように流産を予防するための漢方薬を用いるにはかなりの専門的な知識と経験が必要になります。
そのため、漢方で流産を予防するためには不妊治療、中でも不育症(習慣性流産)などに精通した漢方専門の相談薬局で相談することが一番の近道だと思います。
漢方薬局ハーブスは中国・四国地方を中心に全国から不育症(習慣性流産)の相談をいただいています。
もし、漢方で流産の予防を希望されてる方はお気軽にご相談ください。
また、流産予防と食事(食べ物)に関しては流産予防の食事(食べ物)で注意すべき8つの食品とは?と参考にしてください。
妊娠初期の流産予防に関しては妊娠初期の流産の予防で気を付けるべき9つ重要ポイントとは?を参考にしてください。