紹介で患者さんが来られました。

主なご相談内容は耳鳴りです。

この症状は1か月前から発症し、病院の耳鼻科で検査しましたが、大きな原因は見つからず、これといった治療法もないためご相談に来られたのです。

また既往歴としてはアデノイドになったことがあり、摘出手術を受けたことがあるそうです。

それ以外に現在、糖尿病、前立腺肥大、アレルギー性鼻炎などがあるそうです。

さて、肝心の耳鳴りについてですが、耳鳴りといってもその症状によって治療のしやすさに大きな違いがあります。

私の経験では耳鳴りでもジージーという俗に言うセミの鳴く音やザーザーなどのやや低めの音に関しては非常に治療が難しいです。

このような状態に耳鳴丸という漢方薬が市販されていますが、これも効いたと実感したことはほぼないです。

一方、ピーとかキーンとかサーとかシーとか高い音の耳鳴りの場合はかなりの確率で症状は改善します。

この耳鳴りの音を引き起こす原因のほとんどはストレスだからです。

ストレス改善イメージ

漢方薬の中にはストレスを緩和させたり、自律神経を整えるような漢方薬があるのです。

ただし、ストレスが原因の場合漢方治療を行っても、その漢方治療と患者さんのストレスが綱引きのような関係で耳鳴りを出したり、抑えたりしているわけです。

そのため、ストレスのかかり具合が弱い時には症状が改善しやすく、症状も弱いのですが、ある程度漢方治療を行っていても、急激なストレスで、耳鳴りが悪化することがあるのです。

ただし、その耳鳴りの度合いは治療前のストレスがかかっていた時よりも弱くななっているのですが、症状が減っていたところに再び音が大きくなると患者さんはショックを受けたり、がっかりされることもあるのです。

その症状の変化は季節が移ろうように起こります。

例えば、夏から冬に移り変わる時、基本はまっすぐ直線的には下がらないですよね。

寒くなったり、暑くなったりを繰り返しながら徐々に下がってくるのです。

耳鳴りの音も大きくなったり小さくなったりを繰り返しながら徐々に小さくなってゆきます。

さて話を戻します。

この患者さん、耳鳴りの症状は1か月前から出たそうです。

その音はキーンという高い音だそうです。

漢方治療イメージ

片耳か?両方か?お伺いしたところ、片耳で左側だそうです。

そしてさらに詳しくお伺いすると、耳鳴りが起こる1年前くらいから難聴になっていたそうです。

そして耳鳴りになったきっかけで何か心当たりがあるか?をお伺いしたところ、丁度その時期にかなりストレスがあったそうです。

そして、それ以外にもかなりのストレスがあり、お話の内容から、難聴もストレスの結果生じているように思われました。

それ以外にも東洋医学的な問診やチェックを行い、この患者さんにこの患者さんに合っていると思われる漢方薬を出してみることにしました。

そして、2週間後来られた際に様子をお伺いすると・・・症状はあまり変わっていないとのことでした。

ただ、感覚としては合っている気がしたので同じ漢方薬で様子をみることにしました。

次に来られた時に再び症状をお伺いするとテレビのリモコンの音量が2~3つ下がったので、難聴には効いているみたいという話でした。

そして、この薬が効いたことによって、ストレスを感じると耳が塞がるということが実感として分かったそうです。

体質改善イメージ

ただし、耳鳴りはまだ変わらないとのことでした。

あと、私が気付いたのは、ストレスを感じると首の凝りも増えるということでした。

その話を患者さんにしたところ、この患者さんも言っていなかったけどそうですというお話でした。

次に来られた際には再び症状がもとに戻っている感じでした。

そこでお話をお伺いすると、仕事のストレスとプライベートのストレスが同時に来たということでした。

そして、耳鳴りの症状と同時に不眠症の症状も出ていました。

不眠症についてお伺いすると・・・これも以前からあったそうです。

この症状もストレスが加わると悪化するということでした。

この患者さんに限ったことではないですが、特にメンタルが絡んでいる場合は、最初にご相談された症状よりも実際には多くの症状をお持ちの方が多いです。

そこで、再度この患者さんの状態をチェックしてみると・・・

今回は漢方薬を変えないと難しいように思いました。

そこで漢方薬を変えてまた、2週間後に来ていただくことにしました。

そして2週間後に来られた際に様子をお伺いすると・・・

寝つきは少し良くなったそうです。

難聴(耳の聞こえ)は波はあるそうですが、前回よりは良いということでした。

耳鳴りは変わらずということでした。

そして次回来られた際には・・・

寝つきは完全に良くなったそうです。そして精神的なイライラも少し治まってきたそうです。

難聴は良いときもあるけど、悪い日もあるそうで、トータルとしては微妙に良いそうです。

そして、次の1か月後来られた際に様子をお伺いすると・・・

難聴の感じは前回と同様に良い時もあるけど、悪いときもあるという感じでした。

ただ、耳鳴りに関しては気になる程ではないということでした。

ここら辺からは1か月単位のご相談になりました。

そして、ひと月ごとに来られる度に多少の症状のムラはありますが、全体的には耳鳴りも難聴も症状が治まってきました。

そしてそこから約半年で耳に関するすべての症状が気にならなくなったということで、治療を終了することにしました。

治療を始めてから約10か月かかりましたが、もともと耳鳴りの前に難聴があり、この2つの原因は同じで、難聴は1年前から始まっていたので、割と早く良くなったと思います。

これは、ストレスが途中から落ち着いたというのが大きいとは思います。

それでも、無事、治療を終えられてよかったです。

ホッとしました。

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