お姉様が妊娠されたということで、その方の妹さんがご紹介で来られました。
ご相談内容は妊活(不妊治療)です。
年齢も40代であり、なかなか妊娠されないという事でご相談に来られたのです。
そこでこの患者さんの現在の身体の状態をチェックするため、病院で行われた検査データ、及び東洋医学的な体質を見極めるための質問や舌の状態、その他の東洋医学的なチェックを行いました。
その時に見せていだいた、病院での不妊検査の検査データは全く問題なく、東洋医学的な体質を見極めるための質問や舌の状態、その他の東洋医学的なチェックもすべて行いましたが、不妊症と思われるような所見は一切ありませんでした。
そのため、この時には東洋医学的な不妊症は無いので漢方治療は必要ないというお話しをしました。
つまり、漢方薬はお出しせず、しばらく様子をみてもらう事にしました。
そして、患者さんも40歳を超えているので、もし病院での不妊治療をこれからも継続して1年以上妊娠しなかったら、また来てもらうようお願いしました。
そして、約1年後、再び電話があり、1年以上経過しても妊娠していないので再び診てほしいとご連絡がありました。
そこで再度来ていただいて、この1年の病院での不妊治療の経過をお伺いしました。
まず血液検査の結果ですが、AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値は1以上1.5未満という値で、40代女性としては平均的な値でした。
また、FSH(卵胞刺激ホルモン)の値もE2(エストロゲン:卵胞ホルモン)も全く正常で血液検査上は全く何も問題が無いという感じでした。
ただ、気になったのは、これらの血液検査の結果の割に体外受精の成績は思わしくなかったことです。
今までに体外受精による採卵を何回か行っているのですが、一番最初はかなり沢山の卵胞が採れた割に受精、凍結できたのはわずか数個とその割合がかなり良くなかった事、そして前々回は1つも凍結できず、直近では胚盤胞で凍結できのが一個、と、間違いなく成績が悪くなってきているということです。
治療法か治療技術の方に問題があるのではないか?
とさえ思いました。
ここまでの話だと、不妊治療の病院を変えてみるという選択肢にになると思っていたのですが、患者さんから思わぬ相談を受けたのです。
移植周期の時に、子宮内膜が厚くならなかった。
その為に妊娠しなかったかもしれないということでした。
子宮内膜がどのくらいの位の厚みかお伺いすると、移植直前で最大6.9mmだったそうです。
確かに薄いです。病院だと子宮内膜菲薄といわれる状態です。
通常、移植周期で理想的な子宮内膜の厚み10mm以上と言われています。
着床(妊娠)するのに7mm以上が必要と結論づけている論文もあります。
ただ子宮内膜が7mmの場合、仮に着床(妊娠)しても流産する確率が高いのです。
そのため、出産まで考えると8mm以上が望ましいのです。
その事を合わせて考えても、やはり、子宮内膜は薄いです。
そこで改めて東洋医学的にチェックしなおしてみる事にしました。
しかし東洋医学的な問診をおこなっても、漢方の不妊症の体質的な問題は特に見当たりませんでした。 そこで子宮を東洋医学的なチェック方法で調べてみることにしました。
そうすると、この子宮だけ、東洋医学的には問題ありという反応がありました。
そこで、この子宮の状態を改善する漢方薬がないか?をチェックしてみることにしました。
通常、子宮内膜が薄い場合、漢方的には血虚(けっきょ:女性ホルモン不足or女性ホルモンの働きが悪い)か、気虚(ききょ:エネルギー不足)、腎虚(じんきょ:加齢にともなう新陳代謝の低下)などが多いのですが、この患者さんは、上記した3つの体質いずれにも該当しませんでした。
そのため、東洋医学的に一から身体の状態をチェックしなおすと、瘀血(おけつ:血流障害)体質の方に用いるような漢方薬が合う気がしました。
通常、瘀血体質の方というのは、子宮内膜増殖症のように子宮内膜が過剰に厚い方に用いることの多いもので、現在の子宮内膜の薄い場合には通常、使わないのです。
そのため、どうするか随分迷いましたが、何度チェックしても同じ結果が出るので、この瘀血体質にもちいる漢方薬を出してみることにしました。
そして、大体2週間間隔で来ていただいて、その都度東洋医学的にチェックを行なったのですが、やはり合っている気がしました。
そして、漢方薬を服用し始めてから約3ヶ月後に最後に残った受精卵を移植したのです。
そして、みごと妊娠されたのです。
これでダメなら、他の不妊専門クリニックに転院する予定でした。
こういう事ってたまにあるんですよ。
ちなみにこの時の子宮内膜は7.8mmだったそうです。
十分ではなかったですが6.9mm→7.8mmと0.9mmですが厚くなっていたのでホッとしました。
良かったです。
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