今回は多汗症についてお話しします。
多汗症はご本人にとってはかなり深刻なもので、場合によっては日常生活にかなり支障をきたす場合もあります。
多汗症の種類によっては病院での治療が可能な物もありますが、これが治療を受ければ必ず良くなるわけでもなく、手術の結果、より問題が深刻化する場合もあります。
そのため、病院で上手くいかず、ご相談に来られる方もおられます。
このような場合でも漢方でアプローチできる場合もあります。
それは西洋医学と東洋医学では汗の出る原因のとらえ方が異なるからです。
漢方医学(東洋医学)での多汗症の考え方
漢方医学(東洋医学)では多汗症と一口に言っても、汗の出る場所や出る状況、年齢、性別などによって原因は全く異なると考えます。
原因が異なるという事は当然治療方法(用いる漢方薬)も異なってきます。
ここまで書けばおわかりになると思いますが、タイトルにも書いた、そもそも、多汗症は漢方で解決できるのか?
ですが、多汗症は漢方で解決できうるものと考えています。
ここらへんのお話も含めてお話ししたいと思います。
多汗症と漢方
まずですが、多汗症というのは、最初に漢方を学んでゆく過程で必ず入ってくる基本の内容なのです。
そのため、漢方家として一通りの勉強をされたことがあれば、必ず学んだことがあるはずです。
ただし、最初に漢方を学んでゆく過程で必ず入ってくる多汗症というのは多汗症の中の一部ですべてではないのです。
そのため、それ以外の多汗症に関しては、勉強会や自分自身での勉強、経験などで研鑽を積まなければ得られないものです。
しかし、研鑽を積めば得られるものです。
つまり、どんな多汗症にしろ漢方で対応は可能なはずですが、漢方家の技量の差が出やすい症状の一つだと思います。
そのため、漢方薬局選びも重要になると思います。
多汗症の3つの種類
それでは、多汗症に関して具体的にお話ししていきます。
多汗症は出る場所、性別、年齢、体型などによって主に3つに分けることができます。
①全身から出る汗
②上半身から出る汗
③手汗
上記の①~③は漢方的に言えば原因も治療法も異なるものです。
これからそれぞれについて説明しいていきます。
①全身から出る汗
これはもともと生まれ持った体質的なものが原因となります。なかでも、色白でぽっちゃりとした体型の方はこのタイプの汗をかきやすい傾向があります。
芸能人の内山くんとか伊集院光さんなどがこのタイプに該当するのではないかと思います。
ちょっとした運動をしても人よりも多く汗をかいてしまう方です。
このようなタイプの方は漢方では気虚(エネルギー不足)タイプと考えます。
漢方医学では(全身の)汗はエネルギーを使って出過ぎないように抑えている(コントロールしている)と考えているのです。そのため気虚(エネルギー不足)になると、汗が出過ぎないように抑えていることができなくなり、汗が異常に出てしまうのです。
そのため、身体の気虚(エネルギー不足)を改善させることで余分な汗が出るのを防ぐのです。
このような多汗症に用いる最も代表的な漢方薬が防已黄耆湯((ぼういうぎとう)なのです。
②上半身から出る汗
これは体質的なものよりも、女性が加齢(更年期)に伴って生じる傾向の強いものです。
一般的に言う更年期障害のホットフラッシュという状態がこれに該当すると思います。
中には精神緊張が原因で生じるケースもありますが、主には女性の更年期障害であることが多いのです。
このホットフラッシュという状態を漢方的に解釈すると、血虚(けっきょ:女性ホルモン不足)で上の方(上半身)に熱がある状態と考えます。
このような状態に用いる代表的な漢方薬が加味逍遙散(かみしょうようさん)なのです。
この漢方薬は自律神経を整える逍遙散(しょうようさん)という漢方薬に牡丹皮(ぼたんび)と山梔子(さんしし)という上の熱を冷ます生薬が加わったものです。
③手汗
これは主に精神緊張によって生じるものです。
そのため、ストレスが増えると出やすくなる傾向があります。
またこの手汗は精神緊張によって生じるものですが、体質的なものです。つまり精神緊張を起こしやすいような性格的な部分も漢方では体質的なものと考えるということです。
そのため、手汗を改善させるには体質改善が必要となるため、症状が改善するまで時間がかかることが多いです。
例えば、②の上半身の汗は早ければ服用されて2週間で改善傾向がみられるケースが多いですが、手汗の場合はなかなか難しいのです。
また、汗の出る部位ですが、実際のところ、精神緊張に伴って汗が出るのは手だけではなく、足の裏、脇も手と同時に出るケースが多いです。
そのため、それらの部位も含め、治療する場合はその経過をチェックしていく必要があるのです。
手汗の治療に用いられる漢方薬
この手汗が出る漢方的な原因はいくつかあるのですが、治療に使用される代表的な漢方薬が、桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)です。
この漢方薬は桂枝湯という比較的虚弱な人に用いる漢方薬に竜骨(りゅうこつ:動物の化石)と牡蠣(ぼれい:牡蠣殻)という生薬が入ったものです。
この竜骨(りゅうこつ:動物の化石)と牡蠣(ぼれい:牡蠣殻)には安神(あんじん:精神を安定させる)作用があると考えられています。
そのため、この桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)は比較的虚弱なタイプの手汗に用いられることが多いのです。
もっと丈夫なタイプには同じ竜骨(りゅうこつ:動物の化石)と牡蠣(ぼれい:牡蠣殻)が入っている柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)が用いられることもあります。
これらが、手汗に用いる代表的な漢方薬の一つです。
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