私は漢方治療をする際に、特に気をつけていることがあります。
それは、心と身体はつながっているので、病気を引き起こしている原因が、心(メンタル)からきていないか?
ということです。
ここを見落としてしまうと、途中まで順調に良くなっていた症状の改善が頭打ちになったり、人によっては、症状が全く改善しないということになってしまうのです。
そのため、漢方治療が思ったように改善しないとき、特にここをチェックするようにしています。
しかし、心とからだは双方向性に関係しているのです。
今回はそのことを改めて思い知らされた話をしてみたいと思います。
もう何年も、お子さんの漢方相談に来られているお母さんがおられます。
お子さんはとても敏感で、自分自身の感情を持て余してしまうタイプのお子さんでした。
そのこともあってか、友達との関係性を築くことが苦手なようでした。
いろいろな新しいことに関しても消極的でうちにこもるような感じがありました。
そのため、かなり小さいころから情緒を整える漢方薬を服用していただいていたのです。
お母さんから情緒の相談を受けるときは、必ずといっていいほど、漢方薬が合わなくなっていて、
合う漢方薬に修正すると、情緒が落ち着くという繰り返しでした。
しかし、同じ漢方薬が合うということはなく、都度修正が必要でした。
そして、情緒の安定性と学校生活も相関があり、学校にいく、行かないにも深くかかわっているように思っていました。
状況としては一進一退を繰り返しながら、全体としてやや押し込まれているという印象を持っていました。
ところが、ほんの1か月くらい前に随分前から、このお子さんは頭痛に悩んでいたことが分かったのです。
そこで、情緒の薬はとりあえず、保留として頭痛の治療をまず優先することにしたのです。
そして、頭痛を治療してみると、びっくりするほど活発になり、人との関りも積極的におこなうようになったのです。
お母さんも驚いておられました。
そして、何より私も驚きました。
心と身体はつながっているように身体と心もつながっている。
心が変われば身体も変わる、身体が変われば心も変わる。
治療においてはどちらからの視点も重要だということを改めて実感しました。