基礎体温が徐々に上がる時に考えられる4つの原因とその対策について書いています。
読者対象は基礎体温が徐々にしか上がらず不安に思われている方です。
基礎体温は本来は一度下がってからすっと上がることが望ましいですが、必ずしもそうならないこともあります。
それが気にする必要のないものなのか?
それとも病的な原因が合って治療や対策が必要なのか?
そのことに関して、基礎体温を丁寧に読み込むことで長年、不妊治療を行っている漢方薬剤師だからこその経験に基づく話ですので参考になると思います。
基礎体温が徐々に上がる場合、いつから高温期とするのか?
実際の基礎体温を見せてただければ、ここら辺ですというお話はできるのですが、基礎体温の無い状況だと説明は正直、難しいです。
先ほどの書きましたが、基礎体温が徐々に上がる場合、いつから高温期とするのかは正直その線引きは難しいのです。
それでも、最低限言える基準というものはあります。
それは低温期の温度よりも0.5度以上上昇した温度からは間違いなく高温期といっていいと思います。
基礎体温の低温期と高温期には温度差が0.3度~0.5度以上あることが望ましいといわれています。
そのため、低温期から見て0.5度以上の上昇した日は間違いなく高温期に到達しています。
しかし人によっては0.3度以上の温度差で十分なケースもあります。
それは人によってまちまちなわけです。
もともと温度差が0.5度の方は0.3度では上昇途中なのです。
そのため、はっきりと言い切ることはできないのです。
それでも温度差0.5度以上は一つの目安になると思います。
基礎体温が徐々に上がるのは不妊症の兆候?
基礎体温が徐々に上がるのは妊娠に影響するのか?しないのか?
一番気になることだと思うのですが、結論から言えば影響します。
基礎体温が徐々に上がるのは不妊症の原因を持っているシグナルの一つと考えます。
そのためここからは基礎体温が徐々に上がる原因として考えられることとその対策について書いていきます。
基礎体温が徐々に上がる原因とその対策とは
基礎体温が徐々に上がる原因とその対策について書いていきます。
原因1:高プロラクチン血症
プロラクチンとは脳下垂体前葉という場所から出るホルモンです。
プロラクチンは別名、乳汁分泌ホルモンといいますが、その名の通り女性が妊娠して出産し子供を産んだ際、お乳を出すときに必要不可欠のホルモンです。
このホルモンがお乳に働くことで乳腺を発達させて母乳の生成を促進するのです。
つまりこのホルモンが出なければお乳は出ないのです。
そしてまたこのプロラクチンは排卵(次の妊娠)を抑制します。
つまり、母乳で子供を育てている間はその子供を育てるのに専念するために、妊娠しないようにしているのです。
通常はこのホルモンは妊娠を契機として分泌が高まり、出産して母乳をあげてる間は高い状態を維持します。
しかし妊娠していないときや母乳をあげるのをやめた後は自然にプロラクチンの値は下がっていきます。
ところが妊娠していない方や母乳をあげ終わった後でもこのプロラクチンの値が高いことがあります。
そうするとプロラクチンは排卵の抑制をするため生理不順や無排卵・無月経となり妊娠しづらくなります。
また黄体ホルモンの分泌を抑えるため、高温期になりにくくなります。
そのためプロラクチンが高濃度に出ている高プロラクチン血症の状態では排卵が通常よりも遅れるため基礎体温が徐々に上がることになってしまうのです。
対策
この高プロラクチン血症に関しては、産婦人科 行けば血液検査によって調べることができます。
もし、高プロラクチン血症であった場合にはカバサールなどのプラクチンを抑制する薬を飲めばかなり即効的に改善します。
しかし、このカバサールには吐き気などの副作用があるため服用を躊躇する方もおられます。
そういう方にはカバサールほどの即効性はないですが漢方薬による治療も可能です。
より詳しく知りたい方高プロラクチン血症
原因2:甲状腺機能低下症(橋本病)
甲状腺機能低下症(橋本病)になると代謝全般が落ちるため、卵胞の育ちも遅くなります。
そして甲状腺機能低下症になると、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)が過剰に分泌されます。
この甲状腺刺激はホルモン放出ホルモン(TRH)は甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌を盛んにします。
甲状腺刺激ホルモン(TSH)は甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンの分泌を促して甲状腺の働きを正常化しようとします。
一方、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)はプロラクチンの分泌を盛んにしてしまう働きも持っているのです。
そのため、甲状腺機能低下症になると、甲状腺の働きが低下にあがる伴う卵胞の育ちの遅れ+高プロラクチン血症が合わさり、
排卵障害を起こしてしまうため、基礎体温が徐々に上がることになるのです。
対策
甲状腺機能低下症の病院での治療は甲状腺ホルモン(チラージン)剤の服用が代表的です。
漢方薬での治療の場合は、自律神経の調整や喉の詰まり感などに用いられる漢方薬を用いる場合が多く、半夏厚朴湯、柴胡桂枝湯、柴胡桂枝乾姜湯が代表的です。
より詳しく知りたい方は甲状腺機能低下症(橋本病)
原因3:黄体機能不全
黄体機能不全とは黄体ホルモンが十分に出ていない状態かもしくは黄体ホルモンは出ているのにも関わらずその黄体ホルモンの指令に対して周辺の子宮内膜の細胞などが十分
に働いていない状態を指します。
黄体ホルモンというのは黄体から出されるホルモンですけれども、黄体というのは、卵巣内にある卵胞から卵が排卵された後にできるものです。
つまり元々は卵胞と黄体は同じものなのです。
卵胞が排卵して卵のなくなった状態のものが黄体なのです。
黄体ホルモンには高温期を維持するはたらきと子宮内膜を熱いまま維持する働きがあります。
もし黄体機能不全になると黄体ホルモンの分泌は減るので高温期を長く維持することができにくくなります。
そして子宮内膜を維持する力もなくなってきます。
そのため黄体ホルモンが減ることによって高温期の期間は短くなります。
そうすると生理周期全体も短くなることになります。
通常成人女性の正常な生理周期はおよそ25日から38日と言われていますけれども黄体機能不全になるとその日数が24日未満になります。
また基礎体温的な視点で見ていくと、高温期の期間が正常であれば12日間から14日間の間になりますけれども、黄体機能不全の場合は
10日未満になります。
そして正常な形であれば低温期と高温期の温度差は0.3°から0.5°の間ですけれども黄体機能不全の場合は低温期と高温期の温度差が0.3°未満になります。
そして基礎体温的に見ると必ずではないですけれども低温期から高温期の後がなだらかになるケースが多いのです。
対策
黄体機能不全は不妊症の原因や流産の原因にもなりますので注意が必要です。
黄体機能不全の場合、黄体ホルモン分泌の低下の場合は血液検査で調べることができます。
しかし血液検査で黄体ホルモンの値を調べた時に正常であるにも関わらず、黄体機能不全 と同じ基礎体温の方が意外に多くおられます。
こういう方の場合は漢方が適用になります。
より詳しく知りたい方は黄体機能不全
原因4:卵管閉塞・卵管狭窄
卵管閉塞はその名のとおり、卵管が詰まってしまう病気です。
卵管狭窄は、卵管が狭くなっている状態です。
卵管閉塞は精子と卵子の受精できなくなるため不妊症の原因の一つとなります。
卵管狭窄は狭窄の度合いによって不妊の度合いになる場合もありますし、狭窄が軽い場合は不妊にはなりませんけれども、受精卵が狭窄によって卵管内から動けなくなってしまうことによる子宮外妊娠の原因になることがあります。
この卵管閉塞・卵管狭窄になっていると基礎体温の低温期から高温期の上昇が緩やかになることがあります。
対策
これらは通気検査や通水検査卵管造影検査で調べることができます。
卵管狭窄は通気検査や通水検査によって改善するケースもあります。
しかし卵管閉塞の場合は病院での治療はFTになります。
FTは費用が高いわりに、再発のリスクも高いため、病院でもお勧めしない事があります。
そのような場合は漢方薬での治療が可能も多いです。
より詳しく知りたい方は卵管閉塞・卵管狭窄
まとめ
基礎体温が徐々に上がる時に考えられる4つの原因とその対策について書いてきました。
この基礎体温が徐々に上がるとき考えられることは西洋医学的に見ても不妊の原因となる重要な問題の事が多いのです。
そのため、このような基礎体温の時にはまずは不妊専門の病院を受診して一通りの不妊検査を受けられることをお勧めします。
検査を受けられても西洋医学的に原因がはっきりしない場合や、原因ははっきりしているけれども治療方法がない場合でも
漢方薬による治療が可能な場合が多いです。
このような場合も含め何か気になること、ご不安なことがあれば些細なことでもご相談ください。
さらに基礎体温の測り方や見方など詳しく知りたい方は基礎体温表のグラフの測り方や見方などを詳しく解説