ザクロが不妊症にいいと書いている広告をよく目にしますし、ザクロで妊娠したとか書いていある広告もたくさんあります。
患者さんの中にもザクロを飲んでいたとか、飲んでいる方もごくまれにおられます。
本当にザクロは不妊症にいいのか?ということで私なりの意見を書いてみたいと思います。
ザクロには植物エストロゲンが含まれていると宣伝しているけれど
ザクロジュースの広告や、それと関連するようなブログなどの記事の中にはザクロエキスの中には植物エストロゲンが含まれていると書かれていますが、
植物辞典などをみると私が確認した限りでは、ザクロの中に植物エストロゲンやそれに類するものが含まれているという専門書は見たことがありません。
広告系のネット情報のみで医師や学術研究を行っている人からこれを推奨しているひとはみあたりません。
国民生活センターではザクロの中に本当にエストロゲン用の成分が含まれているかどうかテストをしています。
国民生活センターのザクロが含まれているかの実験結果の詳細な報告書はこちら
その結果は・・・どの商品にも含まれていないのです。
ザクロは古くから知られている民間薬です
ザクロは古来から中国で民間薬として使われていました。
ザクロは薬用として使われる場合その皮が用いられます。石榴皮といいます。これは主に駆虫薬に用いられてきたようです。
ただし通常使用量でも人によってめまいや震えなどの副作用を出すことがあるので近年使われなくなったという経緯があります。
中国ではザクロは子孫繁栄のシンボルと考えられてるが不妊治療には使わないのはなぜだろう?
石榴は(ザクロ)には種子が多いため古代ヨーロッパでは豊穣のシンボルと考えられ、中国では子孫繁栄のシンボルと考えられていました。
このことからザクロというのは昔から中国でも子孫繁栄→生殖活動→不妊や妊娠に関係しそうという発想はあったと思われます。
中国では様々なものが薬として用いられてきています。
中国では古代からありとあらゆるものを薬として用いられてきています。
たとえばムカデやゴキブリ、サソリも漢方薬の生薬の一つです。
動物のフンも生薬として使われることがあります。
しかし、現在ザクロは不妊治療には使われることはありません。
なぜだと思いますか?
色と気血水
中国から伝わった漢方理論の中に気血水という考え方があります。
身体を構成している物質としては気血水この3つで構成されているという考え方です。
気はエネルギー、水は体液、血は血液や栄養成分、それと女性ホルモンの概念も含んでいます。
漢方理論の中の血虚は女性ホルモン不足を表している側面があります。
そして血と関係する色は当然赤です。
石榴(ざくろ)の実の色です。
当然ザクロは血に働くと考えられます。
子孫繁栄の象徴で木の実の色が赤で血に働くザクロがなぜ漢方で使われていないのか?
中国ではムササビのうんちでさえも漢方薬として用いられています。
つまりそれは過去にそれを試したことがあるということです。そ
れほど様々なものを試す中国の漢方家が、ザクロを不妊の漢方薬として使わないのはとても不思議とは思いませんか?どう考えても関係しそうなのに・・・。
おそらく過去に中国では使った人はたくさんいるとは思います。
でも効果がなかったのだと思われるのです。
今でも残っている漢方薬は長い長い間人々に飲まれて本当に効果のあったものだけが残っているのです。
いえば何千年の人体実験の結果の蓄積なのです。
その中で思ったような効果がなかったのものは淘汰されていったのです。
ザクロと不妊の関係はそういうものと考えられます。
もし仮にザクロにエストロゲン作用物質が高濃度に含まれていれば
ずっと飲み続ければ不妊になると思います。
エストロゲンの量は高温期と低温期では濃度が異なります。
それによって性周期(高温期と低温期)が作られているのです。
高温期にあまりエストロゲン(卵胞ホルモン)の量が増えると妊娠しずらくなります。
高温期はプロゲステロン(黄体ホルモン)が増える必要があるのです。
もしエストロゲン量が常に増えるとピルのような働きをするはずなので排卵抑制や生理不順などを引き起こす可能性があります。
実際にはそのようなことは起きていない気がします。
とすると・・・
では再び改めて
ザクロは不妊治療に効果があるか?
確認されていないですが、患者さんが過去飲んでおられた経験から、ザクロには女性ホルモン様の作用はあるように感じます。
しかし不妊治療に効果があるかと言われればやなりNOと言わざるおえません。
自分の治療経験でもザクロを飲んでいてよかった患者さんはいないですし、少なくとも不妊治療で実績を出している漢方薬局でザクロを不妊に使っている薬局はないです。
ちなみに商品として扱うことは可能なのです。
可能なのに扱わないという商品なのです。
ザクロを扱っているのは健康食品のお店に限られます。
類似品ではないですが、同じような扱いの中にマカというものがありますが、マカは女性の不妊にはまずいいとは思いませんが、男性不妊には効果がある方がおられます。
そのため、うちでもマカはおいています。
でも女性には使いません。
男性限定です。
女性の身体は複雑です
男性の場合と比べ女性の身体は複雑なのでこれを飲めば確実というものは今までの経験ではない気がします。
ザクロのようななんとなく不妊に効きそうなイメージのものについつい手を出してしまいたくなる気持ちは少しわかりますが、実際の不妊治療でそのような魔法のようなものはないのです。
実際には急がば回れ、地道にコツコツ治療するほうが良い結果が出るケースが多いように思います。