高齢不妊の患者さんが来られました。

この方、現在、40代の中盤にさしかかっていているのですが、不妊治療そのものはそれほど長くはしていないのです。

というのも、この方、数年前に乳がんが見つかったのです。

見つかった乳がんはの大きさは非常に小さかったのですが、 検査してみるとガン細胞の悪性度が高かったため、手術した後に抗がん剤の服用や放射線治療 ホルモン療法などその治療など、数年間できる限り治療を行ったそうです。

乳がんが見つかる前までは妊娠を希望されていて、少しの間、不妊治療を行っていたそうです。
その時に体外受精を行い、受精卵を一つ凍結していたということです。

病院での乳がん治療も一段落した1年前に不妊治療を再開し、凍結していた卵を移植したのですが、着床せず、その後さらに、採卵を3回行ったのですけれども、2回は成熟卵子が取れず、1回は成熟卵になったけれども、受精させても発育しなかったそうなのです。

年齢的な問題と乳がんのことを考えると、不妊治療はできるのはもうワンチャンスぐらいしかないということで、私の薬局に漢方相談に来られたのです。

そこで、この患者さんの乳がんと不妊治療以外の体の状態についてもお伺いしました。
そうすると、非常に疲れやすいということと、子宮筋腫があるということ、それから帯状疱疹の後の痛みがずっと残っているということでした。

さらに、この患者さんの状態を漢方的にチェックしました。

それらのことを総合的に判断して考えると、年齢に伴う血流障害の問題が一番大きいように感じました。

そのため、 年齢に伴う血流の問題を改善するような 漢方薬を服用していただく事にしました。

漢方治療イメージ

そして、漢方薬を出してから2週間おきに来ていただきました。

多くの患者さんは途中で服用する漢方薬が変わったり、併用する漢方薬が変わったりするのですが、この患者さんの場合は、最初に出した漢方薬が変わることはなく、同じ組み合わせのものを数カ月服用していただきました。

そして、漢方を服用して約2ヶ月過ぎた頃に採卵行い、一個ですが、初期胚のものを凍結することができました。
それに関しては良かったのですが、この時にFSHは30(mIU/ml)を超えており、かなり 卵巣機能が衰えてきていたのです。

そして、さらに一か月後に、もう一度採卵する予定だったのですけれども、卵の育ちも良くなく、この時にFSHを測定すると、その値が40(mIU/ml)を超えていたため、このままでは採卵はできないし、もうそろそろ年齢的にも不妊治療を続けるのは限界じゃないか?
というようなことを病院の先生から言われたそうなのです。

そこで、今まで粉薬で治療していたのを、煎じ薬に変更してもらうことにしました。

漢方薬が合っている時に限ってですが、粉薬より煎じ薬の方が劇的に良く効くことがあるのです。

そして、煎じ薬に変更してもらって2週間経過した後、この患者さんが病院に行かれてFSHの値を測ってみたところ、40(mIU/ml)の値が7(mIU/ml)まで下がっていたのです。

そして卵胞も育っていて、ちゃんと採卵もできたそうなのです。

煎じ薬にすれば必ずこのような結果が出るわけではないのですけれども、合っている薬を粉薬から煎じ薬に変えることで劇的に体の状態が改善することはあります。

今回のケースはまさにそのような典型的例でした。

ただ、煎じ薬なら必ずそうなるわけではありません。

それでも、とりあえず今回は、結果が出て良かったです。

正直ホッとしました。