私の書いた本を読まれて患者さんが来られました。

ご相談内容は妊活(不妊治療)です。

ただこの方は過去に流産を数回繰り返されており、不妊症というよりも不育症なのではないか?と思われますが、血液凝固因子や自己抗体系の不育症の問題は無いということでした。

原因としてはPGT-A(着床前診断)によって染色体異常もすべてのケースではないないそうですがあったそうです。

それ以外に不妊症(不育症)に関連しそうな婦人科疾患についてお伺いしたところ、多発性の子宮筋腫と子宮内膜の癒着があるとのことでした。

この患者さんに関して特に気になったのは服用しているサプリメントが多かったことです。

妊活(不妊治療)患者さんは、他の疾患でご相談に来られる患者さんに比べ、服用されているサプリメントが多い傾向はあるのですが、それと比べても多いと感じました。

来られた段階で、7種類服用されていました。

その中で特に気になったのは、大豆プロテインやイソフラボン系のサプリメントを服用されていたことと、

乳酸菌系のサプリ2種類とラクトフェリン系のサプリを服用されていた事です。

大豆系のサプリは機能を上げるためみたいてすが、私の経験では大豆系のサプリで卵巣機能が上がることは無いです。

むしろ卵巣機能が正常であれば足を引っ張る事の方が多いです。

また、乳酸菌やラクトフェリンは着床不全改善のために服用されているのだと思いますが、これも合わないと逆に子宮内膜の乳酸菌のバランスを乱し、子宮内膜の細菌叢をおかしくするリスクもあるのです。

そのため、基本的に私はこれらの服用はおすすめしてしていません。

サプリメントや健康食品

これらに関しては東洋医学的に改めてチェックしてみる事にしました。

次に東洋医学的な問診の際に気になったのが、生理の期間と生理量の量が少ないということです。

ここ最近が特にひどいらしくて、生理の期間は3〜4日、生理の量は極端に少なく、生理の色も薄い、ということでした。

この話が正しければ、この患者さんは血虚(血が少ない)か腎虚(加齢に伴って生じる血虚)の可能性が高いのです。

しかし、この患者さんの基礎疾患である子宮筋腫は瘀血(血流障害)によって生じるのです。

この話を東洋医学と西洋医学を絡めて整理すると

生理に関する問診結果から考えると生理(血)の量や日数が少ない→血虚(血が少ない)

この方の基礎疾患である子宮筋腫の東洋医学的な原因→瘀血(血流障害or血の過剰)

で、話が矛盾するのです。

これを西洋医学(女性ホルモン)の視点で比較すると

血虚(けっきょ)・・・女性ホルモンの分泌が良くないor女性ホルモンの働きが低下した状態

瘀血(おけつ)・・・女性ホルモンの分泌が良すぎるor女性ホルモンの働きが過剰な状態

ということで、東洋医学的にみても、西洋医学的にみても矛盾するのです。

そこでもう少し詳しくお話をお伺いしていしてみると・・・この生理の量や日数が極端に減ったのは、数回目の流産の後からの気がするということでした。

これだと話のつじつまが合います。

流産の際、搔爬手術を受けられると、子宮内膜が必要以上に削られて内膜が厚くなりにくくなる患者さんがおられるのです。

そうすると内膜が厚くならないので、生理(血)の量は減ります。

そこから、恐らく現在の状態は血虚がメインな状態と考えられます。

搔爬手術イメージ

ただ、それだけだと生理の日数が短い理由としては不十分な気がしました。

何となく大豆イソフラボンや大豆プロテインが悪さをしている可能性もあるかもとは思いました。

そこで、改めてこれらのサプリメントを東洋医学的にチェックすると、やはり多くのものが合っていない感じがしました。

ただ、東洋医学的な不妊症は無いように感じました。そのため不必要と思われるサプリを止めてもらってこの時には漢方薬は出しませんでした。

そして後日、患者さんが来られて、病院で体外受精の胚移植を行ったところ、子宮内膜が薄すぎてうまくいかなかったそうなのです。

どのくらい薄かったのか、お伺いすると、生理4日目で2mmにもなっていなかったそうです。

そのため、かなり注射(ホルモン補充)をやったそうですが、それでも7mmにも到達しなかったそうです。

そこで、子宮の状態を東洋医学的にチェックすると、問題があるように感じました。

全体の体質的な問題は感じなかったので、やはり搔爬が影響しているのではないか?と思いました。

そうすると、子宮内膜の再生を促すようなものが良いのではないか?と思いました。

そこで、子宮内膜の再生を促すのではないか?と思われるものの中でこの患者さんに合いそうな漢方薬をチェックしてみると、一つだけ合いそうなものがありました。

それを服用していただくことにしました。

漢方治療イメージ

そして、服用を始められて約1か月経過後、病院で内膜を測ってもらうと、子宮内膜は10mmには到達していなかったですが、着床に問題を起こさないレベルまで改善していました。

その内膜の厚みはその後もずっとキープされ続けました。

その後、この患者さんは転院され、新しいクリニックで再度不妊検査を受けられたのですが、そこで、子宮内膜に感染症がある(子宮内膜炎)と診断されたそうなのです。

そのため、その病院で抗生物質とプロバイオティクスのサプリメントが出されました。

前回の病院ではそのような診断は出ていなかったです。

この事から考えられるのは、前の病院での子宮内膜炎の見落とし、この方の服用されていた乳酸菌系のサプリ2種類とラクトフェリン系のサプリが合わなくて子宮内膜の細菌叢のバランスが悪くなり子宮内膜炎を起こしたなどが考えられます。

どちらにしろ、服用されていたサプリは効いていなかったことだけはハッキリしました。

そして、それらの治療を行い、さらに、発見された子宮腺筋症の治療を行い、移植を行ったところ、妊娠され、現在はもうすでに安定期まで至っています。

本当に良かったです。

さらに子宮内膜菲薄に興味のある方は→子宮内膜菲薄のページ

子宮筋腫に興味のある方は→子宮筋腫のページ

子宮腺筋症に興味のある方は→子宮腺筋症のページ

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