メールで来局による漢方相談希望の連絡がありました。

ご相談内容は耳鳴りです。

通常のメールでの漢方相談希望の連絡が来た場合は、こちらからお電話で双方の都合の合う日時を決めることと、疾患・症状などによって持ってきていただくものが若干、異なるので、その事をお知らせすることが主な内容なのですが、症状が耳鳴りの場合は少し異なります。

というのも、耳鳴りには治る確率の高いもの(治しやすいもの)と治る確率の低いもの(治しにくいもの)があるのです。
※これは漢方の一般常識とかではなく、私が長年治療してきた経験によるものです。

治る確率の高い耳鳴りか、治る確率の低い耳鳴りかは耳鳴りの音の質で判断できます。

ただし、耳鳴りの治療は漢方薬局によって得意、不得意があると思います。

私は耳鳴りは割と得意です。

しかし・・・得意といっても、先ほども書きましたが耳鳴りには治る確率の高いもの(治しやすいもの)、治る確率の低いもの(治しにくいもの)があるのです。

私が今まで治療してきて治りやすいと思うのは高い音の耳鳴りです。

一般的にはキーンとかピーとか高い音が聞こえるという患者さんの耳鳴りは、時間をかければかなりの確率で改善していきます。

漢方治療イメージ

しかし、低い音の耳鳴り、ジージーとかザーザーとか俗にセミの鳴く音だと、ほとんどの方が良くならないです。

それは耳鳴りの高い音と低い音では漢方的に原因が大きく異なるからです。

耳鳴りの高い音の漢方的原因で多いものは五志の憂(ストレスや自律神経の乱れ)と瘀血(血流障害)です。

耳鳴りの低い音の漢方的原因はほぼ腎虚(老化)です。

ストレスを緩和したり、自律神経を調整することは可能な場合が多いですが、老化を治す(若返らせる)のは本質的に難しいのです。

そのため、事前にお電話で患者さんに耳鳴りの音の質をお伺いして、低い音の場合は治る確率が非常に低いというのをお伝えして、それでも治療してみたいということであればお受けしているのです。

そこで、このメールで漢方相談を申し込まれた方にお電話して、耳鳴りの音についてお伺いすると・・・右耳と左耳で音の質が異なっていて、片方の耳は高い音がもう一方の耳は低い音が鳴っているということでした。

そのため、『高い方の耳鳴りの治療は可能だと思いますが、低い方の音の耳鳴りは難しいかもしれません』とお伝えしたのですが、片方だけでも少しでも良くなるのならご相談したいということだったので、ご相談のご予約をさせていただきました。

そして、実際当日来られてお話をお伺いしたところ、左耳の耳鳴りが高い音で、キーンという音がするということでした。

ただ、この耳鳴り、20年以上前からずっとしていてあまり気にならなかったのだそうです。

症状改善イメージ

ところが、3か月前に突然、右耳から低い音のボーッという耳鳴りがするようになったそうなのです。

そこで、すぐに耳鼻科に行って、ステロイドの注射をしてもらったら良くなったそうなのですが、約1か月前にまた再発して、まだ病院でステロイドの注射を打ったそうなのですが、今度は効かなかったそうなのです。

そして、この同タイミングくらいで今まで気にならなかった左耳の耳鳴りのキーンとという音がひどくなって耐え難いものになったそうなのです。

通常はお話をお伺いした後、高い音の左耳の耳鳴りに対しての漢方薬を、探してゆくのですが、低い耳鳴りのする右耳も一応チェックしてみました。

というのも、耳鳴りの音が低いとはいえ、セミの鳴く音とは異なっていることと、まだ発症して3か月で、一度ステロイドの注射で良くなっていることから多分老化が原因ではないと思われたからです。

そこで、東洋医学的問診やその他の東洋医学的なチェックを行った結果、どうも更年期障害が原因で起きているのではないか?という結論に至りました。

更年期障害は漢方的に言えば血虚(女性ホルモンの分泌不足or女性ホルモンの働きの低下)が主な原因です。そのため、この血虚に対しては補血(ほけつ→女性ホルモンの分泌を促進するor女を性ホルモンの働きを活性化する)の漢方薬を右耳の耳鳴りの治療としてとりあえず1週間服用していただくことにしました。

そして1週間後に来られた際に様子をお伺いすると・・・

右の耳鳴りは全くしなくなったそうです。

良かった!!、読みが正しかったということです。

老化は治せないけど、まだ更年期障害で血虚の軽いレベルだったので速攻的に効果が出たのだと思います。

いつもこんなにすぐにうまくゆくわけではないですが、腎虚(老化)が原因でなければ、割と改善することが多いです。

とりあえずですが良かったです。

ホッとしました。

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