HPを見て患者さんが来られました。
ご相談内容は妊活(不妊治療)です。
40代に入った頃から妊活を始められて、現在は体外受精までできる高度不妊治療の病院に通っているそうなのですが、なかなか治療が思うように進まないということなのです。
そして、その焦りから、かなりの種類の漢方薬やサプリメントなども服用されていて、それが膨らみ過ぎて何が効いていて何が効いて何が効いていないのか?自分に何が必要で何が余分なのか?どこをどう整理すれば良いのか分からなくなってご相談に来られたのです。
そこで、まずは病院の検査データをチェックしてみることにしました。
そうすると、まだAMH(抗ミュラー菅ホルモン)は年齢の割に悪くない感じでした。
そのほかのホルモン値も、ものすごく悪いというほどのものはありませんでした。
次に現在服用されているお薬およびサプリメントや漢方薬などを教えていただいてチェックしてみることにしました。
漢方薬に関しては病院で出されているものが2種類とご自身でも2種類を薬局で購入されて服用されていました。さらに別に6つのサプリメントを服用されていました。
漢方薬にしろ、サプリメントにしろ、印象としては言われる通り、服用されている種類も量も多いなということでした。
ただ、まだ、この段階では漢方の体質をチェックしていないので、何となくの印象でした。
そこでここから漢方的な、問診やそのほかの東洋医学的なチェックを行うことにしました。
しかし・・・東洋医学的な問診を行いましたが、ものすごく大きな所見らしきものはありませんでした。
そしてに気になったのは生理の量が減ってきていること、生理に血の塊が出ること、足先の冷えがあることでした。
それよりも気になったのは、この患者さんが話の中で追加で話されたことでした。
今回の血液検査は正常値だったけれども、FSH(卵胞刺激ホルモン)のホルモン値がいつも高めに出るため、なかなか体外受精を行うことができず、カウフマン療法を繰り返しているということでした。
そして、4年間の間に体外受精を行えたのはわずか4回で、最初は凍結胚が3個できましたが、次は1個凍結、3回目は1個しか採卵できず、その1個も受精せず、4回目は採卵前に排卵したため中止、以降1年以上カウフマン療法とピルの服用だけで、不妊治療は一切できない状況でした。
かなり厳しい状況です。
次に基礎体温をチェックさせてもらうと、妊活を始めた当初は基礎体温は非常にきれいで理想的に近いものでしたが、私の薬局に来られる1年前位から極端に基礎体温が乱れて恐らくそのほとんどが排卵できていないか?もしくはお黄体機能不全の状態にあるように思われました。
こんなに急激に悪くなるのか・・・というほど基礎体温は急激に悪くなっていました。
こういう場合、服用されている漢方薬やサプリメントに問題があることが多いのです。
そこで改めて、この患者さんの漢方的な体質をまず調べて、出されている漢方薬がこの患者さんの体質に本当に合っているかをチェックしてみることにしました。
そうすると、私の見立てではそこまで極端に生殖器系の老化(東洋医学の腎虚)は進んでいないように思われました。
私がこの患者さんに漢方的に問題を感じたのは加齢に伴う血流障害(東洋医学の瘀血)があることでした。
これに対して治療を行う必要を感じました。
ここで改めて、病院で出されていた漢方薬、他のところでご相談されて出された漢方薬、病院で出されたサプリ、ご自身で購入されたサプリメントをチェックしてみることにしました。
正直病院で出されている漢方薬は全く合っていない感じでした。
病院で出されている漢方薬の一つはもともと卵巣機能が弱い方に用いる漢方薬で、この方の基礎体温や血液検査のデータを見ると、もともとはとてもいい状態だったけど、加齢によって機能低下した結果起きているとしか考えられないので、この漢方薬はありえないのです。
ほぼ同様の事が、別のところで相談された漢方薬でも言えました。
サプリは、妊活サイトのサプリで検索すると良く出てくるものを複数服用されていました。
基本、妊娠にサプリが必要なケースは非常に少ないと私は臨床を通じて常々感じています。
この方もやはりそうでした。
これらを東洋医学的な方法で改めてチェックするとやはり、ほとんどの漢方薬とサプリメンくらいにていませんでした。
もし、これらのものが合っているのであれば、病院での治療経過がこんなに一気に悪くなることも、悪くなった状態が継続することも無いですし、1年くらい前までは理想的基礎体温だったものが急激に悪くなり、ずっと低温期で高温期ならないとか、高温期になっても高温期の高さも36.7℃に到達せず、高温期の日数も10日続かなくなる(正常は12日~14日)とかにはならないはずなのです。
そこで、葉酸を除いて、漢方薬やサプリメントのほとんどをやめていただきました。
そして、私の方からは加齢に伴う血流障害を改善する漢方薬をお出ししました。
それと、今通われている病院とは別の病院に行く選択しもあるというお話と、具体的な病院の候補などもお伝えしました。
というのも現在通われている病院はFSH(卵胞刺激ホルモン)が10未満でないと体外受精を行わないそうなのですが、実際過去にFSHが80だった方でも病院によっては体外受精を行い無事出産まで至っているケースが私の患者さんの中におられるからです。
この患者さんもこの件に関してはもともと考えておられたようで、ご夫婦で相談され、その後かなり早い段階で新しい病院に変わられました。
それから大体2週間間隔でご相談に来られました。
変わられて1か月程度ですぐ体外受精を行い9個採卵できて5個受精したのですが、残念ながら凍結には至りませんでした。
漢方的には1か月程度経過してから漢方薬を粉薬から煎じ薬に変更してから一気に基礎体温が2年前くらいの正常な基礎体温に戻りました。
そして、私の薬局で漢方治療を始めてから4か月後に体外受精で2個胚を凍結することができました。
ただ、この胚を移植しましたが残念ながら妊娠には至りませんでした。
私の薬局に来られてから半年、FSHが30を超えてきました。そして久しぶりにAMHを測定してもらったら1未満になっていました。
しかし、この月に2個採卵出来て1個が胚盤胞まで行き凍結できたのです。
そこから2か月卵巣を休ませてから再び採卵し胚盤胞を2個凍結できたのです。
それから1か月卵巣、子宮を休ませてから凍結胚を移植したのですが、残念ながら着床しませんでした。
その後、予想外の事が起きました。
最初の不妊治療の病院では特別大きな所見は無かったのですが、4cmくらいの大きさの筋層内筋腫があり、それが着床や妊娠後の妊娠継続に影響を及ぼす可能性があるということで、手術したほうが良いのではないか?という話になったのです。
40代前半のこの患者さんにとってこれはなかなか厳しい問題でした。
手術を行えば、内視鏡を用いた手術であっても早くても半年は移植はできなくなります。
ただ、採卵は術後の患者さんの体調にもよりますが1か月以上経過すれば可能になることから、患者さんも決断されたようです。
大きな病院で手術を受けられるの事を決断されたのです。
それから2か月後手術を行いました。結局は医師の判断で開腹手術になったそうです。
筋腫は2個取れたそうです。
それから3か月後から不妊治療が再開されました。
そこで採卵を行いましたが、手術後1回目は3個採卵できましたがうまく受精しませんでした。
2回目も2個採卵出来ましたが育ちませんでした。
3回目は自然周期で新生胚移植を試みました。4個採卵し2個受精して戻しましたが、これもダメでした。
そして、この患者さんも経済的な面や年齢的な面を考慮し、残っている凍結胚を移植してダメだったらあきらめるという決断をされたのです。
その決断に至ったこの時期にまた新たな問題が出てきました。
子宮内膜があまり厚くならないのです。
この間はぎりぎり8mm超えたくらいで、何も治療を行わなければ、8mmにも到達しないくらいになっていたのです。
そこで、病院では子宮内の細菌バランスに問題があるのではないか?ということで子宮内洗浄を行うことになったのです。
漢方的に私がみたら、どうもこの患者さんの証(不妊体質)が変わったように思われました。
そのため、漢方薬も再び変更しました。
そして、1回目の子宮内洗浄後、子宮内膜は10mm位と確かに厚くなりましたが、2回目の子宮内洗浄後は6mm代に下がりました。
その次の周期も子宮内膜は6mm代と低迷しました。
そのため、病院でも新たに試行錯誤を繰り返されていました。
私の方でも漢方薬をさらに2回変更して子宮内膜が厚くなるものが無いか?を試行錯誤しました。
それからさらに1か月後子宮内膜は7mmまで回復しました。
その後も子宮内膜を厚くするための試行錯誤が続きました。
その間に移植を数回行いましたがうまくいきませんでした。
凍結胚は気づけば3個になっていました。
それからまた移植を行いました。
内膜の厚みはギリギリ8mmくらいだったと思います。
ここで初めて化学流産になりました。HCGの値が初めて少し上昇した。
いままで化学流産も含め一度も妊娠されたことが無かったので、結果そのものは良くなかったのですが、少し着床の希望が生まれました。
そして、残りの胚が2個同時移植することになりました。
私も出す漢方薬を変更しました。
そして、今回移植時には久しぶりに子宮内膜が9mmを超えました。
そして判定日、生まれて初めてはっきりとした妊娠陽性反応が出たのです。
私の薬局に来られて、3年の月日が流れ、この患者さんも43歳になっていました。
良かったです。
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