タイトルにも書きましたが、風邪薬(総合感冒薬)は風邪を治す薬ではありません。
風邪の症状を抑える薬なのです。
そのため、風邪薬を飲んで風邪が治るということはないのです。
風邪を治しているのは自分の力です。
風邪薬というのはその治るまでの間、出てくる不快な症状を取り除く薬なのです。
今日は、この風邪薬の良い点と悪い点について、もう少し詳しくお話ししようと思います。
どうして鼻水やくしゃみ咳発熱などの不快な症状が出るのか?
風邪をひくと鼻水やくしゃみ咳発熱などの不快な症状が出てきますがそれはなぜなのでしょうか一つ一つ説明していきます。
まず、なぜ風邪をひくと鼻水が出るのかと言うと、鼻水で鼻に付着している細菌を洗い流すために鼻水は出るのです。
次にくしゃみですが、これは口の中に入ってきた病原体を体から出そうとするために出るのです。
咳は気管~肺の中に入った病原体を体から出そうとする反応なのです。
では風邪をひくとなぜ発熱するのでしょうか?
結論から言えば、免疫細胞を活性化することと、免疫細胞を沢山増やすためです。
ではなぜ、免疫細胞を活性化させることと免疫細胞を増やすために発熱する必要があるのでしょうか?
この話は少しだけややこしいのですが、がんばって読んでみてください。
まず、ヒトも含めすべての生物の生命活動には酵素反応が深くかかわっています。
一番身近なものだと、食べ物を消化吸収するには消化酵素の働きが重要です。
それ以外に筋肉を動かしたり、細胞分裂する際にも必ず酵素の働きが深くかかわっているのです。
酵素の働きが活発になると、生命活動も活発になるのです。
次に風邪を戦争に例えて話をしてみます。
病原体(ウイルス・細菌)は敵の軍隊、白血球(マクロファージ、リンパ球)などを味方の軍隊(兵隊)とします。
敵の軍隊(病原体(ウイルス・細菌))が強い、軍勢が多ければ、見方の軍隊(白血球などの免疫細胞)はどんどんやられてしまいます。
そのままやられ続ければ、負けてしまいます(最悪は死んでしまいます)。
そういう時には戦争なら援軍を呼びますよね。
ヒトの身体のなかでは、そういう時どのような反応が起こるかというと、援軍(白血球:免疫細胞)を自分の身体で作るのです。
具体的には白血球が細胞分裂をして数を増やしてゆくのです。
その細胞分裂にも酵素の働きが関係していて、この酵素の活性(働き)は体温にかなり大きく影響を受けるのです。
これを生物学では酵素の最適温度といいます。(高校生物で習う内容です)
具体的には36.5℃くらいの平熱よりも38℃くらいの高熱の方が圧倒的に酵素の働きは活性化するのです。
そうすると、細胞分裂のスピードが上がるのです。
つまり、自分の援軍を作るスピードが上がるということになるのです。
そして、体温が上がれば、細胞1つ1つの働きも活発になって、病原体(ウイルス・細菌)をやっつける働きも高まるのです。
つまり、体温が上がれば(発熱すれば)最終的に免疫力が上がるということなのです。
結局、病原体を早くやっつけるためには発熱した方が良いのです。
それでは、ここから総合感冒薬の働きについて説明します。
市販されている総合感冒薬にはメーカーによって若干入っているものに違いはあるのですが、ほぼ共通している部分について説明します。
必ず入っているのが解熱剤、鼻水、くしゃみを取り除く抗ヒスタミン剤、咳止め、痰を切る薬、炎症を取り除く薬、眠気を取り除く作用のもの(カフェイン)などです。
これらの総合的な作用によって、発熱は治まり、鼻水、くしゃみは止まり、咳が減り、痰も切れやすくなり、炎症(のどの痛み)などもなくなるのです。
ここで、先ほどのなぜ風邪を引くと鼻水・くしゃみ・咳が出るのかの話に戻ります。
これらは基本的に病原体を身体から追い出すための反応でしたよね。
これらの反応を風邪薬は消す、もしくは少なくしてしまいます。
そうすると、病原体を身体から追い出すことができなくなるので病源体は身体から減りません。
そして、本来は体温を上げて自分の免疫細胞の数を増やしたり、免疫細胞の働きを上げるために体温を上げるわけですが、解熱剤が入っているので体温も上がりません。
そのため、病原体をやっつけるための軍隊(免疫細胞)も増えにくいし、活性化もしませんそのため、免疫力も上がりません。
結局、総合感冒薬がやっていることは、風邪の時に引き起こす不快な症状を取り除く引き換えに免疫力がアップすることを阻害させているのです。
そのため、可能性としては風邪の症状はいったん軽減するかもしれないけれども、代わりに風邪が長引くリスクがあるということなのです。
そのことを理解した上で、上手に総合感冒薬を使われるのが大事だと思います。