年齢を重ねると経験することの多い「更年期障害」ですが、症状の一つに「肩こり」があることをご存じでしょうか。もちろん、更年期障害以外が原因の肩こりも多くありますが、漢方薬で改善できることも多くあり、上手く活用していただきたい症例の一つです。
そこで、今回は酷い肩こりの原因や対処法、漢方によって更年期障害から来る肩こりの改善法などについて詳しくご紹介いたします。
ひどい肩こりの原因にはどんなことが考えられる?
ひどい肩こりの原因にはどんなものが考えられるのでしょうか。ここでは症例別・原因別に分けてわかりやすくご紹介いたします。
デスクワークなどで長時間同じ姿勢を取ってしまう
首と肩の周辺には様々な筋肉があり、重い頭や腕を支えています。この筋肉の緊張が続くと筋肉が疲れて疲労物質が溜まり硬くなっていきます。筋肉が硬くなると、血管を圧迫して血液の循環を阻害し、末梢神経を傷つけて「肩こり」や「肩の痛み」を起こします。
さらに、血行不良になると筋肉に十分な酸素や栄養が供給されず、筋肉に疲労がたまって、ますます筋肉が硬くなるという悪循環を起こしてしまいます。
頸部脊椎症
背骨の間にある「椎間板」が潰れて硬くなる「頸部脊椎症」も首や肩のこり、痛みの原因になります。早い方では40歳代から見られることもあり、こちらは体重の増加や加齢で椎間板が変性することが原因とされています。
目の使い過ぎ
目の使い過ぎによって肩こりが生じる場合もあります。
特に仕事によるパソコンやスマホの使い過ぎは影響することがあります。適度な休息や目の周辺のマッサージも有効です。
更年期障害
女性の更年期障害でも、肩こりは起こります。その原因としては、女性ホルモンの急激な低下による自律神経の乱れで血行不良を招くことや、加齢によって首や肩、腰を支える筋力が低下すること、眼精疲労、老眼なども関係があります。また、ホルモンの低下による自律神経の乱れは痛みに対して敏感になることがあり「ひどい肩こり」と認識してしまうことも多くあります。
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他にもこんな病気が肩こりの原因に
肩こりの原因はこれだけではなく、貧血や低血圧、高血圧の症状がある時に肩こりを起こしやすくなります。さらには狭心症、心筋梗塞などの心臓疾患は主に左肩に肩こりを生じやすいと言われていますし、肝炎や肝硬変などの甘草膝関は、症状が右肩に出やすいと言われています。
肩よりも少し下の背中のコリは胃潰瘍などが原因になっていることもあります。また、自律神経の乱れや不安やイライラといったストレスでも肩こりを生じさせることがあります。そのため、一般的な肩こり改善法を実践したのにも関わらず全く改善しないケースは病院で一応検査してもらうのも一つのやり方です。
ひどい肩こりの改善策は?
ひどい肩こりはできるだけ早く改善したいものです。QOLの向上にもつながり、日々の仕事などを楽にこなせるようになるでしょう。ここからは、ひどい肩こりの改善策について、詳しくご紹介いたします。
首回りの運動・ストレッチを定期的に
肩こりは体を動かさずそのままでいると、どんどんと悪化していきます。
正しい姿勢を維持する、ストレッチで肩や背中を定期的に動かすことで、肩こりの改善や予防にもつながります。
肩周辺を温める
こりの原因となっている血行不良は「冷え」が原因とも考えられています。冬の寒さだけではなく、夏の冷房にも注意が必要です。入浴はシャワーだけで済まさず、湯船につかることで体が温まり、肩こりの改善につながります。
投薬治療
身体から出る発痛物質は血行改善の作用があります。痛み止めはこの発痛物質の合成を阻害します。そうすると痛みは出にくくなりますが、血行は改善されないため、肩こりは慢性化していきます。そのため痛み止めや、痛み止めのシップを常用するのはおすすめしません。
整体・マッサージを活用する
整体は体の歪みを改善し、慢性的なコリを改善する効果があります。特に、骨盤や背骨の歪みがある方は、整体で大きな改善を感じる方も多いでしょう。
また、全身の疲れが溜まっていると感じた時はマッサージもお勧めです。筋肉をほぐし、疲労が軽減されます。どちらかというとリラクゼーション効果が強いものとなりますので、状況に応じて選んでいきましょう。
知っておいて欲しい「更年期障害による肩こり」と「漢方」の関係
更年期障害は、漢方的には主に「血虚(けっきょ)=女性ホルモンの減少」によって生じると考えられています。
更年期障害による肩こりは、この血虚に「瘀血(おけつ)=血が滞った状態」が組み合わさって生じる場合や血虚(けっきょ)に「気滞(きたい)=気のとどこおり≒ストレス、自律神経の乱れ」が合わさって生じる場合が多いです。
そのためこれらを改善する漢方薬を服用することで、体全体のエネルギーバランスを整えて、健康へと導いていきます。
血虚(けっきょ)+瘀血(おけつ)が原因による肩こりに用いられる代表的な漢方薬
温経湯(いんけいとう)
温経湯の中には血虚に対応する、補血作用のある当帰、芍薬、阿膠を含み、さらに瘀血を改善する活血作用のある牡丹皮、川芎なども含まれています。
また、加齢に伴って減っていく陰(水分)を補う麦門冬や温めて循環を良くする桂枝も含まれています。これらが合わさって働くことにより、女性ホルモンの減少(血虚)に伴う血流障害(瘀血)の改善に働き、結果として更年期障害による肩こりが改善されるのです。
血虚(けっきょ)+気滞(きたい)が原因による肩こりに用いられる代表的な漢方薬
逍遙散(しょうようさん)
逍遙散の中には血虚に対する補血作用の要である当帰と芍薬が入っています。さらに気の巡りを良くする薄荷が含まれています。そして自律神経を整えると言われている柴胡も含まれています。これらの働きが合わさることにより、血虚(けっきょ)に「気滞(きたい)=気のとどこおり≒ストレス、自律神経の乱れ」が改善され、結果として更年期障害の肩こりが改善されるのです。
加味逍遙散(かみしょうようさん)
加味逍遙散(かみしょうようさん)は逍遙散に牡丹皮(ぼたんぴ)と山梔子(さんしし)という上の方の熱を冷ます2つの生薬が合わさってできたものです。そのため、基本的な肩こりに対する働きは逍遙散(しょうようさん)と一緒です。逍遙散との働きの違いは上の方の熱を冷ます2つの生薬、牡丹皮(ぼたんぴ)と山梔子(さんしし)が入った分だけ興奮を抑える働きが強いのです。そのため、加味逍遙散は逍遙散よりも怒りっぽかったり、イライラしやすい人に用います。
なかなか改善が見られない更年期障害やそれに不随する肩こりで困っている際には、ぜひ当局にご相談下さい。
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